卒業パーティー
学園の卒業パーティーで、僕は断罪される。
第二王子を害した罪で。
パーティーの終盤、突如として会場の真ん中へと連行された。
後ろ手を縛られて。
衛兵に取り押さえられ、第二王子の目前へと差し出されていた。
「こいつは、ジークハルト殿下に数々の侮蔑をした。また、殺そうとした。」
俯いていた顔を上げ、じっと彼を見る。
久々に見る姿にホッとする。
良かった。
王子には何も憑いていなかった。
奴らは狡猾で鋭いから。
細心の注意を払わないといけなかった。
「こうするしかなかった」
「こいつは悪魔に取りつかれている。」
誰かが僕を指差して言う。
ふと後ろを振り向くと標的がいた。
嗚呼、なんだ。やっぱり、僕にとり憑いていたんだ。
嬉しくて笑ってしまう。
「何が可笑しい」
頭上から聞こえてく衛兵の声。
魔力で彼らを吹き飛ばすと立ち上がり、振り向く。
手には隠し持っていた、魔力石。
『チェックメイト』
悪魔にそう告げると奴は動揺し、自身についている鎖に気付く。
「もう今更無理だよ」
不敵に笑い、告げる。
ヤツは絡み合う鎖を、引きちぎろうとする。
「嗚呼、そっかぁ、そうだよね。ジークハルト殿下を殺そうとしたのは君だよね?そっかぁだって……」
『僕がしたわけじゃないもの』
シアは肩の上に浮いていた悪魔の首を掴むと、地面に叩きつける。
「ずっとこうしたかったんだよ。君を見つけた時からさ」
悪魔の体を足蹴にしてただ淡々と紡ぐ。
表情の変わらなさが、より一層不気味さを掻き立てる。
異質な空気に誰も言葉を発せない。
「よくも、僕と殿下で遊んでくれたよね。楽しかった?楽しかったよねぇ。君がニヤニヤしながら見ていたの」
魔力をまとわせ、悪魔の体を思い切り踏みつける。
『ずーっと、気付いてたよ』
悪魔は怯え、身じろぐ。
「君は僕と死ぬ運命だよ」
ニヤリと嗤うと蹴り上げ、重力を使い思い切り地面に叩きつける。
巻き付く鎖は、悪魔には毒で悶え苦しむ。
「もう、誰にも手出しはさせない」
悪魔から、ジークハルトへと目線を向ける。
おぞましいものを見るような目で、周囲は見ていた。
「どうして……どうして!」
彼は目を見開いて愕然とした。
シアは、苦痛に悶える悪魔を、鎖で引き摺りながらジークハルトの元へと向かう。
「やっぱり、殿下も知っていたんですね。薄々そうじゃないかと思ってたんですよ」
彼の元へ向かうと、耳元で囁く。
『見えてましたよね、この悪魔』
ジークハルトは息を呑む。
「貴方がこいつを利用としていたとしても、それもまた過去のこと」
地面に転がる悪魔を一瞥する。
「僕の最初で最期のパフォーマンス、とくとご覧あれ」
シアは声高に言うと、優雅にお辞儀をする。
懐から一枚の紙を取り出し、宙へと放り投げた。
紙は、シアの瞳と同じアクアマリン色の美しいオーロラに代わる。
水面のように美しいオーロラは、悪魔とシアを囲う小さな青い鳥籠へと変貌した。
美しく高度な魔法に、周囲は感嘆の溜息を漏らす。
鳥籠の真下には蒼い魔法陣広がり、魔法陣を囲むように蒼炎が出現する。
諦めの悪い僕だから、少しでも長く話したくて時限性のある魔法にしていた。
後ろで悪魔が悶え苦しむ声が聞こえる。
本来の僕には、痛覚なんてないから、何も苦しくはない。
「まさか、シア、君は……」
ジークハルトは顔を歪め、肩を震わせる。
「どうして君が消えなきゃなんだ!シア!」
鳥籠の柵に手をかけ、壊そうと前後に揺らす。
首元には、水色の小さな袋が。
シアは目を見張ると、悲し気に微笑んだ。
衛兵が止めに入り、ジークハルトの手が柵を離れる。
それでもと彼は手を伸ばす。
「シア!」
悲痛な声に思わずシアも手を伸ばし、あと少しというところで炎に阻まれる。
「嫌だ、私を置いて行かないでくれ。悪いのは私だ。どうか、私を!」
切羽詰まった声で張り上げる。
「なんて顔をしているんですか、貴方は」
シアは優しく微笑んだ。
『愛しています、ジーク様』
泣き笑いで伝えた言葉は儚く消えた。
鳥籠ごと青い炎に包まれ、悪魔の絶叫が響き渡る。
コロンとシアが使った魔力石だけが、残っていた。
ジークハルトはふらふらと歩みを進めると、そっと魔力石を拾う。
シアが選んだ悪魔を祓う方法は『自身ごと悪魔を消す』ことだった。




