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部屋に戻り、雑炊の盆を持って右往左往していた登世子に謝ってから宵は盆を受け取った。お腹が空いた、と思っていたのに、色々思い出したら急に食欲は失せた。
……気がしたけれど、結局ぺろりと平らげてお替わりした。もちろん登世子は鍋にたくさん作ってくれていた。
シャワーを浴びてさっぱりして、新しいパジャマに着替えてから庭に出る。今日は家から出ずに休んでいてと登世子に言われたけれど、もとより外出するつもりはなかった。もうすぐ夕方になる。
そういえば。連休中に母のお参りに行こうと思っていたのだった。
宵の家の本流は島根にある。もっとも、宵は行ったことはない。母の遺骨の大半はそこに納められているが、この本邸にも分骨して埋葬されている。先ほど行ったお社の、さらに奥。
庭の小手毬を少し切って、つっかけをサンダルに履き替えて宵は母のもとに向かった。
宵は小手毬を母と、祖母の墓石に分けて供えた。御影石の小さな墓石。ここには母と同じように代々の白鷺たちが眠っている。裏手の竹山までが白鷺家の敷地だ。パジャマのままで来てしまったけれど、家の敷地内だし、まあいいだろう。
しゃがんで手を合わせる。ここに来るのは、高校に入学する前日以来。
生徒会に入ったこと、ママが黎明学園を勧めた理由がわかったこと、そして約束を破ってしまったこと――その他にも、色々なことを報告した。
目を開けると、今度は祖母の墓石に手を合わせた。母とは折り合いが悪かった、とは聞いていたが、折に触れ母はここに来ていた。宵もよく一緒にお参りをした。
宵が小さい頃に亡くなった祖母。記憶はほとんどない。姿もぼやけた写真でしか知らない。
「会ってみたかったなぁ、おばあちゃん」
本当にきらいだったなら、きっとお参りなんてしないだろう。だから、母はきっと祖母のことをきらってなんていなかったのだと、宵は思う。
もうすっかり日が暮れ始めている。宵は立ち上がった。
「あなたね、あのとき朝日さまのお腹にいたのは」
背中にかかった声に宵はびくりと肩を跳ねさせた。
知らない声。おそるおそる振り向くと、そこには艶のある黒髪の少女が立っていた。発光するように肌が白い。一瞬、お化けかと思って目をこする。
「ど……どちらさまですか? あの、ここは私有地で、一般の方は入れないんですが」
「やだ、一般の方だなんて。私とあなたの仲でしょ?」
「仲……?」
少女がゆっくり近付いてくる。黒い瞳が大きい。少女は宵の顔を覗き込んだ。
「はじめまして、白鷺宵ちゃん。私は小夜。鴉森小夜だよ」




