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むつら☆ぼし  作者: 灯台


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頼まれ事とよく見るふたり



 ある日の死王アイシスの居城にて、廊下を歩いていたウルペクラにラサルが声をかけてきた。


「ウルペクラ、ちょっといいカ?」

「うん? なんすか?」

「もし手が空いているようなラ、いくつか素材を集めて来てくれないカ? できるだけ早く取り掛かりたい物なんだガ、契約関連の仕事が立て込んでいてナ」


 ラサルは死王陣営の取引関連を取りまとめており、死の大地における採掘権やクリスタルシティ関連の契約と幅広い契約を仕切っている。

 普段はそこまで忙しいというほどではないのだが、契約更新の時期は少々忙しく、研究に必要な素材集めの時間が取れないようだった。


 ラサルが研究に使う素材には収集が難しかったり、取り扱いに注意が必要なものもあり、誰かに頼むにしても信頼できる相手でないと難しい。また、仮に信頼できたとしてもシリウスやリゲルと言った素材を雑に取り扱いそうな相手にも頼めない。


「いいっすよ。アタシは特にいま急ぎの仕事は抱えてないっすしね」

「悪いナ。量が多いかラ、可能な範囲で問題なイ」


 そういった観点で言えば知識も多く手先も器用、能力的にも知識的にも申し分ないウルペクラは安心して頼める相手だった。

 悪戯好きのウルペクラではあるが、ウルペクラの悪戯はしっかり弁えており、この手のラサルが本当に必要としている物に対して悪戯をしたりすることは無いため、その辺りも安心できる。

 ラサルが差し出した素材リストをザッと確認し、ウルペクラは思案するような表情を浮かべた。


「……あ~確かに、あっちこち行かないと揃わないっすね。今日の夕食までにって考えれば、集めれるのは六~七割がいいとこっすかね? 購入品と収集品だと、どっち優先したほうがいいっすか?」

「可能なら収集系の方だガ、ある程度で問題なイ。半分程度集めて貰えれバ、あとは私が集めル」

「了解っす。まぁ、半分は問題ないと思うっすよ」

「助かル」


 特に急ぎの仕事などを抱えていなかったウルペクラは快くラサルの頼みを承諾し、仕事で出かけるラサルを見送ってから受け取ったメモをもう一度確認する。


「ん~いくつか現地で探さないといけない素材もあるっすね。アタシひとりでも問題ないと言えば無いっすけど、多少人手はあったほうがいいっすね」


 効率よく収集するならひとりかふたり程度手伝いが居た方がよさそうだと考え、ウルペクラは静かに居城内に誰が居るか探知を行う。


「……おっ、丁度いいのが居るっすね」


 そして、手伝いとして連れて行けそうな相手にあたりを付けて、その場に向かって移動を始めた。



****



 居城の一角……広いバルコニーには現在、どこから持ってきたのか大きなプールサイドチェアがふたつ並べて置いてあり、そこに優雅に寝転がっているサングラスをかけたふたりが居た。


「う~ん。実にいいシチュエーション……このまったり感がたまらないね」


 薄紫の髪を軽く手で避けつつ、サングラスをクイッと位置調整するように指で押し上げるのは、界王配下のひとりであるクレオメの精霊、クレアでありサングラス以外は服装こそ普段通りではあったが、まるでリゾート地にバカンスに来ているかのようなくつろぎ具合だった。


「同感だよ。ナッツやドライフルーツもいいよね~。なかなか贅沢な一時って感じだよ」


 クレアと同じようにくつろぎながら、サイドテーブルに置いた皿の上にあるドライフルーツを食べて満足げな笑みを浮かべるのは、同じく界王配下であるガーベラの精霊のベラだった。

 そのままふたりは、サイドテーブルに置いていたワイングラスを手に取り、それを軽く掲げる。


「やっぱり白ワインが正義なわけですよ。相性もバッチリだね」

「うんうん。優雅なシチュエーション、美味しいつまみ、舌触りのいい白ワイン……最高だよ」


 そのままふたりは軽く顔を見合わせ、ワイングラスを軽く鳴らすようにして乾杯してからほぼ同時に一口飲んで笑みを浮かべる。


「「これぞ、完全調和……パーフェクトハ――ふぎゃっ!?」」


 そして、唐突に表れたウルペクラにふたりまとめて吹き飛ばされ、地面を数回バウンドして転がり……少しした後でのたうち回る。


「……て、敵襲!? 敵襲!!」

「ク、クレア伍長、なにがあった! 状況を説明しろ!」

「激強狐っ子の強襲だ! 倒れた時に胸を打った! ダメージは大きい、衛生兵、衛生兵を頼む!!」

「くそっ! 胸部装甲が薄いばかりに!!」

「誰が、胸部装甲が永遠に未実装で空気抵抗を極限に減らした軽量高機動型ボディじゃ!!」

「言ってない。そこまでは、言ってない」


 のたうち回りながら小芝居を挟む辺り、このふたりが死王配下の面々から漫才コンビと呼称されている所以が感じられた。

 少しして落ち着いたのか立ち上がったふたりは、己たちを吹き飛ばしたウルペクラに猛然と抗議し始めた。


「というか、いきなになにするんですか、ウルちゃん! 私たちの優雅でリッチな光合成を邪魔するなんて、酷いですよ!!」

「暴力反対! 公爵級のスーパーパワーで、子爵級をイジメるなんてあってはいけないことだよ!」

「いや、むしろなにしてるか聞きたいのはこっちのほうっす。なに自分の家かって程にくつろいでるんすか……こんな椅子まで持ち込んで」


 抗議するふたりに対し、ウルペクラは呆れたような表情で言葉を返す。そう、クレアもベラも死王配下ではなく界王配下であり、このふたりは本当に勝手に遊びに来て勝手にくつろいでるだけである。

 もちろん王たるアイシスが許しているのと、そもそもこのふたりはしょっちゅうきて我が家の如く過ごしているので、本当にいまさらな話ではあるのだが……。


「いや、我々名誉死王配下なので、実質ここも家みたいなもんです」

「最近は二日に一度は来てるし、もうほとんどここに住んでるようなものだと思う」


 事実として本当しょっちゅう来る。アルシャを始めとした比較的死王配下に所属してあまり年数が経っていない面々も、もう既にこのふたりのことは「ほぼ居城に住み着いてる漫才コンビ」と認識しているレベルである。


「まぁ、いまさらの話はいいっす。ちょっとラサルに頼まれて、いくつか素材を集めに行くんで人手として一緒に行くっすよ」

「……おかしいな? いま私とベラの意思確認が無かったよ」

「……こき使う気だ。私たちを馬車馬の如くこき使う気だ」


 ウルペクラが簡潔に用件を伝えると、クレアとベラはなんとも言えないような表情を浮かべた。そう、クレアの言う通り意思確認は特になく、人手として連行されることがほぼ確定しているような言い回しだった。


「アタシたち死王配下には、城内に転がってるクレアとベラはこき使っていいってローカルルールがあるっす」

「私たちの取り扱いに関するローカルルールが、私たちが関与しないところで定められてる!?」

「り、理不尽過ぎる。私とクレアがいったいなにをしたって言うの……二日に一度ぐらい来て、ご飯をご馳走になったりお風呂とかバルコニーとか使ったり、おやつとかワインとか食糧庫から貰ったり、たまに宿泊したり、イベント関係にご一緒してるぐらい……クレア、駄目だこれ、私たちこき使われても仕方ないことしかしてないや」

「むしろたまにこき使われる程度で許されてる懐の深さですよ……というわけで、ウルちゃん隊長! 我々、頑張って働く所存です!」


 文句を言おうとした……言おうとしたが……己たちの行動を顧みるに、たまにこき使われる程度当然レベルに入り浸っている自覚があるようで、クレアとベラは素早く切り替えてウルペクラに綺麗な敬礼をした。



~ちょっと解説~

【優雅に光合成きめてる漫才コンビ】

マジで二日に一度ぐらいは来てるし、なんなら当然のような顔して夕食の席に座ってるし、バルコニーとかでくつろいでたり、たまに死王配下にこき使われたりしている。

本当に事実上界王配下と死王配下を兼任しているようなものであり、なんならクリスタルシティの住人とかには、普通に死王配下だと認識されていたりもする。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です!連続で読みました!ウルさん手伝い等もしっかりとするけど隙あれば煽りが入るからある意味される側は油断ができないなw そしてクレアさんとベラさんが殆ど住んでると差し支え無いぐらいまでちゃ…
なんとなく、この二人がいるせいで、「むつら☆ぼし」に、 “おいでよ楽しい魔界北部”とか、 “魔界北部は今日も賑やか”。 なんていう副題を付けたくなった。
アイシスとのあの出会いからこんなキャラになるなんて誰が想像できた事か笑
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