太さと密度
不利な流れの話を有耶無耶にしようとカノープスを投入したものの、一周回って話が戻ってきてしまったことでアルフェラはなんとも言えない表情を浮かべた。
しかも、最初よりふたり……カノープスとコルネが増えている状況である。
「……い、いや、でもこれはチャンスかもしれない! そこの性悪コンビ……いや、えっと……う~ん」
「どうしたんすか?」
「いや、性悪コンビって言おうとしたけど、さすがにウルペクラと同列扱いはアルシャに悪いかなぁって」
「それは本当にそうにゃ、こんな悪意の塊と一緒にしないで欲し――ふにゃっ!?」
アルフェラの言葉にアルシャが深く同意をしたが、話している途中でウルペクラに尻尾で叩かれていた。
「……性悪狐とその弟子ってことで、ともかくそのふたりだけだと意見が悪意ある方向に傾いていたと思うんだ。だからここで、新しくふたりの意見を取り入れるのはある意味でボクにとって有利になるかも……というわけで、カノープス、コルネ、率直な意見を聞きたいんだけど……ボクの足は太くないよね! ね!!」
「少なくとも我よりは太いと思うが……」
「いやさ、ボクが骸骨より細い足してたら大変だよ? 別の意味で大問題だよ。一般論で!」
諦め悪く己の足は太くないと主張するアルフェラに対して、カノープスは自身よりは太いと返すが……スケルトンであるカノープスは全身骨であり、当たり前ではあるがアルフェラの足がカノープスより細いということは無い。
「しかし、比較対象が無いと……ふむ」
「おいこら黄金骸骨、なにを考えて右手に大根を出現させた? 返答次第では即バトルスタートだからな……」
「違う。これは光の魔力によって作り出したゴールデン大根だ!」
「色は関係ないんだよ! なにと比較するために、その大根を出したのかって話をしてるんだよ!!」
「しかし、このぐらいのサイズでないとアルフェラの足と比較できないだろう?」
「……」
ごく当たり前のように告げたカノープスに対し、アルフェラは据わった目で手をかざす。するとカノープスの周囲にいくつもの影が現れそれが槍のように鋭く伸びてカノープスに襲い掛かり……カノープスが纏っている光の膜によって消滅した。
「……クソ骸骨、極光防壁解け、ボクの攻撃届かないだろうが……」
「……い、一度冷静になって話し合おう」
カノープスが纏っている強力な光の魔力……本人が極光防壁と呼ぶ魔力障壁は、その硬さもさることながら、強力な光の魔法によってアルフェラの影による攻撃を無効化してしまうため、アルフェラの攻撃は極光防壁を纏っているカノープスには届かない。
もちろんアルフェラも伯爵級高位魔族であり、世界でも上位の実力者であるため並大抵の光魔法程度では影に影響はない。しかし、カノープスの光魔法はあまりにも強すぎて、文字通り相性最悪の相手と言ってよかった。
そんなやり取りを見ながらアルシャは隣にいたコルネに尋ねる。
「……コルネはどう思うにゃ?」
「私は知識や経験が足りてないから、判断が難しい部分はある。でも、アルフェラの足は綺麗だと思う。アルフェラは背も高くて足も長いから、カッコよく見える」
「コルネっ!」
コルネが率直な感想を伝えると、アルフェラはどこか感動したような様子で小柄なコルネを抱きしめて頭を撫でつつ、ウルペクラ、アルシャ、カノープスの三人を睨みつける。
「分かるか、慈悲の心の無いやつらめ! コルネみたいな、自然と優しい感想が出てくるのが正しいんだからね! 気遣いってさ、重要だと思うんだよ!!」
「……オブラートに包んだところで、太いもんは太いんすけどね」
「こ、このクソ狐ぇ……」
「待て、アルフェラ、ここは我に任せてくれ。ようやく状況が飲み込めた。正義を是とする光の騎士として、あるべき立ち振る舞いを行う」
例によって煽ってくるウルペクラに対して、アルフェラが威嚇するような表情を浮かべたが、そこでカノープスが割って入ってきた。
どこか堂々とした立ち振る舞いであり、自身に溢れるその姿は眩しくすら……いや、実際発光してるので眩しかった。
「確認したいのだが、アルフェラの主張としては己の足は太くないというものであり、ウルペクラやアルシャがそれを認めないということでいいんだな?」
「そうだよ!」
「分かった、任せろ」
一度確認をしたのちにカノープスは力強く頷き、ウルペクラとアルシャの前に移動して……軽く頭を下げた。
「……すまない、ウルペクラ、アルシャ。アルフェラはああ言っているので、どうか広い心で受け入れてやって欲しい」
「……そうっすね。アタシたちもつい、ムキになり過ぎたっす。大人の対応じゃなかったっすね」
「……たしかににゃ。アルフェラ先輩が太くないというなら、それが真実でいいにゃ」
「なんで、ボクがワガママ言ってて、お前らが大人の対応で妥協したみたいな流れにしてるんだぁぁぁぁぁ!!」
やれやれ仕方がないなという表情でアルフェラの主張を受け入れる三人を見て、アルフェラは心の底からの叫びを上げた。
「余計な、アシストしやがって……いい加減にしろよ、フツメン骸骨!」
「ふ、フツメン!? ぐぬぬぬ、我とて叶うのならゼクス殿のような一目見るだけで分かるほど圧倒的な骨密度のイカした骸骨に生まれたかった!」
「……骸骨の美形度って骨密度が基準なのかにゃ?」
「分かんねぇっす。というか、一目見て分かる骨密度ってなんすか? 骸骨界隈では骨密度を目視できるんすかね?」
アルフェラの反撃に大きなダメージを受けて悔しそうに告げるカノープスを、ウルペクラとアルシャが呆れたような顔で見ており、コルネは「骸骨の美醜判断に骨密度は重要」とメモを取っていた。
~ちょっと解説~
【三竦み】
カノープスは強力な光魔法によりアルフェラの大半の攻撃を無効化できるため、アルフェラに対して極めて有利に立ち回れるが、極光防壁に光魔法の武具と魔力防御が多いため魔力による防御を貫通してくるコルネには弱い。
コルネはカノープスに対して特効ともいえる武器を持っているため有利だが、近~中に特化した物理アタッカーのため、影を用いて遠距離攻撃を仕掛けてきて、近付いてもすぐに距離を取られるアルフェラには相性不利である。
アルフェラはコルネに対しては、遠距離攻撃主体に立ち回ることで優位をとれるが、強力過ぎる光魔法を使うカノープスにはほとんどの攻撃を封殺されるうえに、影を用いた移動も阻害されるため相性は最悪。
~今日の黄金騎士~
「ムッチリ太ももがお怒りだ。はやくあやまっテ!!」
※ただし光の騎士に影による攻撃は届かない。




