敵と呼ばれるもの
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
駐機場でメカニックが手早く出撃準備を整える間、ここに配属されたばかりの七人の航空兵とレギュータスは併設された会議室でモニターを見ていた。
「さて、諸君。実戦だ。第六航空遊撃隊は二式空間戦闘機、第三十二訓練小隊は…。」
言い淀む。訓練兵とは言えこの作戦室に来てしまったのならば、命令を出さぬわけにもいかない。彼らがもっと未熟で此処に来なければよかったのだが…。などと、教官としては在り得ないことを考えてしまう。だが、最早追い返せない。
「第三十二訓練小隊は、一式空間戦闘機に搭乗。両航空隊は本基地の防空任務に当たれ。」
「大佐。質問をいいでしょうか。」
「フィオ少佐か、構わない。」
「敵の規模は判明していますか。」
「あぁ。軽戦闘機十七機、偵察機三機の二十機編隊と判明している。」
「その規模って、第十一惑星の防衛プラットフォームに配備されていた第八防空隊じゃないですか?」
「ホルン!迂闊に味方が裏切ったみたいなことを…!」
リベットがホルンをたしなめようとした時、レギュータスが其れを制した。
「リベット。ホルンが正しい可能性が高いんだ。理由は不明だが連邦の機体に搭乗した、近隣航空隊と思しき部隊がこちらに攻めてきている。現状、確定した情報は我々は今、此処を防衛しなければならないという事だけ。」
「了解です。」
「他に何かあるか。」
皆が考え込むような表情をしているものの、口を開く者はいない。
「いないようだな。兎にも角にも此処が無くなっては原因究明とも言っていられない。メカニックも整備を終えたらしい。諸君、絶対に帰還せよ。此れが絶対命令だ。」
『了解!』
七人は作戦室を飛び出し、指定された機体へ搭乗する。
訓練時の様に丁寧な出撃チェックではなく、必要最低限を手早く終わらせゴーサインを送る。
第六航空遊撃隊が素早く出撃し、其処に続いて第三十二訓練小隊も戦場へと飛び出した。
青い閃光、赤い閃光、火花、爆発、誘導弾が放つ赤い軌跡。目の前に広がるのは恐ろしくも美しい戦場の光景だった。それだけの事態が起こっていながらも耳に入ってくるのは機体の振動だけ。それが、宇宙という空間だった。
「レベラ、俺について来い。メセスはモスカートに続け。」
「「了解!」」
「訓練小隊はどこかにいる偵察機を探し出せ!任せたぞ!」
「「「了解!」」」
実戦を経ていた彼らの行動は迅速だった。二機編隊へと即座に編成を再編し、訓練小隊に明確な命令を与えていた。
防空砲火へと飛び込んだ四機は、回避軌道を取る敵機を正確に追い込み、撃墜していく。しかし、ふと、敵の無線が混線した。
―くそっ!!!此処で死ぬか資源の不足で死ぬかじゃないか!!―
―俺らは、俺らは悪くない…。宣戦布告なんてしたあいつらが…―
フィオは、操縦の手を緩めず、その情報を司令室へ即座に送信する。
基地を襲撃した十七機のうち八機は、フィオたちが出撃してからものの七分足らずで撃墜されていた。
「何故、何故撤退しない。」
「命令を受けての襲撃ではないのかもしれません。」
「何?」
第六航空遊撃隊が疑念を浮かべる中、第三十二訓練小隊は偵察機を発見する。
「グレン。方位一七三、あの機影は…。」
「ホルン、こちらでも確認した。おそらくは偵察機だ。」
「光学的に捉えた。連邦の偵察機で間違いない。どうする。」
「できれば鹵獲したいよな?」
「リベットの言うことも尤もだが、難しいぞ。ホルン、偵察機のシールド特性って覚えてるか?」
「あの型の偵察機のシールドは中継器の遮断上限が若干低い代わりにシールドの全力展開時間が長い。」
「さすがホルンだな。グレン、射撃は得意だったな。」
「あぁ。リベット、何か手を思いついたのか?」
「勿論。ホルンと僕で、誘導弾を同時に直撃させてシールドを割る。その隙を逃さず、グレン、君があの機体のエンジンを上方から撃ち抜いてくれ。」
「なるほど…。わかった。やってみよう。」
「絶対に成功させるから任せろ。」
グレンのその声に混ざった少しの震えに気が付いた者はいなかった。その声を聴く彼等もまた、同じ感情を抱えていたためである。
ミサイルのシーカーを起動する。ピッピッという特徴的な音が短くなり、数秒後、ピーという長い音へと変わった。
「ホルン、行くぞ。」
「了解」
寸分の狂いもなく、誘導弾は宇宙の闇へと放たれた。偵察機は回避軌道に入れど、チャフやフレアは展開しない。誘導弾による連撃を警戒するためだ。第一弾でシールドを破砕し、二弾で機体を破壊する。偵察機撃墜の常套手段である。
誘導弾は同時にシールドに着弾。彼らの目的通り、シールドは耐久上限を超えて一時的にダウンする。二発目に備えていた偵察機の搭乗員たちは鼻で笑った。ミサイルの誘導音はしなかったからだ。二発目は放たれていない。それはつまり、シールドが再展開できることを意味している。だが、
「油断、慢心、其は総ての敵である。」
一式空間戦闘機に搭載された七・七ミリ機銃弾は正確にエンジンだけを破壊。燃料タンクには引火せず、慣性システムによって機体はその場に停止。偵察機はまな板に載せられた魚になってしまった。
「グレン!さすがだ!」
「いい作戦だったぞリベット」
「ホルンの正確さに助けられた。」
三人は再度編隊を組んで誉めあう。それが彼らの良いところであり、
「さ、命令を遂行しよう。後二機捕まえてしまおう。」
「了解。やろうか。」
此れもまた、彼らの軍人として素晴らしいところであった。
一機には事前にチャフ、フレアを展開され、作戦が失敗に終わったものの、三機の綿密な連携によって逃走叶わず宇宙デブリとなり、もう一機は彼らに捕捉されるや否や降伏した。
ホルン、グレン、リベット。彼らが、歴史に一つ傷跡を残した最初は、恒星系の辺境で起きた小規模戦闘からであった。
偵察機の撃墜、拿捕により、ついにフィオ率いる第六航空遊撃隊の位置把握が不可能になった襲撃者たちはあっけなく宇宙の藻屑となる。
此れにて、プラットフォームへの襲撃は終わりを迎えた。二倍以上の敵機に襲撃されながらも、全機帰還という華々しい戦果は彼らの士気を大いに高める。
しかし、捕虜となった兵士らの言葉は、プラットフォームに激震を走らせた。
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