狩人の村の子
春が深くなった頃、やっと狩人の村から子どもが五人やってきた。
その中には、ミクやサリーのバンズ村の子はいなかったので、少しがっかりしたけど、皆、五歳以上なので、集会所に住む事になった。
「少し、ホッとしたわ」とサリーは私にだけ打ち明ける。
「うん、ヨナの部屋を置いておけるもの。秋には、織物の修業に来ると言っていたから、気になっていたのよ」
男の子ばかりなのは、やはり他所に出すので親が反対したのかも知れない。
「学舎に来るのかな?」これが一番の関心事だけど、オリビィエ師匠に言われた通り、ミクは自分のやるべき事に集中しようと思う。
それに、春はやる事が多い。学舎を休みたい誘惑に駆られる程に。
畑仕事も多いけど、やはり冬よりは薬草も生えているから、オリビィエ師匠と共に森に行きたい。
ヨシは、学業面は順調だし、光の魔法もかなり頑張っているけど、やはり武術訓練が一番のネックだ。
体力増加の為にも、光の魔法の使い方をメンター・マグスに個別指導されている。
ジミーは、ジミーだよ。光の魔法は、ほぼ習得したけど、学業面は手こずっている。武術訓練は生き生きしているよ。
私も、弓の練習とメンター・マグスに水の魔法も習っている最中だ。
「風の魔法の方が弓には良いのでは?」と最初に相談した時に言われた。
「私は、サリーが治療の技を習っているから、薬師だけで良いと思っていたけど、水の魔法でも治療ができると聞いた事と、薬師には綺麗な水が必要だから」
メンター・マグスは、土の魔法が使える私が、苦手な風の魔法を避けたのではと考えていたけど、確かに薬師には水の魔法が使えた方が良いと頷く。
「だが、弓の練習といずれは風の魔法も習った方が良いぞ。ドラゴンを近距離で倒すのは、ミクには荷が重いだろう」
それ! それがなければ、良いのに! と思って膨れちゃう。
「ミクはもうアルカディアの子なのだから、ドラゴンぐらい倒さなきゃ、心配で人間の街に行かせられないね」
いつのまにか、狩人の村の子から、アルカディアの子になったのかと驚くよ。
「ミク! だって十歳までアルカディアで過ごすんだろう? 二年しか住んでいない狩人の村の子じゃないよ」
リュミェールが横から口を出して、メンター・マグスから叱られるのもいつもの学舎の風景だ。
そう! 狩人の村から来た五人は、簡単な読み書き、計算はできるからと、学舎に来ないのだ。
勿論、アルカディアの長老会のメンバーは説得したが、早く光の魔法を習得して、村に帰りたいと拒否された。
「他にも生活に役立つ技術があるから、師匠について学んでは?」
「いや、早く狩人の村に帰りたい!」
師匠について、技を学ぶ気もない子どもに、長老会のメンバーもお手上げだ。
午前中は、メンター・マグスは学舎なので、リグワード師匠が教えて、昼からはメンター・マグスが指導している。
「折角、アルカディアに来たのに勿体ないね」と私とサリーは残念に思う。
唯一、狩人の村から来た子達が、生き生きするのは、アルカディアの狩人達が狩りに連れて行ってくれる時だけだ。
光の魔法を習うテンションの低さに、オリビィエ師匠が『狩人の村の子は狩りが好きだ』とアドバイスしたのだ。
勿論、川より向こうには行かないし、割と浅い場所での狩りだけど、狩人の村よりは獲物が多いし、大物も多いから、それには満足しているみたいだ。
それに、革や角などを行商人に売る時、狩人の村より高価買取りされているのにも気づいて欲しいのかもね。
そうなれば、狩人の村でも特産品を作る気になるかもしれない。
ジミーは、いつもの通り、口を出さないし、ヨシは……何か思うところがありそうだけど、この件には関わらないで、今は様子を見ているみたい。
まだ二歳だし、森の人の尊重する狩人のスキルを賜っていないから、自分が口出ししても無視されると考えているのかもね。私も同意見。
実は、アルカディアの子どもは少ないので、新しく来る子が馴染むと良いなと学舎のメンバーは考えていたけど、やはり若者小屋の五歳は、自分は大人だと勘違いしているみたいだよ。
三百歳まで生きるなら、五歳もまだまだ子どもだよ! 勿論、三歳の私も子どもなんだけどさ。




