閑話休題(前編)
昼下がりの午後、彼は人気のない大きい木陰にバスケットを膝に乗せて座っていた。
中には、バスケットより少し小さい人形とサンドウィッチ。
心地良い風が頬を撫で、ふわりと揺れた髪が鼻をくすぐる。
針の筵のような生活をしている彼にとっては、束の間の休息であった。
バスケットから人形を取り出し、自身の横に置き、反対側に籠を置く。
木の幹に凭れ目を閉じると、思いの向くままふわりと指で空に描く。
そっと目を開けると、人形が手を伸ばし、楽しげにシャボン玉で遊んでいた。
トテトテと可愛らしく歩く様子に、思わず笑みが溢れる。
転びそうになったところを、両手で抱え膝に乗せる。
人形は振り返り不思議そうにじっと見るも、またすぐにシャボン玉に興味が移る。
彼の膝の上で立ちながら、シャボン玉に手を伸ばす姿を微笑ましく眺めていた。
籠に手を伸ばし、サンドウィッチを取るともぐもぐと食べる。
このままここで1日過ごすのもいいな……なんて思って。
突然、影が差し肩が跳ね、背筋が凍る。
咀嚼していたものを飲み込み、素早く人形を隠す。
「お昼、見かけないなと思ったらここで食べていたんだね」
恐る恐る顔を上げるとジークハルトが立っていた。
顔は青褪め、唇は震える。
「な、なんですか。用が無いなら帰ってください」
ぎゅっとバスケットを抱え、動揺を隠せないまま小さく威嚇する。
ジークハルトは微笑み、そっと彼の横に腰を下ろす。
何も言わずただニコニコとジークハルトに見つめられ、身じろぐ。
目は泳ぎ、頬が赤く染まる。
立ち上がろうとした彼の正面に、ジークハルトは体を滑らせる。
彼を囲むように木に手を付き、顎に手をかけた————




