虚空へ
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
第十二番惑星外縁防衛プラットフォーム。この恒星系の全域にまで広がった非常に広大な連邦の最外縁。元より辺りに広がるのは虚空のみ。静かなる宇宙の闇が口を開けているばかりである。
だが、その中でもひときわ明るく、「静」というものとは対極に位置する風景がそこにあった。
そう、食堂である。
軍隊に於いて将兵の士気を最も左右するものは、食事だ。それが、閉鎖空間でなければ物理的に行動不可能な宇宙軍であればそれはより重要となる。故に、最外縁に存在する総員百名程度のプラットフォームでも食事は十分なものが提供される。
「ホルン、君、ここにきてから唐揚げを食べているけど飽きないのかい?」
「飽きるも何もあるものか。ここの唐揚げは一級品だぞ?リベット。一つ食べてみるといい。」
「本星の方でも話題になっているんだぞ?なんでも此処の唐揚げは全プラットフォームでも一、二を争う出来らしい。」
「むぐ…。ほんほら。うまひ。」
「このプラットフォームに配属の料理長が用いる酵母と調味料の配合は門外不出だそうだ。あまりに話題だから本部が諜報科を秘かに送り込んだそうだが、行方が知れぬという噂もある。」
「それは噂の域を出んだろうホルン。というか、唐揚げのことになると途端に饒舌になるよな君は」
笑い声が食堂に響く。時刻は連邦標準時で18時ごろ。二十代前半、まだ若き彼らは雑談をしながらもかなりの量の食事を胃に納めていく。
そんな彼らに声をかけるものが居た。
「俺たちも隣にいいかい?」
「どうぞ…?って。」
言い淀んだリベットの視線の先、階級章を見て気が付いた三人が立って敬礼をしようとしたところで軽く制された。
「君たちと同じ、宇宙を飛ぶ部隊なんだ。そうかしこまらないでくれ。」
「驚かせたようで悪かったな。俺はメセス。んで、こいつが」
「モスカートだ。しばらく一緒によろしくね。」
モスカートが柔和に笑いかける。
その笑みで緊張が解けたのか、はたまた若き彼らの性格か、五人は食事をしながら雑談を交わす。モスカートやメセスの戦果の話、搭乗機体の特長や弱点。ホルンたちからは、教官としてのレギュータスや、これからの訓練の話。
出会って初めてではあったが、彼らは旧知の仲の様に話を弾ませていた。
少し経った後、フィオやレベラも合流し、三人はまるで憧れのアイドルに会ったように目を輝かせ、話を膨らませる。食事がいつもよりちょっと減るのが遅かったのは気のせいか。
「ふふ、ロケットポッドを用いた地上攻撃のコツはね…。」
「コツは…?」
「ズバリ、敵兵器のサイズを覚えることだ。」
「サイズ、です?」
「うん、ロケットポッドは機体の外側につけられるだろう?」
「そうですね、オーソリティ型の攻撃機なら翼端です。」
「よく覚えているね。外側にある都合上、まっすぐ飛ばしてしまうと、狙ったところに飛ばなくなってしまう。だから連邦は二百メートルを照準距離として、その距離で直撃するように調整しているんだ。だから二百メートル先から見た目標のサイズを覚えておけば、迷うことなく引き金を引ける。」
「なるほど!」
座学、くだらない冗談、戦場で初めて知ったことなど、さながら親戚の集まりのような流れが続いていた。言葉にするならそれこそ、和気藹々という奴だろう。
しかし、その流れを赤色灯がぶった切った。
【総員、第一種戦闘配置!対空要員は防空指揮所へ、航空要員は速やかにスクランブル!繰り返す!総員、第一種戦闘配置!これは演習ではない!】
「行くぞ、レベラ。モスカートとメセスもだ。まさか実戦からとは思わなんだ。」
「さぁ、行きましょう。」
「「了解」」
実戦を経験した彼らは素早く、フィオとレベラを先頭として、ヘルメットを片手に走って行ってしまった。
あまりに突然の事態にぽかんとしていたホルンとグレン、リベットはハッとしたように顔を見合わせる。
「俺たちも航空要員だよな?」
「そう…だ。訓練隊とはいえレギュータス教官の率いる小隊だ!」
「行こうか!」
少しの逡巡から彼らも走り出す。
これは、彼らにとって、いや、このプラットフォームにとって最も苛烈な戦闘の幕開けに過ぎなかった。
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