ブレイク
久保田から連絡が来たのは、
黒崎が死んで三日後だった。
『会いたい』
短いメッセージだった。
少し迷ってから、
返信する。
『分かりました』
――
待ち合わせ場所は、
夜のコインパーキングだった。
コインパーキングは、
久保田の車しか停まっていなかった。
助手席へ乗り込む。
車内には、
煙草の匂いが残っていた。
久保田はかなり痩せていた。
目の下にも、
濃い隈ができている。
「話って、
何ですか?」
そう言うと、
久保田は小さく笑った。
「そんな顔するなよ」
声がかすれていた。
しばらく沈黙が続く。
遠くで、
車の走る音だけが聞こえていた。
「黒崎を殺したの、
お前だろ」
静かな声だった。
何も答えない。
「警察には言わない。
安心しろ」
久保田は煙草へ火をつける。
「俺は、
お前に真実を話した」
「俺なりに、
償ったつもりだ」
少し間が空く。
「黒崎も死んだ」
「西条凛まで巻き込むな」
「……それが、
呼び出した理由ですか」
「そうだ」
久保田は煙を吐く。
「もうやめろ」
「これ以上、
罪を重ねるな」
「……もう終わったことだ」
その瞬間、
何かが切れた気がした。
終わった。
誰にとって。
未央は、
終われなかったのに。
気づけば、
助手席から身体を乗り出していた。
久保田が目を見開く。
「お、お前――」
首へ腕を回す。
煙草が床へ落ちた。
久保田が暴れる。
狭い車内で、
鈍い音が響く。
久保田の肘が、
何度も身体へぶつかった。
足が暴れる。
ハンドルへぶつかり、
クラクションが短く鳴った。
「やめ……っ」
さらに力を込める。
「終わってないんだよ!」
気づけば、
叫んでいた。
久保田の爪が、
腕へ食い込む。
それでも、
腕を離さなかった。
やがて。
久保田の力が、
少しずつ抜けていく。
車内が静かになった。
荒い呼吸だけが残る。
――
久保田の車を運転する。
夜の街を抜け、
凛のマンション近くまで向かった。
公園前へ車を止める。
後部座席の久保田を、
運転席へ移動させた。
久保田のスマートフォンを手に取る。
指を押し当てる。
ロックが外れた。
凛とのトーク画面を開く。
『少し話したい』
その下に、
公園の名前を打ち込む。
送信。
スマートフォンを、
久保田の膝へ戻す。
少しして。
凛が、
こちらへ歩いてくるのが見えた。




