駆けつけた者
ワイワイと話……もとい、アルフェラの足についての話題が一区切りついたタイミングで、カノープスがふと思い出したように口を開いた。
「ああ、そういえば大根で思い出したんだが……先日ブロッサムに桃をたくさんもらったんだが、量が多くてどう処理したものかと考えていたんだが、せっかくこうして集まったんだし消費に協力してくれないか?」
「大根で思い出すなよ、土下座の方で思い出せよ……まぁ、それはいいとして桃か~いいね」
「そんなに多いんすか?」
「ある程度の量はイリスにデザートなどに使ってくれと渡したんだが、それでもまだかなり残っていてな」
カノープスは界王配下のブロッサムと仲が良く、よく騎士とサムライについて話し合う機会も多い。そんなブロッサムから少し前に桃を貰ったのだが……いかんせんその量が問題だった。
ブロッサムは割と加減を知らないタイプであり、せっかくだからカノープスだけじゃなくて死王配下皆で食べて欲しいと……四十八人どころか数百人でも消費できるかどうかというような量を送ってきていた。
軽く苦笑しつつ、カノープスは巨大な箱を出現させた。高さにして二メートルはあろうかという木箱であり、その中にギッシリ桃が入っているとすれば、相当の量と予想できた。
「……できればこのぐらい消費してもらえるとありがたいな」
「多くないかにゃ? とても五人で食べれる量じゃ無いにゃ……他の先輩にも声をかけるかにゃ?」
「……心配はいらない」
あくまで「可能ならありがたい」という程度の話ではあるが、このサイズの木箱に入った桃を五人で消費するのは厳しく、アルシャが他の死王配下にも声をかけることを提案したが、その直後にどこか頼りがいのある声が聞こえてきた。
「なにも不安を感じる必要なんてない。大切な仲間……家族のため、私がいくらでも力になるよ。皆は、ただ純粋に食事を楽しめばいい。残りは私が全て食べる。心配はいらない……大船に乗ったつもりでいてほしい」
「……大船ごと食いそうなやつが、キメ顔で現れたんすけど……」
「ベルゼ先輩、どこから現れたにゃ……」
そう、いつの間にか、本当にごく自然にその場に居たのは……ベルゼ・カルネであった。どこか呆れたような顔で呟くアルシャの言葉に、ベルゼはフッと笑みを浮かべる。
「美味しい食べ物がある。だからそこに私が居る……それは当然のことで、なにもおかしなことじゃないんだよ、アルシャ」
「……そ、そうなのかにゃ……」
「ああそうだ、せっかくだし最近作った美味しい飴をあげるよ。感想を聞かせて欲しいな」
「飴にゃ? 美味しいなら、ありがたくいただくにゃ」
アルシャにキメ顔で告げた後で、ベルゼはどこからともなく包装紙に包まれた飴玉を取り出して、アルシャに手渡した。
普通に嬉しそうな表情を浮かべるアルシャとは対照的に、ウルペクラ、アルフェラ、カノープスの比較的配下歴の長い……ベルゼの味の評価を分かっている三人はなんとも言えない表情を浮かべていた。
アルシャは死王配下になってまだ浅いため、ベルゼの味の感想についてしっかり把握しておらず、美味しいという言葉をそのまま素直に受け取った。
もちろん、決してベルゼの「美味しい」が、外れ確定というわけではない。振れ幅が極めて大きいだけで、普通に美味しい場合もあるのだが……残念ながら飴玉を口に入れたアルシャの表情は分かりやすく歪んだ。
「うにゃぁぁ!? な、なんにゃ、これ!? 飴なのに……ピザの味がするにゃ!?」
「その通り、その飴はピザの味をかなり正確に再現したものだよ! ちなみにそれは、マルゲリータ味だ。チーズのクリーミーさ、トマトソースの味わい、バジルの爽やかさ、焼きたての香ばしさまで感じられる自信作! さぁ、アルシャ! 感想は?」
「……普通にピザ食わせてくれにゃ」
至極真っ当な感想であった。わざわざ飴でピザの味を完全再現するぐらいなら、普通にピザを食べさせて欲しいと……そんな風に感想を伝えたアルシャだったが、そのまま飴を舐め……なんとも不思議そうな表情を浮かべた。
「……う~ん、変な感じにゃ。感想としては、飴に対する冒涜的な何かを感じるって感じにゃ……でも、飴を舐めてるのにピザの味や香りが口の中に広がるってのが不思議な感覚で、変に癖になる感じはするにゃ。う~ん、記憶にはめっちゃ残る気がするにゃ」
「ふむふむ、癖は強めだけど、人によってはそれが逆に一種の魅力にもなる感じかな? ありがとう、参考になったよ。お礼にジンギスカン味とビーフシチュー味と麻婆豆腐味もあげるよ」
「……普通の味をくれにゃ……」
変な味の飴玉を追加でいくつか渡され、アルシャはなんとも微妙そうな表情を浮かべていた。確かに変に癖になるような味わいはあった。あったが……普通の飴の方が美味しいので、二度食べたいとは思わないと、そんな感じだった。
「まぁ、でもベルゼが来たのは丁度よかったっすね。少なくとも量の心配は無くなったっすし、料理も任せれるっすからね。というわけでベルゼ、桃をいい感じに調理して欲しいっす」
「任せて……でも、廊下ではさすがにアレだし、場所は変えよう。アルフェラ、よろしく」
「はいはい、テラスがいいかな? じゃ、繋ぐよ~」
ベルゼに促されたアルフェラがテラスに空間を繋いだ門を出現させ、追加でベルゼを加えた計六人は桃を一緒に食べるためにテラスへと移動していった。
~ちょっと解説~
【唐突に表れた暴食の化身】
なんか皆おやつ食べる気配を察知して現れた。大量の桃? まるで問題ない、その気になれば一口で終わる。
彼女が現れた瞬間、桃が余ってしまうという心配は無くなったし、皮などのゴミが出る心配もなくなった。
~今日の黄金騎士~
「桃を奢ってやろう」「9トンでいい」
※あくまで補助に駆け付けただけのベルゼは、控えめな要求で謙虚さをアッピル




