番外編・ベビハラ対応マニュアル(一部抜粋)
このマニュアルは、主に冥王クロムエイナ(以下クロさん)による無自覚なベビーカステラハラスメント(以下ベビハラ)への対応策をケースごとに纏めたマニュアルです。
【初めに】
クロさんは基本的に六王でもトップクラスで温厚で優しい性格であり、通常であればコミュニケーションをとるのに対して問題は無いでしょう。ただし、ベビーカステラが絡んだ時にはIQが大幅に低下して、ベビーカステラに脳を焼かれた一種のモンスターに成り下がるので、注意が必要です。
クロさんと同じ六王やカイトさんのような特例であれば、クロさんに直接文句を言ったりもできるでしょうが、六王の一角であり経済界のトップであり、世界的にも人気の高いクロさんに文句や意見を言うことができない方も多いでしょうから、そういった方々にこのマニュアルが役に立てばと思います。
根本的な話で言えば、クロさんは温厚ですから仮に六王やカイトさん以外がクロさんのベビーカステラ関連の話を拒否したりしたとしても、クロさんが怒ったりということは無いです。でも結構露骨にしょんぼりするので、罪悪感を覚える方もいるでしょうし、このマニュアルではケースごとに合わせた角を立てずにクロさんのベビハラを回避できるように対処方法を記載していきます。
ただし、決してこれが唯一絶対の正解というわけでもありませんし、すべてのパターンに完璧に対応できるというわけでもないので、あくまで参考としたうえで臨機応変に対応してください。
【ケース1・クロさんからベビーカステラ関連の話を振られた場合の対処方法】
おそらくこれが一番遭遇する頻度の高いものでしょう。実際のところあくまで話、雑談の領域であるため対処を間違えば大惨事という形にはなりにくいですが、面倒事や後に尾を引く場合もあるので対応方は頭に入れておくのがいいでしょう。
状況によって適切な対応方法は違いますので、いくつかのパターンに分けて解説していきます。
~パターン1・単なる雑談として振られた場合~
一番事故が少なく安全なパターンではあります。提案などを伴わない本当に他愛のない雑談として話を振ってくるパターンであり、対処方法自体は難しくはありません。
しかし、ここで注意しなくてはいけないのは迂闊にクロさんを喋らせ過ぎない、ベビーカステラの話を広げないという点です。それこそ、迂闊にベビーカステラの話を広げようものなら、延々と話し続ける上にテンションが上がってくると途中で話題を変えるのが難しくなるため、早い段階で話題を切り替えてしまうのが有効です。
サンプルパターンとしては……。
「この前作った新作のベビーカステラが、凄くいい出来だったんだよ」
「それは素晴らしいですね。機会があれば是非食べてみたいものです。ところで、話は変わってしまうのですが……」
といった具合に、クロさんの話に同意しつつもキッパリと話題を変えてしまいましょう。クロさんにしてみてもこのパターンの場合は単なる雑談として振ってきているため、素直に別の話題への切り替えに応じてくれます。
ただし、ベビーカステラの話を膨らませてテンションが上がっている場合は難しくなるので、本当に早い段階での切り替えが重要と言えるでしょう。
~パターン2・なんらかの提案が伴う話の場合~
主に行事ごと……特に飲食を伴う行事、パーティや茶会などに参加した際にクロさんが振ってくる可能性がある話です。
クロさんは全身ベビーカステラに焼かれた、ベビカスモンスターなので隙あらば飲食関連の行事にはベビーカステラを捻じ込もうとしてきます。
このパターンの厄介なところとして、このパターンになる場面では大抵クロさんは来賓、貴賓として来ている場合が多く、主催側がクロさんの意見を否定しにくいという状況である場合が多いです。
この場合の主な対処法としては、クロさんの意見を肯定しつつイメージ的な問題という形でやんわり拒否しましょう。
「このパーティにさ、ベビーカステラとかがあるといいと思うんだ」
「なるほど、確かにベビーカステラは素晴らしい菓子ですしパーティにも合うと思います。ですが、ベビーカステラはやはりクロムエイナ様のイメージが強いため、今回は主催側の印象を維持するために控えさせていただいております」
このパターンで重要なのは、決して「ベビーカステラは合わない」という旨の発言をしてはいけないというところです。そういった発言をしようものなら、ベビーカステラの可能性が云云かんぬんと面倒な自論を展開し始めるので、ベビーカステラに関しては褒め、クロさんの提案は素晴らしいものだと持ち上げておいて……今回は別の観点から控えているという形にしましょう。
あのベビーカステラ馬鹿は、とりあえずベビーカステラに関して褒めておけば上機嫌になるので、ある程度こじつけのような理由でも納得してくれます。
~パターン3・なんらかの質問をしてくる場合~
遭遇する機会としては少なめですが、これは上手く答え過ぎても問題となるパターンであるため個別に解説しておきます。
クロさんはベビーカステラの可能性の探求だとか、新作のベビーカステラのアイディアを探しているとかそういう馬鹿な理由で第三者の意見を求めてくる場合があります。
クロさんの方がこちらに意見を求めてきているという状況なので、基本的にある程度適当な解答であっても、クロさんは問題なく受け取ってくれますし揉めることはまず無いでしょう。
ですが、ここで重要な点として「上手く解答し過ぎてはいけない」というものがあります。クロさんの質問に真剣に考えて迂闊にも凄くいいアイディアを出した場合は……次の機会とかにもまた来るので、尾を引く形となります。
最悪の場合、ベビーカステラのアイディアを求める時にとりあえず聞く定番の相手と認識された場合は、定期的にクソ興味のない馬鹿みたいな話題に付き合わされる結果になります。
斬新なアイディアを出さないように、ある程度無難なありがちな提案を行うようにしましょう。
というか、ホントいい加減にしろよあのベビーカステラ馬鹿、毎回とりあえず私のところに来るんじゃねぇっすよ。こっちは、ベビーカステラの可能性なんてものに興味の欠片も無いんですよ。
【ケース2・クロさんからベビーカステラをお裾分けされる場合】
これは、ある程度クロさんと親しい場合に起こりうる状況であり、場合によっては実害を伴う可能性があるものなので、遭遇する人は限られるでしょうがいざという時に対応できるように頭に入れておいてください。
これに関してもパターンごとに解説を行います。
~パターン1・その場にカイトさんが居ない場合~
ほぼ実害の無いパターンであり、特別な対処をしなくとも安全に乗り越えれるでしょう。このシチュエーションにおいてクロさんがすすめてくるベビーカステラは、オーソドックスな味わいのものか上手く作れた美味しいものなので、ベビーカステラが苦手だったりしない場合は普通に貰って食べればOKです。
ベビーカステラが苦手だったり、いまは食べる気分じゃない場合は「後でいただきます」と受け取ってマジックボックスとかに放り込んでも問題はありません。
~パターン2・その場にカイトさんが居る場合~
実害を伴う可能性のあるパターンです。基本的にクロさんは普段持ち歩いたり、他人に勧めたりするベビーカステラは味を確かめて美味しいと判断した物なのですが、カイトさんがいる場合にだけは事情が異なります。
というのもクロさんは、大好きなカイトさんと「ベビーカステラの可能性が広がる瞬間の感動を共有したい」とかいうはた迷惑な理由で、カイトさんに対してだけは味見をしていない新作を持ってくるんです。
なので勧められたベビーカステラがとてつもなく不味いという可能性もあるパターンですし、ものによっては固定ダメージがあったりするので危険です。
ただし、このパターンがイコール不味いベビーカステラというわけではありません。基本的には七割ぐらいは問題ないです。
美味しい、それなり、無難な味わい、少しイマイチぐらいの問題ないベビーカステラが出てくる可能性が七割といったところです。
そして残りの三割が不味いベビーカステラであり、その中でごく稀にこの世の地獄のような味の大失敗作が出てきます。
ちなみにこのパターンにおいてカイトさんの意見は欠片も参考になりません。おそらく誰よりもクロさんのベビハラの被害にあってるであろうカイトさんの胃は、既に人外の領域といっていい許容範囲を誇るので、私たちが悶絶するような不味さでも「別に体調を崩すほどの味じゃないから大丈夫」とか、そんな感じで普通に食べるので……食べて体調崩したり、不味さで気を失ったりするのはもう毒物なんですよ!
幸いなのは大失敗のベビーカステラは大抵見た目からして明らかに人が口に入れていい見た目をしていないので、判断はしやすいでしょう。
そういうヤバそうなのは、先にクロさんに食べるように促す、クロさんとカイトさんが食べるのを待つという手が有効です。
余談ではありますが、クロさんは一度あのカイトさんをして「あまりの不味さに三日ぐらい気分悪いのが持続したし、夢に見てうなされた」と表現する大魔王のようなベビーカステラを一度作り出しており、興味本位で食べた元神のカナーリスさんが「……自分にダメージ入ったんですが? ……神殺しの兵器かなにかですかね?」と評したこともあって、シャローヴァナル様により『特級危険物』として封印指定され、クロさんは十日ほど正座させられてました。
ただなんかその件以降カイトさんの胃がさらに訳の分からない強化を遂げたみたいで、いままでなら大失敗にカウントしていた不味さのベビーカステラでも「多少固定ダメージある程度だけだから問題ない」とか言うようになりました。
……普通の食べ物に固定ダメージはねぇんすよ!!
【ケース3・なんらかの勧誘を受けた場合】
クロさんはベビーカステラ愛好会とかいう馬鹿みたいな愛好会を作っていて、カイトさんを勝手に副会長にしていたりと暴虐の限りを尽くしてますが、たまにこのベビーカステラ愛好会に勧誘してくることがあります。
百害あって一利も無いので、なんらかの理由をでっちあげて断りましょう。
【これまでに記載した対処法で対応できそうにない場合】
いくつか定番の対処法を記載しましたが、もちろん状況というのはその時々によって違うものであり、マニュアルの対応方が使えないという場面もあるでしょう。
そういった不測の状況や、厄介な状況になったら……とりあえず最終的にはカイトさんに放り投げておけばいいです。
「カイトさんに勧めてみるのがいいですよ」
「カイトさんと一緒に楽しんでみるのはどうでしょう?」
「カイトさんに是非話してあげてください」
とか、そういった感じでカイトさんの方に誘導するのが一番有効です。最終的に困ったらカイトさんのところにぶん投げると……そういう心持ちで対処するのが一番楽です。
間違っても私の方には投げないようにしてください。私はベビーカステラの話はもうお腹いっぱいなので……いや本当に、切実に……。
【最後に禁止事項】
最も重要な禁止事項として、このマニュアルをクロさん及びカイトさんに見せることを固く禁じます。そもそもクロさんに見られてしまっては対処マニュアルの意味もないですし、なにより私がめっちゃ叱られるので……いいですか? マジでクロさんかカイトさんに見せたら、特定しておしおきに行きますからね。私の情報網を舐めないでくださいよ? 絶対見つけますからね! いいですね!!
では、皆さんもベビハラを上手く回避して、よりよい日々を送りましょう。
~ちょっと解説~
【ベビハラ対応マニュアル】
アリスが作成したクロのベビーカステラ関連の対処方法が記載されたマニュアルで、イリスなどを通じて一部の陣営が所持している。
内容はためになるものも多いのだが、割とそこかしこに著者の私怨が見え隠れしており、愚痴のような内容が書かれている部分もある。
無駄に豪華でページ数もあり、本の帯になぜか創造神シャローヴァナルによる「ベビーカステラ狂いに苦しむ者に勧めたい一冊」という推薦文が書かれているのでシャローヴァナルも呼んだことがあるみたいである。




