混沌レセプション
一匹のワイバーンが哀れな結末を辿ることになったが、それ以外にトラブルなどは無くウルペクラとアルシャは空の旅を楽しみ、問題なく死の大地の居城へと帰還した。
釣りをした場所と違って居城付近はスペースも広いため、カオスメサイアはふたりが降りた後で、サイズのみを十メートルほどに調整したロボット形態となって、感想や意見を聞いていた。
「移動は凄くよかったと思うっす。景色も見やすかったっすし、速度もアタシたちではなく人間族の基準で適切だったと思うっすね」
「攻撃は凄かったにゃ。でも、ボタンひとつ押すだけだと操縦してる感ってのは無かったにゃ……あと私は無実にゃ」
『ふむ、なるほど……移動用形態に関しては陸上移動用形態などで得た情報を生かせているようだな。操作感については今後の課題か……ある程度、操作した感覚が得られるようなコクピットの作成が重要になってくるか……参考になった。感謝する』
頼まれていた感想などを伝え、カオスメサイアもそれに感謝の言葉を返す。するとそのタイミングで、どこか慌てたような大きな足音と、大音量の声が聞こえてきた。
『ウルさん!! アルさん!!』
「うぉっ、うるさっ……」
「うにゃぁ!? み、耳がキーンとしたにゃ……そんなに慌ててどうしたにゃ、リゲル先輩」
非情に慌てた様子でドスンドスンと足音を響かせながら駆けてきたのは、死王配下のリゲルであり明らかに慌てている……というよりは、非常に興奮している様子だった。
普段ですら喧しいのに、興奮によるものか普段よりさらに大音量の声であり、ウルペクラとアルシャは耳を抑えつつリゲルになにをしに来たのか尋ねる。
『そ、そそ、そちらにいるとてつもない美形のイケロボは誰でありますか! しょ、小生にも紹介して欲しいであります!!』
「とりあえず、音量下げるっす」
『おっと、これは失礼……突然とてつもない容姿端麗かつ眉目秀麗なロボットが現れて、興奮してしまったであります』
「……それ、ロボットに対して使う表現で合ってるにゃ?」
「どこに眉があるんすか……」
つまるところ、カオスメサイアを見ていても経ってもいられずやっていたという事らしく、ウルペクラもアルシャもなんとも言えない呆れたような表情を浮かべていた。
『推定能力値23兆……データと照合……死王配下、リゲルと判断』
『はわわわわ、しょ、小生のことをご存じでありますか!?』
『ああ、カイザー……エヴォルカイザーよりデータは受け取っている。我はカオスメサイア、カイザーと同じ世界の出身で、共に宮間快人様に仕える自立起動兵器だ。よろしく頼む』
『はっ、リゲルであります! エヴォルカイザーさんの知り合いだったとは……なるほど、納得のカッコよさであります! エヴォルカイザーさんは、煌めくような白銀のボディに重厚さを感じつつも機動力も確保していることが感じられる洗練されたフォルムで、まさしく正統派な容姿という感じでありましたが、カオスメサイアさんはより攻撃的な姿でありますね! 鋭角的な部分も多く、一見すると禍々しさのような底知れなさも感じるでありますが、同時にしなやかで妖艶な美も感じると言いますか、鋭さの中にシャープさも感じる素晴らしい外見であります! やはり、本場のスーパーロボットというのは最高にカッコいいでありますね!』
「……滅茶苦茶早口にゃ」
「エヴォルカイザーさんと会った時も似たような感じだったっす」
傍目に見ても分かうるほどに大興奮というか、憧れのスターに会えたかのような様子で語るリゲルを見て、ウルペクラとアルシャは再び呆れたような表情を浮かべた。
リゲルは自認がロボットであると同時に、本場……というか、異世界のロボットを見るのも大好きであり、快人と会った際などは彼が持つ異世界の映画やゲームが見れる道具で、よく異世界のロボットを見せてもらっている。
それこそ一種のロボットオタクと言えるぐらいの熱の入れようであり、居城にあるリゲルの部屋には、模型作りが得意な死王配下に頼んで作ってもらったロボットのフィギュアが大量に置いてあるほどである。
『賞賛に感謝を……リゲルも、我々と比較的近い存在のように感じられる。シンプルな造形ながら、様々な機能美を追求したと思えるいいフォルムだ』
『おぉぉ、本場のロボットにそう言っていただけると、とても嬉しいであります! 小生もトリニィア産のロボットとして今後も精進していきたいでありますが、やはりこうしてエヴォルカイザーさんやカオスメサイアさんを目にすると、そのカッコよさに目を奪われるであります! あっ、よ、よければ、記念に記録魔法具で写真を撮らせていただきたいであります!』
『ああ、構わない。共に映るのであれば、リゲルのサイズになろうか?』
『サイズも自在でありますか!? 小生も変形はできますが、形態ごとに制限があって……』
ともかく嬉しそうに話すリゲルに対し、カオスメサイアはどこか大人の余裕を感じられる対応で応える。その様子をリゲルの声が五月蠅いので少し離れて見つつ、ウルペクラとアルシャは言葉を交わす。
「……また音量上ってるにゃ、熱量が凄いにゃ」
「カオスメサイアさんがあまり気にしてない様子でよかったっす。話してて思ったっすけど、経歴の割にはだいぶ穏やかで大人な方っすよね……それはそうと、リゲルの保護者は、そこでなにしてるんすか?」
話しながらウルペクラが別の方向に視線を向けると、離れた場所で小さな椅子に座ってなんとも言えない表情を浮かべているムジカの姿があった。
「……誰が保護者だ。いや、あの状態のリゲルには近付きたくない。延々と訳の分からない話をされるし、なにより……シンプルに五月蠅い」
ウルペクラの問いかけに対して、これまでの散々リゲルにロボット関連の話を聞かされたのか……ムジカはうんざりしたような表情で呟いた。
~ちょっと解説~
【ロボットオタクのリゲル】
とにかくロボットが大好きであり、快人にロボット関連の映像を見せてもらったりロボットゲームをやらせてもらえるのを非常に楽しみにしている。
もちろん、アイシスの夫でもある快人に失礼があってはいけないので強請ったりするわけではないのだが、割とソワソワしていたり期待しているのが丸分かりの様子ではある。
快人が優しいのと、ロボット関連の品を見せると見ていてわかるほどに大はしゃぎして微笑ましいこともあって、結構よく見せてもらっているのでロボット関連の知識は死王配下で一番と言っても過言ではない。




