対戦、ストライクカード
ある程度ウルペクラやシャウラからアドバイスを貰って、あとはアルシャが自分で考えるという形で話は終わった。
ただそれはあくまで同行者決めの話が終わったというだけであり、アルシャは一段落付いたタイミングでウルペクラに声をかける。
「同行者決めでやるのは諦めたにゃ。でも、ウル先輩が開発者って言うなら、一回ストライクカードで戦ってみたいにゃ。私が勝ったらなんかレアカード欲しいにゃ」
「いいっすよ。そういえば自信あるって言ってたっすね。大会とか出たりしたことがあるんすか?」
「無いにゃ! でも、コルネにはいっつも勝ってるし、コルネは『アルシャは凄く強い』って言ってくれてるから結構強いと思うにゃ」
「……そ、そこの評価は参考になるのでありやすかねぇ?」
「アルシャがなにやっても褒めそうっす」
同行者決めとは関係なくストライクカードで勝負してみたいというアルシャの言葉に、ウルペクラが快く応じてデッキを取り出す。
アルシャはかなり自信がある様子だったが……その自信の根拠が、仲が良くて一緒にストライクカードで遊ぶ機会の多いコルネの評価によるものであり……アルシャLOVEのコルネの評価は果たして参考になるのだろうかと、シャウラとウルペクラは苦笑する。
ともあれ、アルシャも自身のデッキを取り出し、一度交換してカードシャッフルをした後で向かい合って席につく。
ストライクカードは、ストライカー、マジック、カウンターの三つの山札をひとつのデッキとして戦うカードゲームである。
それぞれの山札は十五枚ずつで、ひとつのデッキの総枚数は四十五枚。プレイヤーは最初に、デッキの山札から二枚ずつのカードを引いて六枚の手札からスタートする。
つまり、互いに必ず初期手札は、ストライカー二枚、マジック二枚、カウンター二枚という構成になり、その読み合いも醍醐味のひとつである。その次のターンからはターンの開始時に三つの山札のうち、好きな山札からカードを一枚ドローすることができる。
三種のカードはそれぞれ裏面の色が違うため、対戦プレイヤーは相手がどの種類のカードを何枚持っているかという情報だけは得ることができる。
「アルシャが先攻後攻を選んでいいっすよ」
「じゃあ、後攻がいいにゃ!」
「はいはい。じゃ、アタシの先行っすね」
ゲームの進行は比較的シンプルで、まず先攻後攻を決める。先行は最初の一ターン目にはドローできないため、初期の六枚の手札でゲームを開始する。
まず、場のメインストライカーゾーンに戦いの主役となるストライカーを出す。
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最弱の支配者
ATK:1 DEF:1
ストライカースキル
最弱の支配者がメインストライカーゾーンにある場合、相手はバトル宣言後にカウンター、マジック、ストライカースキルを発動できない
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ストライカーにはATKとDEFの数値があり、攻撃を行う際にはATK値を攻撃を受ける際にはDEF値を参照して計算を行う。
互いのストライカーでバトルを行い、上回った数値分相手にダメージを与え、ライフポイント二十を先に削り切ったほうが勝利である。
「あとはカウンターを伏せて終了っすね」
「うにゃ? サポートカードは出さないにゃ?」
ウルペクラの宣言を聞いて、アルシャは不思議そうに首をかしげる。場にはメインストライカーゾーン以外に三つのゾーンが存在する。
基本的に自分のターンでしか使用できないが様々な補助効果があるマジックカードを使用するゾーン。自分と相手のターンどちらでも条件さえ満たせば発動可能なカウンターカードを置くゾーン。そして、メイン以外のストライカーを置くことができるサポートゾーンである。
言ってしまえばストライカーカードとは、主軸となるメインストライカーを他のカードで強化しつつ戦うカードゲームであり、基本的にバトルが出来るのはメインストライカーゾーンの一枚だけだ。
では他のストライカーは手札で腐るのかと言えばそうでもなく、一ターンに一枚ストライカーをサポートゾーンに置くことができ、サポートゾーンに存在するストライカーの枚数分だけメインストライカーのATKとDEFを強化することができるし、サポートゾーンで効果を発揮するストライカースキルを持つカードもある。
単純に出すだけでステータスは上がるし、自分のターンにメインストライカーを破棄してサポートゾーンからメインストライカーゾーンにカードを移動させることで、メインストライカーを入れ替えることもできる。
さらには強力なステータスを持つカードは、バトルを行うために一定数のサポートカードがサポートゾーンに存在する必要があるものが多かったり、アルシャの認識としてはサポートカードはとりあえず出しておけば有利という認識だったが、ウルペクラはサポートカードを出さずにターンを終了した。
そのことを不思議に思いつつも、アルシャは回ってきた自分のターンをプレイする。
「……私のターンにゃ! 私は、ストライカーカードをドローして……これにゃ!」
アルシャはストライカーの山札からカードを引き、ニヤリと笑みを浮かべてカードをメインストライカーゾーンに出す。
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進撃のストライクライガー
ATK:6 DEF:5
バトル制限:サポート2枚以上
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自信満々にアルシャが出したカードはステータスも高く、バトル制限の付いたカードであり、それを見たウルペクラは納得したような表情で呟く。
「ああ、なるほど、捨て身デッキっすか」
「一枚見ただけで、なんで分かるにゃ!?」
「ストライカースキルの無い高ステータスストライカーを自信満々に出してきた時点で大体分かるっす」
「う、うにゃぁ……わ、分かっていたとしても、大丈夫にゃ!」
ウルペクラの言葉がカマかけであるかどうかを疑うことも無く、答え合わせのように驚愕しつつも、アルシャは笑みを浮かべていた。なにせ、今回の初期手札の引きが非常によかったのだ。
既に、アルシャの頭の中には勝利の二文字が浮かんでいた。
「私はサポートゾーンに、このカードを出すにゃ!」
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双頭のサポートスネイク
ATK:1 DEF:1
ストライカースキル
このカードがサポートゾーンにある時、2枚分のサポート効果を得る
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アルシャが出したのは、一枚で二枚分となるサポート用のストライカーであり、これにより一ターンに一枚しかサポートを出せないルールであっても、後攻一ターン目にサポート二枚制限のカードでバトルができる。
さらに、サポート二枚分のステータス加算も派生する。
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進撃のストライクライガー
ATK:6(+2) DEF:5(+2)
バトル制限:サポート2枚以上
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「さらに、私はマジックカード捨て身を発動にゃ!」
ウキウキと言った感じで、アルシャはさらにマジックカードを発動する。
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捨て身
ストライカースキルを持たないストライカーに使用可能。バトル終了まで対象のストライカーのATKをDEFの数値分上昇させる。バトル終了後、次の相手ターン終了時まで対象カードのDEFを0にする。
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そう、これこそがアルシャの使う捨て身デッキの主戦法。ストライカースキルを持たない高ステータスストライカーに捨て身を使ってATKを跳ね上げ、一気に勝負を決める速攻型のデッキである。
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進撃のストライクライガー
ATK:6(+9) DEF:5(+2)
バトル制限:サポート2枚以上
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「ふふふ、これで一気にウル先輩のライフも半分以下にゃ!」
ここで大ダメージを与えて、次のターンに押し込む。ウルペクラは最初のターンにサポートを出さないというプレイングをしたので、次のターンでアルシャのストライカーが太刀打ちできないようなストライカーが出てくる可能性は低い上、アルシャの手札には二枚目の捨て身もある。
マジックカードは一ターンに一枚しか使えないのでこのターンで勝負を決めることはできないが、次で確実に決められると確信していた。
(おっと、でも念のためにカウンターカードは伏せておくにゃ……)
ウルペクラの場にあるカウンターカードを警戒して、カウンターカードをセットしたアルシャは、意気揚々と宣言する。
「バトルにゃ! ウル先輩のライフを一気に削ってやるにゃ!!」
「カウンターカード、倍返しを発動するっす」
「うにゃ!?」
アルシャの様子に苦笑しつつ、ウルペクラがバトル宣言に合わせてセットしていたカウンターカードを発動させる。
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倍返し
ストライカーのバトルによって発生するダメージを無効化し、無効化した数値の倍のダメージを相手ライフポイントに与える。
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「……あっ、私もカウンターカードを」
「アタシのメインストライカーゾーンに最弱の支配者が居るので、バトル宣言後にアルシャがカード効果を使用することはできねぇっす」
「ふにゃぁ!? え? じゃ、じゃあ……」
「倍返しのによって、二十八ダメージでアルシャのライフポイントはゼロ……お疲れっす」
「うにゃぁぁぁぁぁ!?」
意気揚々と攻め込んだアルシャだったが、結果は返す刃で一撃必殺……まさに瞬殺だった。
「最弱の支配者を見たら、倍返しは絶対に警戒しなきゃ駄目っすよ」
「にゃぁ……にゃぅぅ……ち、ちなみに、ウル先輩……サポート出さなかったのはなんでにゃ?」
「この盤面を一番簡単に崩せるストライカーエクスチェンジ対策っすね」
最初のターンにウルペクラがサポートを出さなかったのは、相手のメインストライカーとサポートを強制的に交換させるマジックカードを警戒してのことだった。
「ウル先輩強いにゃ……こ、これが、開発者の実力……」
「いや、アルシャの思考がシンプル過ぎるのが問題なきもするっすけど……捨て身デッキなら、反射対策はしっかり積んでおいたほうがいいっすよ」
「……なに入れればいいにゃ? ストライカーエクスチェンジにゃ?」
「いや、それよりはカウンターカードの蛮勇の盾あたりっすね」
「でも、最弱の支配者が居たら使えないにゃ……」
「蛮勇の盾はバトル宣言前に発動条件を満たせるっすから、それで……」
バトルが終わったことで、感想戦というか……ウルペクラがアルシャにアドバイスを行い、アルシャは真剣に話を聞きながらメモを取っていた。
その様子を微笑ましそうに見つつ、シャウラは「やっぱりストライクカード大会は止めておいてよかったでありやす」と、アルシャの実力を見てそう考えていた。
「……アルシャさん、次はあっしとやってみますか?」
「シャウラ先輩とにゃ? やるにゃ!」
「シャウラのデッキは面倒っすよ」
「そうなのにゃ? シャウラ先輩はなんのデッキを使うのにゃ?」
「おっと、それは秘密でありやすよ」
「バトル宣言しない代わりにステータスを上昇させるゴールドエンペラーを主軸にしたガチガチの防御デッキっす」
「ちょっと、ウルペクラさん!? ネタバレ厳禁でありやすよ! ……いや、まぁ、あっしの方はアルシャさんのデッキを知ってるので、その方が公平と言えば公平でありやすが……」
ウルペクラのネタバレに文句を言ったシャウラだったが、よくよく考えれば自分はアルシャのデッキが捨て身デッキと知っているので、公平を期すなら別にいいかと考えた。
「この拡大する病魔のカードを使えば、コンセプトをボロボロにできるっすから、使うといいっすよ」
「ありがとにゃ!」
「ちょっとぉ!? メタカードを渡すのは止めて欲しいでありやす!」
しかし、そのあとに自身のデッキの天敵となるカードをアルシャに渡していたのには全力で文句を言った。
そんな感じで、三人はしばしの間ワイワイとストライクカードで仲良く遊んでいった。
~ちょっと小ネタ~
【ストライクカード第一回世界大会チャンピオンに対する参加者の一部のコメント】
「いい勝負だったはずなのに、なんだか目に見えない巨大な壁を感じた」
「なんか、絶妙なタイミングで挽回カード引かれてた……これが、ドロー力の差……」
「フリースペースでトレードしたけど、なんかただのノーマルや低レアカードと、SRやURカードを気前よく交換してくれた」
「ダブりカードの束と、激レアカードを交換してくれてさすがに申し訳なくて断ろうとしたんだけど『いや、五十枚あるので……』って……五枚の聞き間違えだよな? 五枚でも凄いけど……」
「大会限定パック開封してるとこ見たけど、封入ミスで最高位レアばっかり入ってた。ごく稀にああいう封入不具合みたいなのがあるみたいだけど、それを引くのはやっぱチャンピオンは持ってるなぁって感じだった……でも不思議と本人は全然嬉しそうじゃなかった気がする」
「大騒ぎになるらしく私は参加できません。しかし、クロだけ出れててズルいので、私もなにかしら関わりたいのです。ということで、快人さんにデッキをプレゼントします。クロとの戦いで使ってください。決勝数分前で中身を確認する時間がない? 問題ありません。快人さんと相性のいいカードを選びましたので、見なくても使いこなせます。では、応援しています」
「シロォォォォ! なんで、決勝戦直前にカイトくんにあの特殊勝利デッキ渡してるの!? カイトくんに、アレ使わせちゃ駄目でしょうがぁぁぁ!! え? 前にボクに負けた腹いせ? ……どうやらボクが倒すべき敵は、こっちに居たみたいだね……ぶっ飛ばしてやる!」




