収集品と漫才コンビ
ラサルから頼まれた素材収集にクレアとベラを人手として連行したウルペクラは、そのまま転移魔法を用いて魔界の西部にある薄暗い森にやってきていた。
「ウルちゃん、ウルちゃん、最初はなにを集めるんですか?」
「ここでは隠者の草を五十本っすね」
「隠者の草……うへぇ、最初から面倒なやつだよ、しかも五十本……」
クレアの質問にウルペクラが答えると、その言葉を聞いてベラが嫌そうな表情を浮かべた。隠者の草は特殊な生え方をする植物であり、植物が密集した場所で陰に隠れるように生えるという性質を持つが故、隠者の草と呼ばれている。
そのため探すには多くの植物が生えている場所で、他の植物をかき分けるようにして探さなければならない。
「手分けして採取するっす。三人合計で五十本集まればいいっすけど、いちおうはノルマを決めておくっす。アタシとベラが十本、クレアが三十本で……」
「了解だよ~」
「……聞き間違えかな? 三人で分けた筈なのに、私のノルマが他の三倍ある……おかしいな? 別に植物収集が得意とかアピールした覚えはないんだけど」
「まぁ、クレアには無理か」
「はぁ? できらぁ!」
自分だけノルマが三十本という言葉に不満を口にしたクレアだったが、直後のベラの挑発に乗せられて姿勢を低くして隠者の草を探し始めた。
その様子を見て苦笑しつつ、ウルペクラとベラも手分けをして捜索を行っていく。
「……クレア、何本集まった?」
「まだ六本ですね。ベラは?」
「私も六本……おかしいな? クレアは私より地面に近い、低い姿勢で探せるから有利なはずなのに……」
「誰が地面と超密着可能な、胸元直線系じゃ!」
「言ってない。そこまでは、言ってない」
いつものような漫才じみたやり取りをしつつも真剣に隠者の草を探すクレアとベラ、そのふたりにたいして不意にウルペクラが声をかけてきた。
「ふたりとも~そろそろ次行くっすよ」
「え? いや、ウルちゃん、私もベラもまだ六本しか集めてないんだけど……」
「ええ、アタシが四十本ほど集めたので、合計は五十本超えてるっすから隠者の草はこれで問題なしっす」
「四十本!? この短時間で、四十本! 私とクレアが必死に探して六本ずつなのに……」
なんと既にウルペクラが四十本の隠者の草を見つけており、クレアとベラが見つけたものと合わせれば既に目標である五十本に到達している。
あまりにも短時間で四十本という本数を集めたウルペクラに驚愕するふたりだが、ウルペクラはそんなふたりの手元の隠者の草をチラリと見る。
「ふたりは、六本ずつっすか……ふっ……まぁ、ノルマはあくまでノルマ、合計で五十超えればいいっすからね」
「は、はは、鼻で笑った!? いま、この性悪狐、見下した顔で鼻で笑いましたよ!」
「強者が弱者を見下す目……『しょせん漫才コンビか』とか、そんなこと考えてる目だった!」
クレアとベラも非常にノリのいい存在であり、ウルペクラが鼻で笑うような様子を見せると、打てば響くように大げさなリアクションと共に抗議してくる。
期待通りのそのリアクションに、ウルペクラは楽し気な笑顔を浮かべながら告げる。
「いやいや、そんなこと考えるわけがないじゃないっすか、なんだかんだでアタシひとりで探すより時短できてるわけっすし……しょせん漫才コンビか……こういうのは時の運もあるっすから、気にする必要はないっすよ」
「言ったぁぁぁ! いま確実に、言ったぁぁ!!」
「会話の中にサラッと差し込むように言ってた!? 一瞬『あれ? 聞き間違えかな?』って思わせる高等煽りテクニックですよ!!」
猛然と文句を言いつつもベラもクレアも丁重な扱いで隠者の草をウルペクラに手渡し、ウルペクラもそれを再度数えて確認した後で収納して頷いて、転移魔法を起動する。
あくまで互いに冗談と分かった上でじゃれているような形であり、クレアもベラも特に気にした様子もなくウルペクラが転移魔法を発動させるのを見ると抗議を止めて、普通の顔に戻った。
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次に到着した場所では、特殊な花の花粉を集めるのだが……これも少々厄介な性質を持っており、シールドフラワーと呼ばれるその花は、とてつもなく硬い花弁を閉じており、その花弁を開かないと花粉を採取できないのだが……開く際に花弁を傷つけてしまうと花粉を出さなくなるので、固く閉ざされた花弁を開けてかつ花弁を傷つけない絶妙の力加減で開かなければならない。
開くだけなら子爵級であるクレアとベラには余裕なのだが、花弁を傷つけない強すぎず弱すぎずな力加減にはかなり苦戦していた。
「ぐ、ぐぬぬ……こ、この、たかだが花の分際で調子に乗りやがってぇ」
「ベラ司令官、ベラ司令官! 我々も花なので、花を罵倒するとカウンターダメージが……」
「ちくしょうっ、ちょっと可憐で美しく、森でも草原でも、それ以外の場所でも華やかさと癒しを感じさせる花の癖に、手古摺らせてくれる」
「ひゅぅ、さすがベラさん、トンデモねぇスピードの掌返しですよ」
「……まぁね、掌を返させたら、私の右に出るものはいないよ」
「誇らしげにするようなもんっすか?」
花弁を開くのに苦戦しているベラとクレアの横で、絶妙な力加減でシールドフラワーの花弁を開いて花粉を回収していくウルペクラ……この調子ならば、ふたりがひとつの花から花粉を回収するころには、目的の量が集まっていそうな感じではあった。
「あ~ふたりはまだ開けない感じっすか? まぁ、得手不得手ってあるっすからね」
「ば、馬鹿にしやがってぇ……ちょっと、自分が超絶天才で、滅茶苦茶手先が器用で、激烈に強くて可愛いからって……」
「クレア、列挙している項目的に我々に勝ち目が無さそうなんだけど……」
「気持ちで負けちゃ駄目ですよ、ベラ! ……ウルちゃん! コツを教えてください! お願いしますっ!!」
「……負けてる。完全に気持ちが敗北を受け入れてる」
深々と頭を下げて教えを乞うクレアを見て、ウルペクラは苦笑を浮かべた後で力加減に関するコツを教えていった。
~ちょっと解説~
【漫才コンビとウルペクラ】
そもそも、漫才コンビが割と早い段階からアイシスの居城に入り浸っていることもあって、付き合いは長いし仲も非常にいい。
晶花宴の時も関係者席が欲しくて泣き付いてきたふたりに席を用意したのもウルペクラなので、なんだかんだ日頃から仲良くしてるし、気安い仲という感じである。




