輝け光の妙技
輝くような……というか、物理的に輝いている黄金の鎧を身にまとった死王配下のひとり、カノープスは……対峙するウルペクラとアルシャに向けて、どこか芝居がかった様子で手を握る。
「二対一……二対一で相手を貶めようなど、まさに悪党の所業! 悪党ポイントプラス10だ!」
「カノープス先輩がたまに使う悪党ポイントってなんにゃ? 溜まるとどうなるにゃ?」
「ノリで言ってるだけっすよ。誰が何ポイントとか、本人も覚えてないと思うっす」
カノープスは正義感の強い死王配下であり、アンデット種でありながらも光魔法を得意としいて、自らを光の騎士と自称する存在である。
現在も堂々とした様子で、悪党ことウルペクラとアルシャと対峙しているが……事情などはなにも知らない。とりあえず「正義の味方」と言われて呼ばれたので、そう立ち回っている形である。
熱が入ったのか、鎧の輝きが増すカノープスを見て、ウルペクラはどこかやれやれといった感じで首を横に振る。
「……しかし、これは厄介な事態になったっすね。どうするっすか? ボス」
「うにゃ!? このクソ狐、なんか私を主犯に仕立て上げようとしてるにゃ!?」
唐突にアルシャの方を向いて「ボス」と呼び始めたウルペクラの意図に気付き、アルシャが思わず叫ぶ。しかしそんなアルシャの叫びも空しく、カノープスは手に出現させた剣の切っ先をアルシャの方に向ける。
「なにぃ!? 貴様が黒幕か、アルシャ!!」
「ご、誤解にゃ!? あ、でも、黒幕って響きはちょっとカッコいいにゃ……」
「この光の剣の錆としてやろう!」
「……光魔法で作った剣は錆びるのかにゃ? じゃなくて、えっと……私がボスというなら、いくにゃ! ウル先輩!」
基本的に死王配下はノリのいい者が多い、咄嗟に振られたボスという役柄ではあったが、アルシャはそれならばとウルペクラをけしかけることにした。
そんなアルシャの反応を見て、苦笑した後でウルペクラはカノープスに向けて一歩踏み出す。ウルペクラは公爵級高位魔族、カノープスは伯爵級高位魔族であるため、戦闘力というならウルペクラが圧倒的に上だ。
とはいえ、別にこれは喧嘩をしているというわけでもなく、状況はよく分からないがとりあえずアルフェラの振りにノッているカノープスと、それに合わせてアルシャとウルペクラも小芝居のような感じになっているだけである。
「でたな、性悪狐……だが、見くびるなよ! 貴様がいかに鋭い言葉の刃を持っていようとも、いかように我を貶そうとも! 心に正義を宿した光の騎士が膝を突くことなど無いと知れ!」
「……光の騎士だのなんだのカッコつけてるっすけど……骸骨界隈じゃフツメンらしいじゃないっすか、骨密度足りないとかって言われてるの知ってるっすよ」
「ぐはぁぁぁっ!?」
「膝突いたにゃ!? さ、さすがウル先輩、相手の急所を躊躇なくぶち抜く一撃にゃ……」
ウルペクラのあまりのも鋭い言葉の刃は、正義の意志で塗り固められた光の騎士でさえも思わず膝を突いてしまうほどに強烈だった。
なにせ、気にしていることである……とても気にしている。光の騎士を自称して、自分で思うカッコいい立ち振る舞いなどをしているが、骸骨界隈ではフツメンで平凡な頭蓋骨などと言われており、それに関しては本当に気にしている。
「お、おのれ……ゆ、許さん。絶対に許さんぞ……アルシャぁ!!」
「はにゃ!? 私なのかにゃ!? 確かにけしかけたのは私にゃ……」
大きなダメージを受けていたカノープスだが、猛然と立ち上がって剣を構える……黒幕であるアルシャに向けて。
もちろん、男爵級高位魔族でしかないアルシャにカノープスに対抗できるような力はない。あくまで冗談だとは思っているのだが……若干不安はある。
いきり立つカノープスに対して、不意にウルペクラが軽く挙手をしつつ口を開く。
「あ~カノープス、ちょっとその前にいいっすか?」
「なんだ? 命乞いなら聞かんぞ!」
「……いや、後ろ……親衛隊の方来てるっすけど、大丈夫そうっすか?」
「……うん?」
ウルペクラに言われてカノープスが後方を振り返ると……静かな表情で拳を構えているコルネが居た。
「……いや、あんまり大丈夫では……」
「コルネが来てくれたにゃ! コルネは、いつも頼りになるにゃ! カッコいいにゃ!」
「アルシャっ……」
「あ~アルシャがそんなこと言っちゃうと……ほら、ベオウルフ構えたっすよ。ピンチ、骸骨ピンチっす」
アルシャの事が大好きなコルネが、アルシャに頼りになるだのカッコいいだの言われてテンションが上がらない筈も無く、拳ではなくベオウルフを構えた。
カノープスがアルシャを害そうものなら、一切の容赦なく粉砕するという決意と共に……。
「……本当にピンチなんだが? 天敵なんだが?」
「あっ、そういえばそうにゃ。カノープス先輩は強力な光魔法で鎧とか武器を作って戦うタイプで、魔力防御を問答無用で貫通するベオウルフは相性最悪なのにゃ」
カノープスは強力な光魔法によって武具を作り出し、片手剣と盾……そして幾重にも重ねた光の防壁によって堅牢な戦いを得意とするタイプであり、どちらかと言えば守備寄りの戦闘スタイルだ。
しかし、その防御の固さはほぼすべて魔力を用いた防御によるものであり、魔力防御を根こそぎ貫通するベオウルフはまさに天敵といっていい。
つまり……光の騎士、登場間もなくして大ピンチである。
「……仕方あるまい。ここは、光の妙技で切り抜ける!」
「な、なんにゃ……カノープス先輩、なにをするつもりにゃ……」
「刮目せよ! これこそ、我が好敵手であるブロッサムに教わった異世界の作法を昇華させたもの……秘技、シャイニング……土下座!」
「うにゃぁぁ!? な、なんか、めっちゃ光りながら頭下げてきたにゃぁぁ! というか、眩っ、眩しいにゃ!? あまりにも眩しすぎるにゃ……こ、こんなに眩しいと、思わす許しちゃうにゃ……」
カノープスが繰り出した光の妙技は、全身で眩く発光しながらの土下座であった。とてつもなく光量であり、眩しさに目を覆いながらもアルシャは許すと宣言して、それを聞いたコルネは静かに斧を下ろした。
「……アルシャが許すなら」
「ふっ、今日の光の妙技で窮地を脱したか……光の騎士の道は、輝かしくも険しいものだ」
「それでいいんすか、光の騎士……」
ただしこの流れはあくまで、ノリのいい死王配下同士が即興でアレコレやった結果であり、元々カノープスにアルシャやウルペクラを害する気は無く、コルネもその辺は分ってノッていただけである。
コントのようなやり取りを終えて、カノープスは立ち上がってウルペクラに声をかける。
「……で、結局なんの話をしていたんだ?」
「アルフェラの足が太いって話っす」
「結局その話に戻るのぉ!?」
せっかくカノープスという濃いキャラを投入して場をかき乱して有耶無耶にしようとしていたのに、そのカノープスによって再び最初の話に戻され、アルフェラは思わずといった感じで叫び声を上げた。
~ちょっとキャラ紹介~
【カノープス】
死王配下のひとりにして、光の騎士を自称する伯爵級高位魔族。
2mのスケルトンで完全にアンデット種ではあるのだが、光の魔法が得意であり、自らを光の騎士と呼称している。
正義感が強くキャラが濃いため、思い込みで突っ走ることもしばしばある。ただ、普通に振りに乗っている場合もあり、暴走気味とかというわけではない。
界王配下のブロッサムと仲が良く「サムライ」と「騎士」であるため、互いに好敵手……ライバルと呼び合って対抗心を燃やしている……が、別に顔を合わせるたびに戦ったりとかでもなく、普通に仲が良く一緒にお茶飲んだり、ブロッサムの異世界談議に付き合ったりしている。
冥王陣営のゼクスが骸骨界隈では超絶イケメンなのに対して、カノープスはフツメンであり本人はかなり気にしているが……骸骨界隈以外の者には違いがよく分からない。
~今日の黄金騎士~
「リアルモンクは勘弁……え? 両手斧装備だから実質暗黒騎士? いや、その斧チート武器でしょ、ウチのシマじゃノーカンだから」
※魔力防御を主とした堅牢な戦いを得意とする光の騎士に、魔力防御全貫通斧はあまりにも特攻武器。




