友軍
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
第六航宙遊撃隊が再編され、輸送艦二隻による牽引準備が完了した第十二番惑星外縁防空プラットフォーム。彼らは、安全どころか平穏すらなくなったこの恒星系へと漕ぎ出した。
十二番惑星から十一番惑星へジャンプゲートをくぐる。されど、特に目立った事案は発生しなかった。もぬけの殻となった航空隊の臨時基地が置かれていることを除けばいつもと何も変わらない。瞬く星の光と、虚空だけが広がる、いつもの宇宙。
頼るは輸送艦の推力のみ。速度は低速で、厳戒態勢のまま移動する時間が続く。司令室も、防空要員も、誰も声を出さなかった。
ふと。司令室に飛び込んでくるものがあった。他の誰でもない、通信士官である。
「第十番惑星のジャンプゲート付近に展開中の友軍駆逐艦より連邦の緊急連絡網による無線通信です!」
「読み上げろ。」
はやる気持ちを抑え、冷静に事態への対処に努める。
「はっ!『こちら連邦宇宙海軍所属、ノエル級駆逐艦31番艦『マチルド』国籍不明のラウンドマークをつけた機体数十機に強襲され現在交戦中。付近の連邦所属部隊に援護を求む』以上です!」
「了解した。下がれ。」
「失礼します」
レギュータスは悩む。此れが罠である可能性はあるか。可能性としては捨てきれない。だが、此れを見逃しても結局のところ第十番惑星には向かわなければならない。なればすぐに向かうべきか。否、戦術的に考えるのであれば、此の緊急通信を傍受されている可能性がある以上、危険極まりない。
しかし、『マチルド』が撃沈されてしまっては、手に入る情報が無くなってしまう。
戦う意義は友軍救出。敵を知るためにもそれは急務。宣戦布告してきた敵が不明な以上、此れ以上の逡巡の時間はない。
「総員、聞こえるか。プラットフォーム司令官のレギュータスだ。本プラットフォームは先刻、友軍からの支援要請を受領した。此れより、本プラットフォームは臨戦態勢から戦闘態勢へ移行。友軍の支援に向かう。航空隊は機体に搭乗して待機。繰り返す、総員戦闘配置!航空隊は速やかに機体に搭乗して待機!ジャンプゲートの先は戦場だ!心せよ!」
基地の電灯が消灯し、赤の臨時灯へ切り替わる。予備電源に切り替えられ、戦闘に必要な装備以外の電源が落とされる。シールドと防空火器を最大効率で運用可能に、レーダーの探知範囲、精度、速度が向上する。それが、戦闘の合図だった。
ジャンプゲートを超える。司令室には電子戦闘の要員がすべて配備され、ジャンプアウト直後、即座にレーダー情報を統合、レギュータスの正面にはすべての戦況が映し出された。
敵は15機、味方艦は現在一隻でシールドと一部防衛火器以外の戦闘能力を喪失。
「航空隊へ、敵は三機五個小隊で友軍駆逐艦と交戦中。諸君らは此れを撃墜、ないし撤退させ、友軍駆逐艦を救出せよ。無理だけはするな。何かあれば即座に帰還しろ。味方艦に撃ち落されるんじゃないぞ!」
「「「「「「「了解」」」」」」」
「分隊の指揮はフィオに一任する。任せたぞ」
「了解しました。全機無事に返してやりますよ」
「頼む。」
虚空の戦場へ、七機の翼は飛び立った。曳光弾と対空防御砲火の間を抜けて。
「レベラ、俺について来い。」
「了解。隊長、今回も背中は任せてください。」
レベラの機体が慣れた手つきで、フィオの機体の左上方へと回り込む。
「モスカートはメセスに。今回も頼むぞ。」
「りょ~かい。行くぞメセス。隊長さんにぜんぶ食われちまう前にな」
「そうですね。今のうちに全部平らげてしまいましょう」
二機は早々と分隊から離脱。戦場へと飛び去って行った。
「ホルン、グレン、リベットの三機は対空砲火の隙間を埋めろ。二番砲塔後ろが穴になっている。」
「「「了解!」」」
三機もまた、編隊を崩すことなく命令地点へと飛翔していく。
そして、フィオとレベラは、一気にスロットルを上げたかと想えば、何処かへと姿を消した。
“おいなんだあの機体は!”
“連邦のラウンドマークだ!近くの宙域に宙母はいないんじゃないのかよ!”
“敵機は任せろ!俺たちがやる。お前らはとっととあの死に欠けにとどめを刺せ!”
“はっ!!”
「三機。だな。」
「もしかして舐められてます?」
「いや、数的有利を崩さないように、且つミサイルのシーカーがギリギリ届かない角度から来てるな。二式の特性をよく知ってるね。」
「手練れ、ってことですか。」
「そゆこと。『ライトニング』の射程ギリギリで上の左右方向にブレイク。そのまま一気に散開させて各個撃破する。こっちは右に行く。」
「左は任されました。」
「じゃ、行くぞ。」
短距離空対空誘導弾 “AIM-83F”、通称『ライトニング』の射程圏ギリギリで一気に上方向の左右に散った二機を追って、敵の三機は散開した。モスカートに二機、メセスに一機。だが、戦場で数的有利を片方でも崩した時、いや、馬鹿正直に格闘戦に乗った時。それは操縦者の腕がすべてを決定する戦場になる。
“なっ!?二式の基本は一撃離脱だろう!なんで格闘戦が…!”
「速度が乗った状態からならそれは通用しない。」
戦闘の最中、ひらりと機体を反転させ、敵機を上から見下ろす。敵が操縦桿を引くときにはもう遅い。20mm機関砲4門の正面に広い翼面を晒してしまった敵機は成す術もなく宇宙の藻屑となった。
一方、モスカートに向かった二機は数の優勢を生かして、攻撃しようとすればどちらかの機体の射線に入るように位置取り、モスカートの動きを封じていた。しかしモスカートも巧みに敵の射線には侵入しないように機体を操り、戦闘は膠着していた。
「めんどくさいなぁ…。順当な戦術やめてくんないかな。」
ぼやくものの、順当な戦術とは効果がある故に今まで伝えられてきたのである。
“三番機の反応途絶!”
“なに!?”
だが、巧者との高速戦闘中に一瞬でも気を抜いてはならない。相手も、それを待っているのだから。
「フレア展開。」
赤外線誘導の誘導弾を回避するために搭載される、マグネシウムによって恒星の如く煌々と輝く対抗装備を敵機の目の前へと散らす。
“なっ!前が!おい!敵機の位置は!”
答えるものはいない。カバーの無くなった編隊戦闘はもはや意味を成さないのだから。
喰いやすい距離に一機、そして二機。それだけである。
たった一瞬で長かった戦闘は決着してしまった。
「ふぅ。まずは三機。」
「いい戦闘でしたよ」
「いたのか…。カバーしてくれればもっと早く終わったんだぞ~?」
「着いたころには決着間際だったので。」
「ならしょうがないか。」
「ほら、次は早めに来てくれよ?」
「善処はしますよ。」
戦場のど真ん中で二機は、久々に会った友人の様に笑っていた。その余裕こそ、彼らの強さの証でもあった。
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