表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Elevator_Girl  作者: 深町珠
PR
39/66

お話

唖然とていた松之だったが、柳さん、どうぞ、との

諒子の言葉に天にも昇るような気持ちだった。



話ができただけでも最高だったのに、ここまで...









scene#18 cut#1



案外にエントランスは広く、深町は驚き

「広いんですね~。なんか.....。」


レトリックに洒落た感覚、しかし

21世紀の感覚で複製した雰囲気とは違う

その時代のリアル・タイムな感じ。

タイル細工は、本当にモザイク・タイルであり

職人がひとつずつ散りばめたものだ。

インスタンスに得られる模様とは趣が異なる。


ステンド・グラスにしても

本当にひとかけらづつ焼成したもので

着色したものとは異なる、深い色合い。


もう暮れてしまった夕暮れ、詩人が「青焼け」と

表現するような色合いの空がまた

そのステンド・グラスを彩っている。

自然と一体になる様は、工芸の域を越え

芸術的な表現、をも思わせた。


「病院の待合室みたいでしょ?」

諒子は、ちょっといたずらっぽく笑う。

そんな表情をすると、いたいけな少女の面影が

見え隠れし、松之はどっきりと胸を焦がした。


「そういえば.....。」

見回すと、エントランスホールは個人宅にしては

とても広い。

重みのある無垢板の西洋間、柿渋色の扉、

真鍮の把っ手、彫り込み片板の硝子...

重厚だ。


「祖父が、ここで開業していたの。」


へえ、と深町が感嘆の符丁を発する。

「じゃあ、諒子さんは女医さん?」と言うと


諒子は、いいえ、とかぶりを振った。


楽しそうに笑うかと深町は思っていたが

どちらかと言うと沈みがちの表情で。


意外。と深町は何か思索していたが

その思考を遮るかのように


「どうぞ、中へ」と、たおやかに諒子は

柿渋色の扉を開き、客間へと二人を招いた。



招き入れられた客間は、更に隔世を感じさせた。

ダーク・ブラウンのクロスが貼られた長椅子。

ソファ、と表現するよりは、長椅子、と表記するが

相応しいそれは、日本の職人の感性が得た

西洋風、と和の感覚が融合したもので

それもやはり、昭和初期の豊かさを彷彿とさせた。


プリーツのたっぷりとられたビロードのカーテン、

窓硝子は規格品ではなく、窯で作られたもの。

木枠の方を合わせる、と言う贅沢なものだ。


松之は思う。

諒子に、どこかしら感じられるゆとり、な雰囲気は

ここの生活から発したものなのだろうか、と。


「お掛けになって。お茶をお持ちしますから」と

諒子は二人に長椅子を進め、奥のドア、

これも重厚なもの-を静かに開き、そして

音もなく閉じた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ