序章
久々に足を踏み入れた学園は入学した当初と何も変わらない。
澄み切った青空に、心地良い風が頬を撫でる。
復学手続きを終えた僕は、学園内を歩いていた。
左右をキョロキョロ見ていた僕は、前から来る人に気付かずぶつかってしまう。
「すみません」
謝罪をし、頭を上げるとそこには顔の整った温厚な青年がいた。
驚きのあまり固まってしまう。
「大丈夫かい?」
「……」
『ジークハルト殿下』
数年ぶりに出会った初恋の人は、昔と変わらず温かく光り輝いていてお日さまのようだった。
僕は、あることを思い出し、そっと視線を逸らし、恐る恐る盗み見る。
相変わらずソイツは肩に鎮座していた。
ニヤニヤとこちらを見ている。
今すぐにも横っ面を叩きたい衝動を堪え、奥歯をぎゅっと嚙み締める。
「えっと……どこか怪我しちゃったかな?痛いところはない?」
心配と困惑が滲んだ声がする。
「ジークハルト殿下を睨むなんて無礼だぞ」
殿下の側近の言葉で知らぬ間に睨んでいたらしくハッとする。
「殿下、無礼をお許しください。し、失礼いたします」
何かを言いかけたジークハルトを振り切って、その場を足早に立ち去った。
「殿下、先程の者は」
「うーん、怖くはないんだけど、小動物みたいな子で可愛いよね」
「はぁ……。危機感持ってもらっていいですか?貴方王子なんですよ」
彼は、微笑みながら、すっと彼が居なくなった方向を見る。
「変わらないね……『ルシアン』」
呟いた言葉は空に儚く消えた。




