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Visitors From Another World〜世界を渡る魔法で旅立つと知ってる世界でした〜  作者: 重力 リノ


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EP.7-Side.L 普通の依頼

冒険者ギルド


 ルイに手の話を訊こうとやって来たのはよかった。でもルイがどこに住んでいるのかわからない。支部長さんにお願いしたら教えてくれるだろうか?


「今日も依頼?」


 ルイーズさんに声をかけられた。


「ルイに話があったんだけど、どこに住んでるか分からなくて、支部長さんなら知ってるかなって思って来たんだ。」


「プラチナ級冒険者の情報は、原則当人の許可なく開示できないから、多分無理よ?」


 そう言えばそうだった。どうしようかなぁ。


「あれ?ライトさんじゃないですか。ルイーズさんもこんにちは。」


 にっこにこのラルクくんが現れた。


「ラルクくん?ずいぶん上機嫌だね。」


「分かります?おにいちゃんと一緒に仕事ができるんです。」


 余程嬉しいのか、ずっと尻尾を振っている。


「これから仕事の内容聞くので、良かったらライトさんとルイーズさんも来ます?」


「良いの?プラチナ級二人の仕事とか受付嬢のルイーズさんはまだしも、シルバー級の俺が聴いていい内容じゃないでしょ?」


「気にしたら駄目ですよ。ほらほらおにいちゃんはもう来てるんで行きますよ!」


 ラルクくんが後ろから押してくる。


「あれ?行くって言ってないのに!?力強い!?」


 ラルクくんに問答無用で連行される。


「ルイーズさんも来て!」


「あ、はい!」


 ルイーズさんはなにか嬉しそうについてきた。


◇◇◇◇


支部長室


 ラルクくんに連行されてしまった。


「……ラルクようやく来た……か……あ?……なんでライトとルイーズが居るんだ?……」


 振り返ったルイが俺達を見て怪訝そうな顔をした。予定になかったはずだしそういう顔されても仕方ない


「僕が連れてきたの。別に話聴くぐらいは良いでしょ?それに何かおにいちゃんに話があるみたいだよ」


 尻尾をブンブンと振ったラルクくんが俺の背後からひょこっと顔を出す。

 ルイがすごく微妙な顔をしている。


「……まぁ……ライトとルイーズなら問題ないか……話ならこれが終わってから聴く……」


 言葉を飲み込んだような間があったが、同席を許してくれた。


「おい待て!なんでここで始めようとしてるんだ!」


 支部長さんが机を叩いて抗議している。


「……お前にも聴いてもらうためだ……」


「ラルクとお前で対処するって言っていただろ!」


「……誰も共有しないなんて言ってない……」


「あぁ、そうだな!好きにしろ!ったく!」


 支部長さんがドカッと椅子に座って頬杖をつく。ルイーズさんがすごく恥ずかしそうに顔に手を当てている。


「……さて……本題だ……野盗が持っていたアンチマジックワンド……ラルクならマックスが創ったものか……他者によって複製されたものか分かるだろう?……」


 ルイが杖を五本机に並べる。マックスって誰?

 ラルクくんは杖をマジマジと観察している。


「ん?何だこの杖は?」


 支部長さんも一本手にとって眺める。


「……一応魔導具の類だ……ただし範囲内の魔法を全てマナに強制還元する……そういう代物だ……」


「……おいおい。そんなもん不可能だろ。特定の魔法を無力化するならまだしも、無差別なんて……」


 支部長さんが唖然とした表情をする。


「……できているんだからできるんだろう……世界を渡る魔法(ワールドトラベル)と同様にまともな魔法じゃないのは確かだ……ラルク分かったか?……」


「おにいちゃん、間違いないよ。これマクスウェル様の作品だ。その野盗はどこで手に入れたんだろう?マクスウェル様はこの世界にはまだ干渉してなかったはず……」


 マクスウェル?マックスじゃなくて?


「……やっぱりマックス本人のか……野盗に直接売り込んだらしい……まったく何を考えているんだか……」


 あぁ!マクスウェルだからマックス!なるほど!


「マクスウェル様は……あの人は気まぐれだから、HUBの存続以外何も考えてないよ?」


 ラルクくんがケラケラと笑っている。


「……お前なぁ……仮にも生みの親だろ……」


 ルイは頭を掻きながら呆れた顔でラルクくんを見る。


「HUBから出た時点で僕はもう守人じゃないから、マクスウェル様に従う必要はないも〜ん。」


「ねぇ、守人ってなに?」


 二人に訊いてみる。


「……ん?……あぁ……HUBの住人のことだ……HUBを管理させる労働力だと思えばいい……」


「僕みたいなHUBの外に出たいとワガママを言う個体は稀でして、そういう同僚たちがマクスウェル様にお願いしてHUBを出ていくんです。出たらもう戻れないんですけどね。マクスウェル様からしたら体の良い不良品の処分って感じです。」


 あっけらかんとしている。この前は主って言ってたのに。


「……話が逸れたな……昨日捕らえた野盗にはボスがいるようだ……アジトの場所はお前たちが来る前に聞き出した……ここにラルクと俺とで攻め入ってボスを生け捕る……」


 ルイは机の上に地図を開いてアジトの場所をペンで書き込む。


「マクスウェル様の事を聞き出すんだね?なら抵抗が激しく捕縛が難しい場合は?」


 ラルクくんの声が一段低くなる。


「……殺してもいい……だからってはじめから殺す方向で動くなよ?……」


 ラルクくんが「はーい」と手を上げて返事をした。

 話してる内容は物騒なのに、なんでラルクくんは一々仕草がかわいいんだろう?


「……ライト……間違っても着いてくるなよ?……」


 釘を差された。着いて行くつもりはなかったけれど、そう言われると着いて行きたくなる。ただ、俺が行ったら間違いなく足手まといになるのは分かってるから大人しくしていよう。


「分かってるよ。」


「……で?……話ってなんだ?……」


「あ、そうそう。昨日、代理回収の手伝いをしたんだけれど、現場にルイの手が落ちてたのに、今は生えてるのは何で?」


「……昔……俺の傷の治りがやたらに早かったのを覚えてるか?……」


 ルイの質問に覚えていると答えた。


「……見せた方が早いな……」


 ルイはナイフを取り出した。見た方がってまさか!?


「待ってルイ!まさか斬り落とす気!?」


 ナイフを持つルイの腕を掴んで静止する。


「……ん?……いやだって見せた方が手早いし……」


 ルイがなんで止めるんだと言わんばかりの顔で俺を見て言った。


「……ラルク……服とか傷つけずに手首だけ行けるか?……」


「まかせて〜」


 制止する間もなく、ラルクくんは躊躇なくルイの右手首を切断した。

 その光景を見て、ルイーズさんが悲鳴を上げる。

 何故か血は出ていないようで、部屋に血は飛び散ったりしていないし、ルイも微塵も痛くないような、涼しい顔をしている。


「……すまんラルク……脱いでから頼むべきだった……手からグローブだけ取ってくれるか?……」


 ルイの頼みに二つ返事で了承したラルクくんは、切断された右手から手際よくグローブを回収して、残された右手を魔法で灰にした。そう言えば現場に右手が残ってたのもなんでだ?


「……ありがとうな……」


 ルイがお礼を言うと嬉しそうに尻尾を振って、ニコニコしている。慕っている兄貴分の手を斬り落としたとは思えない状況に、俺も支部長さんも理解が追いついていなかった。ルイーズさんに至っては顔面蒼白でそれどころじゃなさそう。


「……あと数分だけ待ってくれ……その間に他に訊きたいこととかあるか?……」


「え?あ、じゃあラルクくんが世界を渡る者(ワールドトラベラー)に対して辛辣な言動を取ることがあるのはなんで?本人は自覚してなかったけど。」


 ラルクくんがビクッと反応した。


「……何故かは知らないが……HUBの住人が持つ……産まれながらの特性だ……本人の意思や感情に関わらず……世界を渡る者(ワールドトラベラー)に対して……嗜虐的な言動を取ってしまう発作みたいなものだ……」


「そ、そんな……」


 ラルクくんがショックを受けて膝から崩れ落ちた。大粒の涙を浮かべて尻尾もだらんと垂れ下がってしまっている。


「……安心しろラルク……目には余るが……お前のせいじゃないんだ……気にするな……それよりも始まるぞ……ルイーズには刺激が強いかもしれないから……見ない方がいいとは思う……」


 ルイは俺達が見やすいように右腕を突き出す。

 見ていると、ルイの右手の組織がゆっくりと骨から順に魔力によって作り出されていく。魔力を手の形に再現しているわけではなく、本物の体組織に変換されている。その工程の絵面はだいぶグロテスクで気持ち悪かった。

 ルイは再生した右手を動かして、動作確認をする。


「……こういう事だ……瞬時にではないが再生する……」


「再生するのはわかった。じゃあなんで右手が現場にあったの?焼却でもしておいてくれたら無駄にパニックにならなくて済んだのに。」


 俺の訴えを意に介している様子はない。


「……あそこならそのうち動植物の養分になるから捨てたんだ……」


 ルイは悪びれる様子もなく、グローブを右手にはめ直しながら言った。


「おいルイ!昨日の報告と違うぞ!」


「……やべ……」


 支部長さんの怒声にルイはビクッとして逃げようとする。


「ルイ!」


「……ラルク!……落ち込んでないで行くぞ!……」


 へたり込んでるラルクくんを脇に抱えて部屋を飛び出して行った。なんかラルクくんから「あ」に半濁点を付けたような間の抜けた声呻きが聞こえたけど大丈夫だろうか?


「あ!こら待て!ったく……」


 支部長さんは呆れたように頭を抱える。


「なんというか親子みたい。」


「確かに他の同年代の冒険者と比べたら、気にかけてはいる。」


 俺の呟きに反応した支部長さんが頬杖をつきながら言った。


「そう言えば、お前たちは他に何か用事あるか?。」


 ないと答えると、未だに放心気味のルイーズさんの方を一瞥して、俺の方に向き直った。


「この後予定が無ければ、落ち着くまでルイーズを見といてくれるか?」


 二つ返事で了承して、ルイーズさんを連れて支部長室を後にした。


◇◇◇◇


冒険者ギルド受付


 休憩スペースを借りてルイーズさんを椅子に座らせる。


「ルイーズさん大丈夫?」


「あ、えぇ、大丈夫よ。心配ありがとう。まさか目の前で実演されるなんて思わなくて気が動転しちゃって……」


 ため息をついて天を仰ぐ。


「後でルイには文句言っておくから!元気出して!」


 ルイーズさんは俺の言葉に苦笑いで返す。


「気遣いありがと。それよりもこの後どうするの?何か依頼受ける?シルバー級以上の魔物の討伐依頼も来てるわよ?」


 頷くと、ルイーズさんは立ち上がって書類を準備し始める。もう大丈夫みたいだ。


「じゃあ説明始めるわね。」


 ルイーズさんは咳払いをして、受付嬢モードで説明を開始した。


「依頼の内容は、王都の西側の森に発生したオークの群れの討伐です。オークの群れと言っても、オーク3体とゴブリン複数体の2種の魔物から成るコロニーになります。先日のジェムコレクターの群れの影響で、発生したコロニーだと推測されていますが、旅商人の車両などを襲う可能性があるので、討伐をお願いします。」


 承諾して書類に血判を捺す。


「はい。無理はしちゃだめよ?あ、討伐の証は基本的に魔核を持ち帰ってきてね。昨日のジェムコレクターとは違って人型だから、無理そうなら放置して帰ってきていいわ。手数料は貰うけれど、代理回収班が使える部位は余すことなく回収するから。」


 書類を纏めながら補足事項を教えてくれた。


「手数料って報酬金額から引かれるの?」


「いいえ。回収した素材の一部よ。専用の器具が必要だったり、数が多かったりすると割合が増えるわ。それと代理回収を使う場合、報酬の支払いは代理回収が帰ってきてからになるわ。だからできるなら自分で回収することを勧めるわ。」


 要らない紙に分かりやすく図を描いてくれた。


「ちなみに昨日ルイたちが依頼したジェムコレクターの代理回収の手数料って?」


「回収した素材の8割よ。手数料の最大割合ね。」


「流石にガメ過ぎじゃない?」


「回収班もゴールド級並の実力があるとはいえ、死傷のリスクはあるし、ジェムコレクターに至っては専用の魔導具が必要だから余計よ。魔導具だって消耗するし、タダじゃないのよ?」


 腰に手を当てて呆れたように諭される。それもそうかぁ。ルイーズさんにお礼を言って依頼にあった西の森に向かうことにした。


◇◇◇◇


王都西側の森


 地図とにらめっこしながら奥深くに進んでいく。

 依頼のコロニーはここらへんにいるはず……


 探知系の魔法が使えないのが悔やまれる。不意な遭遇を回避するために音を頼りに慎重に進んでいると、洞窟が見えてきた。


「もしかしてあそこかな……?」


 腰に携えた例のブロードソードの柄を握り、抜く前に剣身に満遍なく均一に魔力を流し込む。この異常なほど薄い刃のブロードソードは、その見た目通り非常に脆く、こうやって魔力で均一に強化してあげないと、力が加わったときに魔力が薄い所から折れてしまう

 他に武器はないので本当に集中して魔力を流し続ける。変に力を入れて折らないようにゆっくりと鞘から抜いて、構えながら見つけた洞窟へ入る。


 見つかりたくないので光源魔法は使っていないが、洞窟内に自生していた光発するキノコと発光する苔類のおかげである程度視界はある。


 しばらく進んでいると魔物の話しているような声が聞こえた。岩陰から覗くとゴブリンが数体固まっている。


 ゴブリンは知能がある魔物で、人間同様に道具を駆使する魔物。身長100cm程で四肢が細く、魔物にしては力もない。確か基本的に臆病で食性は果実食なので、小規模なコロニーなら基本的には人間を襲うことはないが、数が増えて食い扶持に困る規模のコロニーになった場合や、今回のオークのようなより上位の種族との共同コロニーになると話が変わる……と中等部の授業で習った。


 どうせ全部倒すのだし、回避して進むこともできなさそうだし、腹を括ろう。


 意を決して身体強化をしてゴブリンへ駆け出す。足音で気付かれたが、構わず一番近くのゴブリンへ斬りかかる。ゴブリンは突然の奇襲に為す術もなく斬りつけられ力なく倒れる。


 残った数体のゴブリンのうち、一番遠くの1体が逃げるように奥に駆け出した。おそらく他の仲間を呼びに行ったのだろう。集まってきちゃったら敗走を余儀なくされる。早めにこいつらを倒してしまいたい。


 しかしなんというか、数的有利な状況でも人間相手に怯え震えて、自己防衛のために武器を取ってる魔物なのでなんかこっちが悪者みたいに見えてくる。


 同情しても仕方ないので囲まれないように気をつけつつ、1体ずつ倒していく。特に苦もなく残っていたゴブリンは倒せてしまった。


 それよりも防御しようとした木の棍棒ごとゴブリンを真っ二つにした事が怖くなってきた。魔力で強化さらているとはいえ、こんなに切れ味いいの?このブロードソード……

 だけどこの調子なら障害になるのはオーク3体か……できることなら1体ずつ相手にしたい。


 さらに奥に進むと少し広くなった場所に出た。岩陰から様子をうかがうと、どうも行き止まりらしい。ゴブリンが4体とオーク3体を確認できた。先程の逃げたゴブリンであろう個体だけ周囲を警戒している。


 どうしよう。各個撃破は難しそう。とにかくゴブリンを先に倒してしまいたい。その後オークが暴れられないようにここに誘い込めば、安全に倒せるかもしれない。


 そうと決まれば機動戦術で近いのから倒していこう。

 足裏で圧縮した魔力を爆発させて、一気にゴブリンへ接敵する。一度じゃ届かないので失速してきた頃にもう一度爆発させて再加速。

 すれ違いざまにゴブリンを水平斬りで斬りつける。これを繰り返して残りのゴブリンも始末した。


 流石にオークも気付いて石の棍棒を持って追いかけて来た。近づかれる前に洞窟の入口側に逃げて誘い込む。

 石の棍棒じゃ流石に斬れなさそうだから、振り回せない所で戦おう。

 オークは2m程の身長で、武器も使うし力もあるがゴブリンよりも知能が低い。オークもゴブリン同様果実食らしいのだが、食べる量が多いからか、よく果物の行商を襲うことがあるらしい。ゴブリンもだけれど、肉や魚を食べたりはしないと習った。


 オークとの距離を保ったまま、狭いところまで後退した。ここでなら一方的な狩りになりそう。

 棍棒を使えないままのオークを一体ずつ斬り伏せて、洞窟内の魔物は全て倒した。


 周辺の探索をして、付近にゴブリンの残党がいないかの確認をして、冒険者ギルドへ帰る。ゴブリンやオークの解体の仕方は分からないし代理回収班にお願いしよう。

世界を渡る者(ワールドトラベラー)の再生能力

 体内の魔力を消費して肉体の欠損を修復する。再生が開始されるまでに数分の遅延があり、魔力を物質に変換しながらなので再生そのものにも多少の時間がかかる。再生される順番は最も深い体組織から。


ゴブリン

 1m程の人型の魔物。手足は細く、道具を使う知能を持つ。果実食。臆病で人間を襲うことも滅多にないが、小さな集落などの畑を荒らし、農作物を奪うことはよくある。ただしコロニーが大きくなると食料にありつくために行商を襲うことがある。害獣指定の魔物。


オーク

 2m程の人型の魔物。筋肉質で力が強く、道具を使う知能を持つ。しかしゴブリンほどではなく、道具も棍棒を使う程度のもの。ゴブリン同様に果実食。人間を問答無用で襲うということはないが、食べる量が多いためか食料のために行商をよく襲う。ゴブリン同様害獣指定の魔物。

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