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むつら☆ぼし  作者: 灯台


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85/99

サソリの弱点



 シャウラの肩に手を置いたまま、ウルペクラはどこか楽し気に語り始める。


「まぁ、とはいっても簡単なことじゃないのは分かるっす。前回のアタシの時に通常の三倍の予算を出して、次も三倍の予算とくれば、金庫に余裕があろうが財務担当のシャウラが簡単に首を縦に振るわけにはいかないてのは理解出来るっす」

「その通りでありやす。あっしは死王陣営の財布を預かっていると言っていい立場でありやすし、無駄な出費の増加をそう易々と認めるわけにはいかないってもんでさぁ」

「もちろん理解出来るっす。だからこうすればいいんすよ。金庫から出すお金は通常通りの予算で、残りの三分の二をシャウラが貯め込んでいる私財から出せばいいわけっす」

「……あ~なるほど、完璧な案でありやすね。あっしが大損するってことを除けば!! 嫌な予感はしてたでありやすけど、やっぱりあっしのお金を狙っていやがりますねクソ狐!!」


 三倍の予算を確保するための残りのお金を、シャウラの懐から出させようとするウルペクラにシャウラは猛然と反論する。

 長い付き合いなので察してはいた……おそらく、こちらの財布に手を伸ばしてくるだろうということは……もちろん断固としてそれを認めるわけにはいかない。たとえこれまでも、幾度となく丸め込まれてお金を巻き上げられていたとしても……。


「今回という今回は絶対に許さないでありやすからね! あっしの大事な大事なお金をぶん盗ろうなんて……」

「ところで話は変わるんすけど、アタシちょっと前に新しい知り合いができたんすよね」

「……は? い、いきなりなんでありやすか?」

「ほら、前にカイト様が連れてきたエヴォルカイザーさんと同じ異世界から来たカオスメサイアさんって方っす。それで、その時にちょっとカオスメサイアさんの頼みを聞くことになったっす」


 唐突に話を変えるウルペクラに付いて行けず、シャウラはキョトンとしたような表情を浮かべていたのだが……その表情は、次のウルペクラの言葉で一変する。


「それで、先日改めてお礼をって言われて、カオスメサイアさんから貰ったんすよね……『異世界の通貨』を……」

「ッ!?!? い、異世界の通貨……」

「しかも~勇者役が召喚される世界とは、別の異世界の通過っす」

「……ごくっ……」


 シャウラはお金が好きだ。お金を稼いで欲しいものがあるとか、贅沢をしたいとか、名声を得たいとかではなく……単純にお金そのものが好きなタイプである。

 暇な時は積み上げたお金を見てニヤニヤしているぐらいにはお金好きである彼女は、同時に『通貨コレクター』でもあった。


 そう、シャウラは様々なお金をコレクションしている。過去に発行された記念硬貨はほぼすべて所有しているし、流通している硬貨も製造年代ごとに分けてコレクションしているぐらいには筋金入りのコレクターだ。

 そしてそのコレクションには、異世界の通貨も含まれており……実のところ彼女は、人界などでも『金買い』という呼び名で少し名が知られていたりする存在だ。


 というのも、召喚された勇者役がトリニィアに移住を決めた場合一部の品……世界の神たるシャローヴァナルと異世界の神たるマキナの間に結ばれた契約において禁止されている品、主に機械製品類などは回収されてシャローヴァナルによってマキナに返却されるし、トリニィアにおいて機械製品などを作れないように思考や記憶の一部に制限がかかったりという処置がある。


 だが、もちろん勇者役の持ち物すべてが回収されるというわけではなく、契約において禁止指定されていないものはそのまま所有することが可能であり、異世界の通貨もそれに該当する。

 とはいえ異世界の通貨は当然ながらトリニィアでは使用できず、物珍しさで多少高値で売れるかもしれないという程度だ。

 そして、そんな移住を決めた過去の勇者役の前にシャウラは現れ、不要な異世界の通貨を数百倍の価格で、珍しいものや綺麗なものは場合によっては数千倍の額で買い取ってくれるので、移住して新生活をスタートさせたばかりの移住者にとってはありがたい存在である。


 そんなコレクターであるシャウラが、勇者役たちとは違う異世界の通貨と聞いて反応しないはずがない。生唾を飲んで見つめてくるシャウラの前で、ウルペクラはおもむろにカードサイズのなにかを取りだしてチラリと見せて、すぐにそれを隠す。


「あっ、あぁ! も、もっとちゃんと見せてくだせぇ! 見たことない形状! 見たことない模様! い、異世界の通貨……ほ、欲しいでありやす! ウ、ウルペクラさぁん……」

「あはは、アタシとシャウラの仲じゃないっすか。もちろん、この通貨はシャウラに譲ろうって思ってるんすよ? いや~でも、ほら、見返りってのはやっぱ必要じゃないっすか……」


 明らかに大興奮という感じで目を血走らせながら詰め寄ってくるシャウラに対し、ウルペクラはどこか穏やかに見える笑みを浮かべたまま……ポンッとシャウラの肩を叩いた。


「だから、これが欲しいなら……分かるっすよね?」

「ふぐぅ……わ、分かりやした……あっしの名にかけて、前回のウルペクラさんの時と同じだけの予算を用意するでありやす」

「さすが、シャウラは話が分かるっす。じゃあ、約束通りコレはプレゼントするっす」


 シャウラから望み通りの解答を得れたウルペクラは満足した様子で、再び取り出したカード状の通貨をシャウラに手渡す。

 するとシャウラはキラキラと目を輝かせて受け取った通貨を見ながら早口で語り始めた。


「ふぉぉぉぉ! あ、新しい通貨! 性質としては、トリニィアの硬貨というよりは異世界の紙幣に近いでありやすがサイズが違うでありやす! 厚みも重量もそれなり……大量に携帯するのには不向きと考えると、これはかなり大きめの額の通貨でありやすかね? この複雑な模様は、見る角度で色が変わる……偽造防止でありやすかね! 側面に模様……いやこれは彫り込んで……」

「あ~まぁ、楽しそうでなによりっす。邪魔しても悪いんで、アタシは失礼するっす。予算の件よろし……うん?」


 新しい通貨を手に入れたのが嬉しくてたまらないという表情をシャウラを見て苦笑した後で、ウルペクラは座っていたシャウラの尻尾から立ち上がってその場を去ろうとして……自分の体に巻き付いてきたシャウラの尻尾を見て動きを止める。


「……シャウラ?」

「……ウルペクラさん……他も……持ってるでありやすよね?」

「……なんのことっすか?」

「あっしと、ウルペクラさんの仲じゃないでありやすか……絶対これ一枚じゃないでありやすよね? 今後、あっしに他の交渉を持ち掛ける時に提示するために、他にも何種類か……隠し持ってるでありやすよね?」

「……」


 シャウラは確信していた。ウルペクラがカオスメサイアから貰った異世界の通貨は、絶対にこの一枚だけではないと……今後も似たような交渉をする際に、シャウラに言うことを聞かせるための手札として隠して持っていると……。

 尻尾を巻き付けているウルペクラに近付いて、後ろから抱き着くように密着しながらシャウラは続ける。


「まさか、いつもウルペクラさんにこんなにも尽くしてるあっしに対して、あると分かってる異世界の通貨を見せないなんて……そんな血も涙も無いような真似はしないでありやすよね? あっしがウルペクラさんのお願いを聞かなかったことなんていままでないのに! ウルペクラさんは、あっしのお願いを聞いてくれないなんてことは無いでありやすよね!!」

「……あ~もぅ、分かったっすよ! 見せるっすよ! だから、いい加減離し――涎垂らすんじゃねぇっすよ!」

「ウルペクラさ~ん……見せるだけじゃなくて……売ってくれるでありやすよね? あっしは、いつだって大好きなウルペクラさんの役に立とうと頑張ってるわけでありやすし……ね? ね?」

「……涎垂らしたまま頬ずりしたら、ぶん殴るっすからね」


 シャウラ相手に特効となると思って用意した異世界の通貨ではあったが……逆に特効過ぎてしまったようであり、ウルペクラは流石に新しい異世界の通貨は効果的過ぎたかと、引っ付いてくるシャウラを見て若干己の行動を後悔し……他にコッソリ隠し持っているさらに別の世界の通貨に関しては、使いどころをもう少ししっかり考えようと心に誓った。



~ちょっと解説~

【シャウラの通貨コレクション】

本当に大量に持っており、額縁に入れて飾っている。基本的に貯金額を見て安らぎを覚えるタイプというか、金を使ってなにをするのではなく、金を集めること自体が好き。

シャウラの部屋には壁に一面ビッシリと、専用の額縁に入れた通貨が飾られている。


金そのものが好きであり、種類や額に細かな拘りは無いため、1R硬貨が大量にあっても普通に嬉しい。


偶にいろんな種類の硬貨をごちゃ混ぜにした硬貨の山を作って、そこに埋もれて恍惚とした表情を浮かべているぐらいにはお金が大好き。

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― 新着の感想 ―
札束風呂にマジで入ってんのか
シャウラたん、金チョロwww
茜さんが彼女をみたらこめかみをひくひくして突っ込みを入れそう
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