散歩
scene #16 cut #4
元気に砂浜を走り回っていた諒子の犬も
次第に飽きてきたのか、戻ってきて。
帰路であろうか、松林のある遊歩道の方へと
向かいはじめ、こちらの方を見て立ち止まっている。
そろそろ、夕刻......。
「あ、そろそろ私、帰らないと。」諒子がそう言うと
深町は残念そうに
「そうですか~。もう少し早ければなぁ。
あ、そうだ。美人の一人歩きは危険だから、お送りします!」
と、半ば迷惑半分に、白い大きな犬の後を
追い始める。
彼女は迷惑そうな表情も見せずに
犬の後をゆっくりと歩いた。
松之もしかたなく、後を付いて行く。
....まったく。もう。あの性格が羨ましいよ。少し。
面と向かって美人だの、花のような人だの。
よくそんな事がふつうな顔して言えるものだな。
とはいえ、松之も内心、諒子とここで別れるのは
少し淋しい、とは思っていた。
...そうか、あいつ。
松之は、深町の友情に感謝した。
わざと、そうしてきっかけを作ってくれていたんだ。
「お家は遠いんですか?」と深町が言うと
いいえ、ここから20分程です、と
犬がゆっくりと振り返りながら先導する後を
深町と諒子はフォローし、すこし離れて松之。
二人の後をゆっくりと歩く。
遊歩道には、所々に花が咲いていて
ちょっとした花壇のようになっていた。
その、花の種類の話題とか、木の話とか
深町は、諒子の雰囲気を見ながら
話題を次々と変えて、話を続ける。
...ああいうところは、勉強になるな。と
松之はへんなところに感心した。
同い年をは言え、深町は松之よりも
世知に長けていた。それは彼の境遇が
そうした能力を授けたのだろう。
下町生まれの下町育ちだから、生来的に
コミュニケーションが上手なのかもしれないな、と
松之は思う。
scene#17 cut#1
しばらく歩くと、遊歩道は普通の道となり
更に進むと、住宅街の中の細い路地の奥まったところに
諒子の家はあった。
緑深い敷地の中に、趣深い屋敷が
ひっそりと佇んでいる。
古い様式の木造建築のようで、部分的に西洋的な様式が混在している。
コングロマリット、とでも言おうか。
どことなく、昭和初期の医院を彷彿とさせる...。
流石の深町も配慮を見せたのか
「あ、それじゃあここで。もう、大丈夫。安全です」
と、踵を返す...と。
「送って頂いてありがとうございます。
お茶でもいかがですか」と、諒子はにこやかにそう告げる。
深町は、いいえ、それには..と,カタチだけ(笑)。
でも、せっかくここまでいらしたのですから、との諒子の言葉を
待っていたかのように(笑)深町は桜井家に。




