晶花宴⑥
晶花宴で予定されていた催しも一通り終わり、食事や菓子、酒や飲み物と共に参加者や死王配下の者たちも十分に歓談を楽しみ、晶花宴もそろそろ終わりが近付いていた。
今回の進行でもあるウルペクラが、一般参加者や配下たちの様子を見てそろそろ頃合いと判断したのか、拡声魔法を使って呼び掛ける。
『参加者の皆さん、晶花宴は十分に楽しんでいただけたでしょうか? 名残惜しさは感じますが、そろそろ終了予定の時間が近付いてまいりました。最後に、毎年恒例ではありますがブルークリスタルフラワーの花畑をバックに記録魔法具にて写真を撮影して締めくくりとさせていただこうと思います。なお、この撮影への参加は任意ですので希望者は案内担当の死王配下の指示に従って移動をお願いします。参加を希望されない方は、そのままで大丈夫です。早めのお帰りを希望される方は、花畑を正面に見て左手に居ます転移担当の死王配下にお声がけください』
晶花宴では毎年最後に一日の記念として写真の撮影を行う。この写真撮影にはアイシスや貴賓席の参加者……今回で言えば、クロムエイナやリリウッドも参加するので、一般参加者たちにとっては六王と一緒に写真撮影できる貴重な機会である。
そのため基本的に撮影を辞退する者はほぼいない。今年もどうやら一般参加者は全員撮影に参加する様で、死王配下たちに誘導されて花畑の前に整列していく。
『ちなみに撮影した写真に関しては、後日専用の額縁に入れてお届けします』
もちろん中心は主催であるアイシスであり、その隣に夫である快人が並び、その両脇にクロムエイナとリリウッド、周囲を固めるように死王配下幹部の六人が並ぶ。
そして一般参加者が並び終わったところで、撮影のバランスを考えて死王配下たちがそれぞれの場所に加わる。
『はい。それでは皆さん、正面にあります球体の方を向いてください。球体の上に数字が出てカウントが始まりまして、ゼロになった時に撮影されますのでうっかり目を閉じてしまったりしないようにご注意ください。それでは、間もなく撮影です!』
ほどなくして球体状の魔法具の上にカウントダウンの数字が表れ、それがゼロになったタイミングで撮影が行われ、晶花宴の全ての行程が終了する。
そして、一般参加者たちは順に転移担当によってクリスタルシティに帰還していくのだが、その際にアイシスがひとりひとりに「……今日は……ありがとう」と一声かけて見送ってくれるので、参加者たちは最後まで楽し気な様子で帰って行った。
そして最後に貴賓たちの帰還となり、クロムエイナやリリウッドが晶花宴の感想を伝えつつ、笑顔で転移して去っていく。
アイシスはこの後で快人を送っていき、ウルペクラたち死王配下は会場の片付けを行う。
「空の食器類から順に運べ! 一部は先に戻って、運ばれてきた食器を洗うように……ベルゼ! 残されている料理を食おうとするな!」
「……残飯なら、私が食べてもいいのでは……」
「駄目だ! 残飯はまとめて魔力に変換して処理する」
「……食器を食べるのは……」
「いいわけないだろうが、たわけ! 制作担当達が作った食器だぞ……空になった酒瓶は、貴様が作ったものだから好きにすればいいが……」
配下たちに指示を出しつつ、放っておけば残飯などを食べ始めそうなベルゼに釘をさしておく。ゴミにならないという意味では、物質を魔力に変換して処理しても同じなので、残飯を集めて食べるという意地汚い真似をさせないように事前に釘を刺した形である。
ベルゼも別に残飯にそこまで拘りがあるわけでもなく、食べれるなら食べる程度の話なので、普通にイリスの指示通り空瓶やゴミなどを食べて処理していく。
「転移用の門は色分けしてるよ~。青が居城、赤が1番、緑が2番、黄色が3番、紫が4番倉庫に繋いでる。5番以降の倉庫使う場合はボクに声をかけてね!」
「アルフェラ~7番にも繋いでおいて欲しいっす。魔法具類はそっちにしまうっすから」
「はいは~い。じゃあ黒色の門が7番ね」
ウルペクラの言葉を聞いて、影から上半身だけを出している転移担当のアルフェラが頷き、黒色の門を出現させる。
片付けとはいっても、高い能力を持つ者が多い死王配下であり、元々規模自体も絞っている関係もあって片付け自体はすぐに終わる。
「では、我々は打ち上げの用意だな」
「あア、とりあえず3番から酒類を運び出しておくカ、多目に出してもベルゼが全部処理するだろうかラ、問題ないナ」
晶花宴は終わったが、この後は居城で死王配下たちの打ち上げと反省会があるので、その準備も並行して行っていく。
全員で片付けをするのは過剰なので、シリウスやラサルといった一部の面々は打ち上げの準備の方に取り掛かっていた。
「ほな、ウチはブルークリスタルフラワーの花畑の手入れをしてくるな~」
「ああ、打ち上げの準備ができたら呼びに行くよ」
花畑の方に向かうスピカをポラリスが見送ると、そのタイミングで転移によって何人かの死王配下が戻ってくる。
「参加者の送り届け、完了したにゃ!」
「お疲れさまっす。じゃ、アルシャはアタシと一緒に魔法具の片付けっす」
「了解にゃ!」
基本的に死王配下たちの仲はよく、皆率先して片付けや準備を協力して行っていくので、賑やかながらどこか楽しそうな雰囲気であった。
片付けをしながらもどこか楽し気な死王配下たちの笑い声と共に、晶花宴の幕は降りて行った。
~前回の余談の答え~
【名前の法則崩れ】
『冥王陣営の法則崩れ=ラズリア』
冥王陣営は基本的に皆数字に関する名前であり、アイン(1)、ツヴァイ(2)、トーレ(3)など、数字に関する名前が付いているが、その中で唯一ラズリアだけ数字ではなく、ラピスラズリが名前の元になっている。
七宝に該当するので順番的には7番の位置にいるが、直接的な数字の名前ではない。
その理由は単純で、ラズリアは厳密にいえば『クロの雛鳥というわけではない』からである。元々ラズリアは妖精族で、初代妖精王となるぐらいまで自力で成長しており、クロと仲良くなったことで妖精王をティルタニアに譲って、クロの家族に加わった存在なのでクロが育て上げた存在ではない。
もちろん細かい部分などアレコレ教わったりした経験はあるが、雛鳥として育てられたというわけではないため、冥王陣営の中では名前の法則崩れの存在である。
『界王幹部の法則崩れ=ティルタニア』
界王幹部は基本的に花や木などの植物の名前から付けられている。
リーリエ=百合のドイツ語読み(Lilie)より
カミリア=椿の英語名カメリアより
ロズミエル=薔薇の英語名ローズ+薔薇の品種のひとつエル(Elle)より
ジュティア=大樹+花のティアレ(Tiare)より
エリアル=花のルエリアより(ルを最後に移動)
ブロッサム=桜の英語名チェリーブロッサムより
しかし、ティルタニアは植物の名前に該当しない法則崩れであり、七姫の中で唯一精霊族ではなく妖精族となっている。
『幻王幹部の法則崩れ=エリーゼ』
幻王幹部十魔の名前には、コードネーム、本名どちらにも悪魔やネガティブなイメージがある単語が含まれている。
パンドラ=パンドラの箱
パンデモニウム=伏魔殿、本名イルネス=病気
グラトニー=暴食
ファントム=亡霊、本名エリーゼ(法則崩れ)
アスタロト=悪魔
モロク=悪魔、本名サタニア・ダークロード=悪魔
リリム=淫魔、本名リスティア・アスモデウス=悪魔
カタストロ=大惨事、人間としての名前エルシオン=死後の楽園
フェニックス=悪魔
ティアマト=原始的混乱をもたらす女神、本名メディア・レビアタシ=悪魔
と、コードネームだけではなく、本名や人間時に名乗っている仮の名前でもおおよそネガティブなイメージのある意味合いの言葉が元なのだが、ファントムの本名であるエリーゼだけこの法則に該当しない。
これはエリーゼが、絶対にファントムとしてしか幻王配下と関わらない……エリーゼとしては、幻王配下とは一切関係がないという本人の立ち位置に由来する法則崩れである。
『竜王幹部の法則崩れ=グランディレアス(没)』
実は、初期の設定では竜王幹部にも法則崩れが存在する予定で、ニーズベルト(ニーズヘッグ)、ファフニル(ファフニール)、エインガナ(エインガナ)と空想上の怪物を元にした名前が由来の三人に対して、グランディレアスだけ該当しない=『見た目で竜種と勘違いされているが本当は魔獣種』……という設定にするつもりだったが、作者が忘れて竜種として登場させてしまったので没になった。
『戦王配下の法則崩れ=存在しない』
戦王配下は、メギドが強ければ誰でも拒まないという性質を元に、元々幹部は名前に法則は無くバラバラという設定なので、法則崩れ以前に戦王配下には名前の法則は存在しない。




