混沌パニッシュメント
偶然に出会ったカオスメサイアに誘われ、ウルペクラとアルシャが親睦を深める意味合いで一緒に釣りをし始めて数時間が経過した。
時間的にそろそろ終わりにしようかということもあり、現在は釣果を確認している状態だった。
「いや~よく釣れたっすね」
「ここはかなり良い釣り場だったようだな。魚の警戒心が低いのか、想定以上の成果だ」
かなりいいポイントで釣ることができたのか、入れ食いと言うほどではないにせよかなり順調に釣ることができ、カオスメサイアは十六匹、ウルペクラは三十匹ほどのエレガントフィッシュを釣り上げていた。
これだけの数があれば、イリスに渡せば夕食等に使えるだろうと、ウルペクラがそんなことを考えていると隣から絞り出すような声が聞こえてきた。
「……しいにゃ」
「うん? なんすか?」
「……こんなの、おかしいにゃ……」
「なにがおかしいんすか?」
目の前の現実が信じられないと言うような表情を浮かべて呟くのはアルシャであり……聞き返したウルペクラの言葉に反応して、スッと川を指さしながら告げる。
「……同じ川で釣ったにゃ」
「そうっすね」
続けてアルシャはスッと手を動かし、今度は釣竿を指さす。
「……同じ釣竿を使って、同じ餌を使ったにゃ」
「そうっすね」
「……場所も、ほぼ並びで釣ったにゃ」
「……で?」
どこか悲痛さを感じる声で告げつつ、アルシャは指を己の前にあるバケツに動かす。そこにはアルシャの数時間の釣りの結果……釣果二匹という結果があった。
そう、二匹……たったの二匹である。なんなら、一匹目を釣るのに一時間ちょっとかかっているレベルであり、カオスメサイアとウルペクラが順調に釣るのをずっと見せつけられていた。
「なのにこんなに差が付くなんておかしいにゃぁぁぁ!?」
「まぁ、この手のは時の運ってのもあるっすよ。釣果ゼロってわけじゃないんすから、別にいいじゃないっすか……楽しく話ができて、ついでに釣りもできた。それだけで十分っすよ」
「う、ウル先輩……」
「いやホント、期待通りのポンコツっぷりで、見てて楽しかったっす」
「クソ狐ぇぇぇ!!」
カオスメサイアもウルペクラも、会話を楽しみつつのんびり釣りをして大量の釣果……なんなら途中一旦釣竿を置いて休憩しつつ雑談までしていた。
対してアルシャは、数時間必死に釣りをして二匹……あまりの差に叫びたくもなるというものである。そしてもちろん、ウルペクラに煽られていた。
「……うぅ……はっ!? ま、まさか、ウル先輩……私を貶すために、性悪発揮して悪いことしたんじゃないかにゃ!?」
「してねぇっすよ。というか、真面目な話をすると……アルシャは、落ち着きが無さすぎるんすよ」
「うにゃっ!?」
「すぐに体や釣竿を動かして、それが誘いとかになってるならともかく、ただ変な動きしてるだけっすし……」
「ふにゃっ!?」
「なんの確認か知らねぇっすけど、たびたび引き上げて投げ入れ直してたっすし……そんなワチャワチャしてたら、釣れるわけがないっす」
「ぐみゃぁぁぁ……にゃぅ……ぐぅの音もでないにゃ……人のせいにしようとしてごめんなさいにゃ……」
淡々と告げられた正論によってアルシャはボコボコに打ちのめされた。言われてみれば確かにその通り、ジッとしているのが苦手なのか、ちょこちょこ動いたり、竿を左右に動かしてみたり、ヒットもしていないのに引き上げて投げ入れ直すというのを意味なく繰り返したりと、そんなことをしていた。
それが原因だと言われてしまうと、反論もできない。
「まぁ、得手不得手ってあるっすよ。釣りは苦手だって分かったこともは、むしろ成果でもあるっす。それに、会話は盛り上がってたっすし、カオスメサイアさんと親睦を深めるのは大成功じゃないっすか」
「うむ、確かに我も短い期間でウルペクラとアルシャのことを多く知ることができて、有意義な時間だったと感じる。それに比べれば釣果の差などは、些細なものだ」
「ウル先輩……カオスメサイアさん……」
釣果の差など気にする必要が無いと優しく告げるふたりの言葉に、アルシャはジーンと感動したような表情を浮かべる。
そんなアルシャの肩を、ウルペクラが優しくポンッと叩きつつ口を開く。
「……また、私に勝てない要素が増えたっすね」
「クソ狐、最後まで綺麗な状態を維持しろにゃ。というか、私の感動を返せにゃ……」
優しく慰めはするが、それはそれとして煽る隙があるのならば煽るのがウルペクラである。とはいえ、それはアルシャもよく知るところなので、なんとも言えない表情を浮かべた後で大きなため息を吐いた。
「さて、あとは各々成果を持ち帰るわけだが……その前に、少し手を加えよう……パニッシュメントレイ」
「うにゃ!? な、なんか、凄い光が出たにゃ……さ、魚はなんともないにゃ? なにをしたにゃ?」
唐突にカオスメサイアが釣り上げた魚に掌を向け、そこから眩いレーザーを放って三人の釣果であるエレガントフィッシュを光が飲み込んだ。
しかしほどなくして光が晴れると、特にエレガントフィッシュが傷ついたりしているわけでもなく、バケツの中で元気に泳いでいた。
「ああ、体内の寄生虫のみを消滅させた。川魚は寄生虫が多いと聞くからな」
「あっ、な、なるほどにゃ……」
任意の対象のみを抹消するレーザービーム……凄い技であり、それつもないと言えるものなのだが、反応に困るのはどうしたものか……とりあえずアルシャは「なんか能力の無駄遣いって感じがするにゃ」という言葉を飲み込んだ。
~ちょっと小ネタ~
【new challenger】
魔界の大気を裂く翼!
堂々たる体躯!
勇ましき咆哮!
美味なる肉!
その姿こそは、試し打ちの権化!
約束されたサンドバック!
次回、ワイバーン外伝でも死す!




