EP.7-Side.R 野盗狩り
冒険者ギルド 地下営倉
冒険者ギルドで重大な問題を起こした冒険者を勾留するための施設だが、今は昨日の野盗を手足を縛ったまま放り込んである。本来なら騎士団か自警団に突き出すべきなんだが、マックスの動向を知るための道しるべになってもらうため、身柄を抑えている。
「……調子はどうだ……」
牢の鍵を開け中に入る。
「あ?昨日の異様な武器の使い手か……騎士団にも突き出さずになんの用だ。昨日も言ったがアジトの場所なら吐かねぇぞ。」
相変わらず口を割るつもりはないらしい。はじめから口を割らせるつもりもなかったが。
俺は空間魔法からとある魔導具を取り出す。ナイフのような見た目の魔導具、強制記憶読取機。
「……端からお前の口には用はない……用があるのはお前の脳だ……」
「お、おい……それで何をするつもりだ!?」
縛られたまま必死に逃げようと藻掻いている。逃げ場なんてないんだけどな。
「……安心しろ……暴れなければ死にはしない……」
野盗にパラライズをかけて動けなくした上で、体を無理やり起こす。強制記憶読取機を動けない野盗の頭頂部に突き刺す。
便利なもので、強制記憶読取機で突き刺しても血は出ない。脳を損傷させることもない。
しばらくするとポンメルのような飾りにはめ込まれた魔石が光る。こいつの記憶の解析が始まった。およそ10分ほどで全ての記憶が解析された。魔石から放たれる光がコンソールウィンドウを形作る。
今回欲しいのはアジトの場所とボスの容姿なので、コンソールを操作し、最近の記憶から場所を割り出す。
なるほど、昨日の街道の近くか。ボスは……なるほど女のボスか。
場所が分かったので、強制記憶読取機を停止させ引っこ抜いてパラライズを解除する。抜いても血が出ない。物理的に刺さっているはずなんだが、どういう仕組みなんだ。
「……あぁ……言い忘れていた……死にはしないが廃人にはなる……もう理解できないとは思うがな……」
記憶の高速解析が脳へ多大な負荷を掛けるようで、高確率で廃人化するのが欠点だ。
案の定、野盗は言葉を解さない廃人になってしまった。解析が終わった辺りからずっとゾンビのような呻き声とよだれを垂れ流している。
後処理はハーミットにぶん投げるとして、そろそろラルクが来る頃か。支部長室で待ち合わせだから向うか。
◇◇◇◇
支部長室
「……ハーミット……ラルクが来るまでここで待たせてもらう……それと昨日の野盗……後処理を頼む……」
部屋に入って早々ハーミットに野盗の事を頼んだ。
「構わないが……なんでここで待ち合わせなんだ。」
「……来る前に店の仕込みをしたいって……野盗にアジトの場所を聞き出す必要もあったし……」
「……野盗からはどうやって聞き出したんだ?ああいう輩は口割らないだろう?」
ちょっとイライラしてる?流石に迷惑かけすぎたか?
「……魔導具を使って記憶を読んだ……」
「どんな魔導具なんだ?」
強制記憶読取機を取り出して見せる。
「ナイフ?これをどうやって?」
「……こうやって対象の頭にぶっ刺す……そうすると対象の記憶を読める……あぁ安心してくれ殺してはない…………廃人にはしたけど……」
説明にナイフを頭に突き刺すときのジェスチャーを交える。
ハーミットは口をあんぐりと開いて驚愕している。
ハーミットと問答をしていたら扉が開く音がしたので振り返る。
「……ラルクようやく来た……か……あ?……なんでライトとルイーズが居るんだ?……」
ラルクの姿は見えず、ライトとルイーズが何故か居た。
「僕が連れてきたの。別に話聴くぐらいは良いでしょ?それに何かおにいちゃんに話があるみたいだよ」
ライトの背後からラルクが顔を出した。
駄目ではないが……ライトが着いて来たいとか言い出さないか?
「……まぁ……ライトとルイーズなら問題ないか……話ならこれが終わってから聴く……」
言いたい事はあったが、言っても仕方ないので本題に入る事にする。
「おい待て!なんでここで始めようとしてるんだ!」
ハーミットが机を平手で叩く。そんな事訊かなくても分かるだろ。
「……お前にも聴いてもらうためだ……」
「ラルクとお前で対処するって言っていただろ!」
なんでこんなに怒ってるんだ?
「……誰も共有しないなんて言ってない……」
「あぁ、そうだな!好きにしろ!ったく!」
ドカッと椅子に座って頬杖をついた。そんな怒らなくても。あれか、野盗を廃人にしたから後処理が大変になったから怒ってるのか。
「……さて……本題だ……野盗が持っていたアンチマジックワンド……ラルクならマックスが創ったものか……他者によって複製されたものか分かるだろう?……」
回収していたアンチマジックワンドを五本机の上に並べる。
ラルクがアンチマジックワンドを観察している。ラルクならこのアンチマジックワンドが模造品か本物か見分けられる。
「ん?何だこの杖は?」
ハーミットがアンチマジックワンドを手に取って観察し始める。
「……一応魔導具の類だ……ただし範囲内の魔法を全てマナに強制還元する……そういう代物だ……」
「……おいおい。そんなもん不可能だろ。特定の魔法を無力化するならまだしも、無差別なんて……」
驚くのも無理はない。無力化の魔法とは、対象の魔法に応じて術式が変わるのが常識だからだ。
「……できているんだからできるんだろう……世界を渡る魔法ワールドトラベルと同様にまともな魔法じゃないのは確かだ……ラルク分かったか?……」
ラルクに催促する。
「おにいちゃん、間違いないよ。これマクスウェル様の作品だ。その野盗はどこで手に入れたんだろう?マクスウェル様はこの世界にはまだ干渉してなかったはず……」
正直に言えば他人の空似であってほしかった……
「……やっぱりマックス本人のか……野盗に直接売り込んだらしい……まったく何を考えているんだか……」
「マクスウェル様は……あの人は気まぐれだから、HUBの存続以外何も考えてないよ?」
ラルクの言い様に一瞬眉をしかめる。
「……お前なぁ……仮にも生みの親だろ……」
「HUBから出た時点で僕はもう守人じゃないから、マクスウェル様に従う必要はないも〜ん。」
俺に懐いてるのはいいんだが、生みの親を悪く言うもんじゃないと思うんだ。
「ねぇ、守人ってなに?」
ライトが会話に割って入ってきた。ラルクの事分からないだろうし、訊きたくなるのも仕方ないか。
「……ん?……あぁ……HUBの住人のことだ……HUBを管理させる労働力だと思えばいい……」
「僕みたいなHUBの外に出たいとワガママを言う個体は稀でして、そういう同僚たちがマクスウェル様にお願いしてHUBを出ていくんです。出たらもう戻れないんですけどね。マクスウェル様からしたら体の良い不良品の処分って感じです。」
マックスがそんな非情だとは考えにくいが……。それならなんで態々心まで生み出したんだという話にもなる。
「……話が逸れたな……昨日捕らえた野盗にはボスがいるようだ……アジトの場所はお前たちが来る前に聞き出した……ここにラルクと俺とで攻め入ってボスを生け捕る……」
机の上に地図を開いてアジトの場所を書き込む。
「マクスウェル様の事を聞き出すんだね?なら抵抗が激しく捕縛が難しい場合は?」
真面目なトーンで確認される。
「……殺してもいい……だからってはじめから殺す方向で動くなよ?……」
ラルクが気の抜けた返事をしたので、ライトに向き直す。
「……ライト……間違っても着いてくるなよ?……」
釘を差しておかないと着いて来そうだからな……
「分かってるよ。」
「……で?……話ってなんだ?……」
「あ、そうそう。昨日、代理回収の手伝いをしたんだけれど、現場にルイの手が落ちてたのに、今は生えてるのは何で?」
あぁ、そういう事か。たしかライトが見つけたんだっけな。
「……昔……俺の傷の治りがやたらに早かったのを覚えてるか?……」
ライトは覚えていると答えた。まぁあの時も驚いていたから覚えてるだろうなぁ。
「……見せた方が早いな……」
手首を切断するためにナイフを取り出す。手首に痛覚遮断を掛けておく。
「待ってルイ!まさか斬り落とす気!?」
ナイフを持った腕を掴まれて止められる。
「……ん?……いやだって見せた方が手早いし……ラルク……服とか傷つけずに手首だけ行けるか?……」
仕方ないのでラルクに頼む。
「まかせて〜」
居合の要領で瞬時に俺の右手首をキレイに切断する。血が出ないように即座に切断面を止血をする。
ルイーズが悲鳴を上げた。友人の手が落ちれば仕方ない。それはそうと先にグローブ脱げばよかった。
「……すまんラルク……脱いでから頼むべきだった……手からグローブだけ取ってくれるか?……」
ラルクは、切断した右手から手際よくグローブを回収して、要らない右手を魔法で灰にした。
「……ありがとうな……」
お礼を言うと、ラルクは嬉しそうに尻尾を振っている。
「……あと数分だけ待ってくれ……その間に他に訊きたいこととかあるか?……」
再生開始を待つ間に他の質問を促す。
「え?あ、じゃあラルクくんが世界を渡る者に対して辛辣な言動を取ることがあるのはなんで?本人は自覚してなかったけど。」
あぁその事か。
「……何故かは知らないが……HUBの住人が持つ……産まれながらの特性だ……本人の意思や感情に関わらず……世界を渡る者ワールドトラベラーに対して……嗜虐的な言動を取ってしまう発作みたいなものだ……」
「そ、そんな……」
ラルクが膝から崩れ落ちた。大粒の涙を浮かべて尻尾も元気無く垂れ下がっている。
「……安心しろラルク……目には余るが……お前のせいじゃないんだ……気にするな……それよりも始まるぞ……ルイーズには刺激が強いかもしれないから……見ない方がいいとは思う……」
再生が開始されるので、ライト達が見やすいように右腕を突き出す。
右手の組織が骨から順に魔力によって作り出されていく。昨日と同じだが、部位が少ないから早く終わるな。
再生した右手を握ったり開いたりして、動作確認をする。
「……こういう事だ……瞬時にではないが再生する……」
「再生するのはわかった。じゃあなんで右手が現場にあったの?焼却でもしておいてくれたら無駄にパニックにならなくて済んだのに。」
元々見つかるような場所じゃなかったしなぁ。
「……あそこならそのうち動植物の養分になるから捨てたんだ……」
ラルクからグローブを受け取って右手にはめ直す。
「おいルイ!昨日の報告と違うぞ!」
「……やべ……」
怒られる前に逃げることにしよう。
「ルイ!」
「……ラルク!……落ち込んでないで行くぞ!……」
へたり込んでるラルクを小脇に抱えて部屋を飛び出す。
「あ!こら待――」
うっすら呼び止める声が聞こえたが、無視して冒険者ギルドを後にする。
◇◇◇◇
王都、ガレリオン間の森の奥
目的地、テレポートで来た。
昨日のジェムコレクターの群れが居た所から少し離れた廃墟の村。
ここは元々炭鉱だったが、村民の高齢化に伴い王都に移ったため放棄された村だ。
「おにぃちゃん。ここなの?」
「……あぁ……間違いない……あの坑道だな……」
見張りなどは無さそうだが、あの男の記憶だとまだ構成員が残っているはず……
「ターゲットは?」
「……ヒュームの女……青い短髪青い瞳……野盗にしては身奇麗な容姿だ……」
俺達なら苦労もないとは思うが、少なくともアンチマジックワンドが一つ残っている事は確かだ。
「……マックスがどこまで関わってるかわからん……」
ラルクは頷いて廃坑を凝視すると、ラルクの瞳に魔力が集まり淡く赤く光る。獣人種が生来持っている魔力視をより強力にするための身体強化の一種。普段の目では見れないような距離や、魔法陣設置型のトラップすら看破できるようになるとかなんとか。
ヒュームも使えるし、俺もライトも使えるが、魔力の流れを視ることができるようになるぐらいで、ラルクのようにはいかない。瞳が光ることもない。
「障壁結界の類やトラップ系の魔法は視えないよ。中の人数もそんなに多くないよ。」
「……本当に便利だよなその能力……」
「でしょー。」
ラルクは嬉しそうに尻尾を振っている。
「……道中に危険がなさそうなら……突入するか……」
廃坑に突入するかというとき、ラルクが何かに反応して振り返り、何もない森の方を凝視する。しきりに耳を動かして音と魔力視、探知魔法まで併用して索敵しているようだ。
「……なにか聞こえたか……」
「枯れ枝を踏む音……でも視えないし動体探知にも引っかからない……」
「……警戒するに越したことはないが……とりあえずは眼の前の野盗のアジトだ……」
音の主を見つけようとしているラルクを仕事に集中させる。
「ごめんおにぃちゃん。集中する。行こう。」
ラルクはインセパラブルを抜刀する。俺はライノサラスではなくブロードソードを取り出す。こんな環境で23x152mmのライフルなんてぶっ放そうものなら何が起こるか分からない。
索敵が得意なラルクを先頭にして突入する。
中は思ったより入り組んでいない。言葉を発さずにラルクの合図を確認しながら進んでいく。
しばらく進んで行くと分かれ道があったが、ラルクは右の道を示す。合図的にも反対の道には何もいないと考えて良さそうだな。
曲がり角の手前で制止される。曲がった先に何かいるようだ。遮音魔法を展開してラルクに声をかける。
「おにぃちゃん遮音魔法なんて使って魔力探知できるのが敵にいたらどうするの?」
頬を膨らませて怒っている。
「……そんなのが居たら……もう見つかってる……この先にいるのは女か?……」
不機嫌なラルクを無視して確認する。
「そうだよ。多分ボスの人。こっちに気づいてる様子はないけど……本当に生け捕るの?」
「……正直に言えば……脳さえ無事なら殺しても情報は手に入る……」
強制記憶読取機のお陰で死体からも情報が取れはするが……
「じゃあ殺しちゃってもいいんじゃないの?正面からヤッちゃおうよ。」
「……お前……こないだの護衛任務……俺に会いたいが為に……敵対勢力皆殺しにしただろ……」
「…………暗殺を企てたところを見せしめにした以外してないよ。」
面白いぐらい目が泳いでいる。
「……俺も人のこと言えないけれど……あんまりハーミットの仕事を増やしてやるなよ……」
「善処しまーす。そんなことよりボスの生け捕りどうするの?」
ラルクはバツが悪そうに話題を戻す。
「……それなんだが……うまく行けば戦闘にならないかもしれない……」
「そうなの?」
「……捕まえた男が言っていたんだ……ボスが女みたいな外見の男が好みなんだと……」
「それってまさか……」
露骨にラルクが嫌な顔をする。
「……ちょうど良くそんな少年が眼の前にいるからな……うまく懐柔できるかもしれない……」
「やだよぉ!」
「……いいから行くぞ……フードを外しておけよ?……」
ラルクは渋々返事をしてフードを外して納刀して前へ進む。それに続いて進む。ブロードソードは空間魔法で仕舞っておく。
「誰だ?部下が全員飛びやがって、今機嫌が悪いんだ。死にたくなければさっさと……」
奥で紙巻きタバコを吹かしている女がこちらを見て言葉をつまらせる。
その視線はラルクに釘付けになっている。
「き、君!名前は!?」
さっきまでの不機嫌全開な雰囲気が嘘のように興奮気味にラルクに声をかける。
「ラルク・サイレン。」
「あぁ!ラルクちゃんって言うんだね!声も可愛い!おいお前!お前が捕まえて来たのか!?褒美をやる!何でも好きな物を言え!」
鼻息を荒くしながら俺に言い放つ。
「……なら、数日前に……ここに来たという白髪でターコイズブルーの瞳の男について……教えてくれ……」
「なんだ。そんなことなら褒美と言わずに教えてやる。そこじゃ遠い。声を張りたくないから二人とももう少しこっちに来い。」
ボスが手招きをして促す。お言葉に甘えて近づかせてもらおう。機動戦術で一飛びで斬りかかれる距離まで近づく。
「ん?よく見たらお前も可愛い顔してるじゃないか。ん?でも俺の部下にこんな可愛い男居ないはず……居たら囲ってるはずだしなぁ……まぁいいや。可愛い男が二人も来てくれたんだ。可愛がってやらないと。」
うわ舌舐めずりしてる……視線もいやらしい……ラルクは毛を逆立てて本気で威嚇してるし。
「で?白髪でターコイズブルーの瞳の男だったな。アンチマジックワンドを数本売ってくれた。いい男だったが男臭すぎるからなぁ。それぐらいだ。名前も分からん。知ろうとも思わなかったし。」
確認するために魔法で俺の記憶の中のマックスの顔を再現して見せる。
「そうだ。こいつで間違いない。なんだ知り合いだったのか。それで?褒美は本当にこんなのでいいのか?何でもいいんだぞ?」
「……なら俺達に捕まってくれたら……楽でいいんだが……」
「それは流石に無理な褒美だな。」
「……だよなぁ……ワンチャンあるかなと思ったんだが……力づくで捕らえるしかないか……」
「おにぃちゃんこいつ殺していい?」
あの視線が心底嫌だったのか、相当殺気立っている。
「俺を殺す?ハッ!いくらワーウルフとは言え、そんな小柄な2人で俺に勝てるつもりか。」
奴は立ち上がり両手に短剣を一本ずつ構える。さらに身体強化を使ったようだ。
「……慈悲で教えてやる……俺達は2人共プラチナ級冒険者だ……それでもやり合うか?……」
「ハッタリが稚拙じゃないか?プラチナ級冒険者が2人もこんな小規模な野盗集団に派遣されるわけがない。」
「普通ならそうだね。でもお前はそれだけで2人のプラチナ級冒険者が動く最悪の悪手をしたんだ。」
ラルクはインセパラブルを抜いて既に魔力を込めている。刀身が光り輝いている。
「……ラルク殺さず捕らえろ……いいな?……」
「分かってるよおにぃちゃん。でも死なない程度にバラすのはいいでしょ?」
そう言うとラルクが一瞬で奴の眼の前に移動する。
「なっ!?」
奴はラルクの剣撃を短剣で受けようとするが、短剣ごと腕を斬り落とされた。
「っ!?なんだ!?防げない!?」
ラルクが続けて斬りつけると、今度は既のところで回避した。
「良い動体視力をしてる。野盗落ちしたのが残念だよ。」
ラルクは続けて攻めずに距離を取った。
「くっ……あ?血が出てない……?」
奴は斬り落とされた腕を確認する。傷口は焼かれたような跡になっていた。
インセパラブルの赤い魔石がハマっている刀は魔力を込めると超高温になる。魔法武器なだけあってその熱は外に漏れることはなく、斬りつけた箇所だけを焼く。ちなみに反対の白い方は清浄な光の性質を持ち、アンデットや悪魔のような魔物に特攻があるらしい。
「失血死されても困るから焼いただけだよ。五体満足でいられると思わないことだね。」
「くそっ!……なら!」
あ、奴が俺の方に走り出した。俺を人質にでもしようって魂胆か?
「あー……」
ラルクが手を伸ばして呆れている。
「……こっちに来るのか……アンチマジックワンドが面倒だな……」
アンチマジックワンドのせいで魔法が制限されるし、炭鉱だから火薬も使えないし。
たまにはポールウェポンでも使うか。ハルバードがあったな。空間魔法から取り出す。
奴が斬り掛かってくるのをハルバードの柄を使って受け止めて弾き返す。
「ぐっ……」
奴は片腕が無いせいかバランスを崩してよろける。
「悪いことは言わないから諦めて投降した方がいいよ。ポールウェポン使ってるおにぃちゃんは本当に強いよ。ダルマになりたいなら止めないけど。」
ラルクが同情したかのように奴に声をかける。
「クソっ!何なんだよ!俺は可愛い男に囲まれて暮らしたかっただけなのに!」
なんというか……しょうもないな……
「……お前の趣味嗜好なんて知らないが……野盗に落ちた事を後悔するんだな……大人しく捕まるならば落とした腕もくっつけてやる……だがこれ以上抵抗するなら殺す……」
奴に切っ先を向ける。
「随分と時間を掛けているようだね?ルイ。手伝ってあげよう。」
入口の方から聞き覚えのある声が聞こえた。振り返ると白髪にターコイズブルーの瞳の男――マックスが立っていた。入口でラルクが聞いた音の正体はこいつだったのか。
「マクスウェル様!」
ラルクが警戒してマックスにインセパラブルを向ける。
「ワーウルフの少年。どうして私を知っているのかは分からないが、安心しなよ。君達を襲うつもりはない。」
マックスが指を鳴らすと、野盗のボスが消し飛んだ。血痕すら残さずに。正確に言えばラルクが斬り落とした腕だけは残ったが。
「……何が目的だ……」
「暇つぶしだよ。まぁこの野盗たちは全く面白くなかったけれど。あの宝石のドレイクは面白かった。まさか君に痛手を負わせるなんてね。」
……なんだって?
「……ジェムコレクターの群れがこの辺りに出たのはお前の仕業か……」
「君が師匠と別れてからどれだけ成長したのか気になってね。一応人的被害が出ないようにはしていたよ。」
悪びれもせずに言いやがった。
「……俺以外のプラチナ級が相手していたらどうするつもりだったんだ……」
「それならそれで暇つぶしになるからね。それにしても本当に強くなったね。そうそう、君にこれをあげよう。」
マックスが魔法を使わずにどこからともなく銃を2丁取り出し、渡してきた。
「……なんだ?……大口径下部銃身のリボルバーと……なんだこれリボルバーのライフル?……」
1丁は大柄なリボルバーだ。もう1丁はライフルに見えるが、回転式弾倉がある。
「君のそのライノサラスのメーカーの新作だよ。たまたま手に入れてね。私には不要だから使いこなせる君にと思って持ってきたんだ。ライノサラス同様に魔法弾薬に対応している。予備マガジンと諸元表も渡すよ。弾は無いから自分で作ってね。」
あそこのかぁ。通りでゲテモノなわけだ。後で検証するとして、冒険者ギルドの地下訓練場借してくれるかな。
「……ありがたく貰っておく……で?マックス……本当にこれだけが目的か?……」
マックスは「そうだよ?」とすっぱり言い切りやがった。ぶん殴ってやりたい。
「痛いじゃないか。グーで殴ることないだろう?」
「……あ……すまんついムカついて……」
無意識にぶん殴っていたらしい。少しスッキリした。
「君は本当に直情的だね。じゃあ、まだしばらくこの世界にいるから、また暇つぶしの相手してね。じゃあね。」
そう言うとマックスはフッと消えた。
「……はぁ……ラルク……残党や虜囚の確認をして帰るぞ……」
ラルクは間の抜けた返事をして一人で走って確認に向かった。
数刻もしないうちに帰ってきて、あとは宝飾品と捕まっていた数人の若い男女だと報告を受けた。突入前に見えた数人はその人達だったようだ。
ラルクの報告にあった被害者を救出し、ハーミットに頼んで、迎えに来た魔導車に乗って冒険者ギルドへ帰った。
マクスウェル
年齢:不明
性別:不詳(外見上は男)
身長:185cm
種族:不明
白髪にターコイズブルーの瞳。非常に整った顔立ちをしている。ルイを世界を渡る者にした張本人。世界を渡る者たちからは最初の一人と呼ばれている。HUBという世界の管理者で、ラルクを含むHUBの守人の創造主。
強制記憶読取機
ナイフの形をした魔導具。頭頂部に突き刺し、記憶を読み取る。本来は殺人事件などの被害者の記憶を解析することで犯人を捉えるための捜査用魔導具。生きた人間に使うと解析時の負荷に耐えきれずに高確率で廃人になる。




