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どんよりした心模様とは裏腹なほど、真っ青な空。
青く澄み渡った空を眺めて、溜息を吐く。
「何が悲しくて、好きな人を嫌わなきゃいけないのか」
気は進まないが、嫌われなければ悪魔をこちらに向けるにはそれしかない。
今日から、ジークハルトに嫌われる為に頑張るぞと意気込んだ。
「君は昨日の……」
涼やかな声がして振り返ると、ジークハルトが微笑んで立っていた。
思わず胸が跳ね、そっと深呼吸をする。
「こんにちは、この間は大丈夫だった?」
「えっ……」
まさか出会うとは思わず何も準備をしていなかったので、急いで頭を巡らせる。
「確か、ここだったよね」
さらりと視界が開け、ふと目線を上げると至近距離で海の底を彷彿させる翡翠色と目が合う。
「うわぁぁぁぁ」
肩を跳ねさせ、反射的に後退さる。
「怪我はなさそうだね、それなら良かった」
真っ赤に染まったまま固まっている彼にジークハルトは近付くと、彼の真っ赤に熟れた頬をそっと両手で包む。
「林檎みたいに真っ赤で可愛いね、ルシアン」
くいくいと裾を引っ張り、自身より身長の高いジークハルトを上目遣いで見る。
「あの、僕、シアなんで人違いだと思います」
「そっか……うん。シアだね」
ジークハルトは逡巡したあと、何を納得したのか分からないが微笑み「またね」と頭をさらっと撫でると立ち去った。
呆然と見送ったシアは我に返り頭を抱える。
本来なら、嫌われる演技をしなければならないところを、手も足も出ず翻弄されてしまった。
「魔性過ぎるよ……あれ何……?」
今しがた起こったことを、冷静に思い出せば出す程、真っ赤になっていく。
「こんなこと聞いてないし、嫌われる演技とか絶対無理だよ……」
半泣きで言葉を漏らすと、教室へと向かった。
今日は、嫌われるように立ち振る舞うのは無理なのでお休みします。
と誰にともなく宣言をしながら。
角を曲がったジークハルトは、片手で顔を覆い壁に凭れていた。
「うーん、あれは反則だね」
隠せなかった耳が少し赤くなっていた。




