↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宵の白鷺と千年の恋  作者: 若草 玻璃
永遠のはじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/57

33

 学園から帰宅して、芋まんじゅうを目の前に、宵はぼうっとダイニングテーブルに座っていた。キッチンでは登世子が晩ご飯を作っていて、お味噌汁のいい匂いが立ち込めている。


 ――約束して。もう力は使わないって。


 あやめの《お願い》に宵が頷けないままでいると、あやめはそれ以上無理強いすることはなく、考えておいてね、とだけ言った。


 わたしの力。ママに、使ってはだめと言われていた力。

 宵はずっと小さい頃のことを思い出していた。それはたぶん、宵が生まれてから最初の記憶だ。三歳か、四歳になる頃か。自分の中にそんな力が秘められているなんて、思ってもいないくらい幼い頃。宵がかくれんぼでお社に入って、中で玉を見つけたときに、不意にそれは訪れた。


 なぜかはわからなかったけれど、玉を見て、自然と思ったのだ。留めなくちゃ。と。

 すると、風が止まって、大きな鳥の鳴き声が聞こえて。それ以外何の音もしなくなって。静まり返ったお社の中、宵はただ玉で遊んでいた。

 そのあと、飛んできた母に叱られて、もうこの力は使ってはいけないときつく言い含められた。怒られたことに宵はびっくりして泣いて。その記憶はそこでおしまい。


 今考えれば、玉を見て《留めなければ》と考えたのは、もう体に染みついていたのだと思う。宵の知らないところで。

 ……久遠さま。目を閉じて、あの不思議な庵でのできごとを思い出す。あのあと、お社に行っても結局、あの庵には行けなかった。


 ――あれは、われらの命だ。


 久遠の言葉が胸にちくりと刺さる。永遠の黄昏。永遠の宵の時間。

 沈むことのない夕陽の前に、今も久遠はひとりでいるのだろうか。それは、きっとさみしい。でも、ときが進むことはすなわち、久遠との別れ。


 どうしてこんなに久遠のことばかりを考えるのか、宵にはわからない。本当に宵の気持ちなのか、それとも、あの夢の中の白鷺の記憶のせいなのか。

 それでも、久遠に触れられたところ――足や髪が、なんとなく熱を持つ。

 はやく会いたい。次はいつ会える? どうしたら、ずっと一緒にいられるだろう……。


 空想に耽っていると、登世子が顔を出した。

「お嬢さま。もうすぐできますよ、お箸を用意してください」

「はぁい」


 芋まんじゅうを慌てて口に入れて、宵は立ち上がった。キッチンから漂ってくる揚げ物の匂いで、宵は夕飯を予想する。同時に、明日のお弁当はおにぎりも追加で作ってもらおうと思いつく。

 扉の封印のことも、章典祭のことも、勉強も。考えなければならないことはたくさんあるけれど、それでも宵は明日の学校が楽しみだった。


 大好きなひとたちと、楽しいこと、幸せな時間。それがずっと続けばいい。宵の願いはただそれだけ。

 宵は登世子に続いて、夕飯の準備を手伝うべくキッチンへ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。