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遺された物

 

 

 パーティー会場を後にしたジークハルトは、ふらふらとシアの部屋に向かう。

 勢い良く扉を開けた先は、もぬけの殻だった。



 シアの部屋は彼がいた痕跡すら跡形がなかった……かのように見えた。



 何故か、濃く残る甘い水のような香り。


「シア?」


 名前を呼びながらうろうろと歩く。




 入口から視覚になった机上に、ぽつんとぬいぐるみが置いてあった。


 そっとぬいぐるみを抱き上げる。


「私に似ている」


 脳裏に蘇るシアそっくりの人形。

 部屋を見回すも見当たらない。



 ふと机上に目を戻すと、ジークハルトが渡した黄金色の飴玉が置いてあった。

 綺麗に保存加工がされていて目を見張る。



 飴玉をポケットに入れ、机の引き出しを開けると一通の手紙が入っていた。



 宛名のない手紙には特殊魔法が掛けられていた。

 既視感を感じながら容易く封を開ける。


 震える手で手紙を開くと、ジークハルト宛てだった。



「親愛なるジークハルト殿下へ。


 貴方がこの手紙を手にしているとき、私は既にいないでしょう。


 一つだけ後悔をしていました。


 貴方にずっと言えなかった言葉があって……。


 やっぱり、書けません。


 ごめんなさい。


 どうか、貴方の進むべき道に光が多からんことを。」



 所々涙で滲んだと思われる跡や、何かを書いては消した後も残っている。


 手紙を読み終えた時、ジークハルトは膝から崩れ落ちる。

 彼の健気さに胸が締め付けられ、息が出来なくなる。


 深呼吸をし、呼吸を整える。



 手紙の裏を見た時に瞠目する。



 『シアことルシアンより』



 ジークハルトの脳内のピースがパチリと埋まる。



「守ってくれていたのは、やっぱり君だったんだね」

 首から下げた、水色の御守りをぎゅっと握りしめた。


 堪えていた涙が頬を伝い手紙を濡らす。




 見覚えのある筆跡と、特殊魔法の掛け方が匿名で届いた御守りと同じだった。


 御守りは、ジークハルトを悪魔からずっと守っていた————




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