冬の準備は大変!
西の商隊が帰ると、秋も深まり、冬の為の準備が始まる。
狩人の村より奥にあるアルカディア、冬が来るのが早い気がする。
「雪に埋もれてしまうのですか?」
これ、大切だから質問する。寒くても、雪が多く降るとは限らないからね。
「雪は積もるけど、そこまで多くはないさ。だから、狩りに出る森の人は多いが、薬草は採りにくいな」
つまり、バンズ村の方が雪は多かったのかも。吹雪が続くと、パパとママは狩りに行けなくて困ったんだ。
「不思議な気がします。早く冬が来るのに……」
ヨシは、薬学の本だけでなく、他の本もいっぱい読んでいる。それでも、気候についてはわからないみたい。
「雪の降るのが多いのは、湿った空気と関係あるのだろう。寒いのは、アルカディアの方が高地にあるからじゃないかな?」
オリビィエ師匠の説明を聞くけど、アルカディアが高地にあるとは知らなかった。
森の人って木から木へ移動するから、地面を歩くより坂とか分からないんだよね。
「そうか! だから、寒くなるのがバンズ村より早いんだ」
ヨシ、やっと二歳だから、そんなに覚えていないのでは? と思ったけど、ヨシなら覚えているのかもね。
アルカディアの森の人達も冬の準備に忙しい。こんな時は、学舎を休んでも怒られない。
親が狩りに行くのなら、ついて行った方が経験になるしね。それに、冬の薪を準備しないといけない。
勿論、前から伐採して乾かしてあるのを、使いやすいように薪割りをするんだよ。木の家は、人数が増えたから、薪の使用量も増えている。
これ、ジミーが大活躍だ! 斧スキルだったんじゃないかな? ってぐらい上手い。
「ジミー、斧の使い方、凄く上手くなっているじゃん!」
ヨナも驚いて褒めているけど、しなやかな美少女なのに、ヨナも負けずに薪割りをしている。
「二人ともトレント狩りで斧を振り回していたからね」
サリーも、手斧で焚き付け用に細かく裂きながら、呆れている。
私とヨシは、その横で火食い鳥の餌にするとうもろこしの茎をナタで刻むのに忙しい。
増えすぎた火食い鳥のうち、雄は何匹か潰して、フライドチキンになったけど、雌は全て残したからね。
そのフライドチキンが美味しすぎて、アリエル師匠は「冬は全て潰したら?」なんて言いだした。
「卵がないとスイーツは作れないものが多いですよ!」と言ったら、黙ったけどね。
冬は、卵を産むのをサボるのもいそうだけど、毎日何個かは手に入る。でも、それの餌が問題なんだ。
卵を使った料理が好評なので、火食い鳥を増やしすぎて、夏から作っていた餌では足りないのが目に見えているんだもの。
集会場に置いてある人気のない脂身は、全て私が買っている感じ。動物性の石鹸にもするけど、火食い鳥の餌にもするからだ。
脂身を大鍋で溶かしたのに、ナタで刻んだとうもろこしの茎や他の野菜クズを入れて、平らな容器に入れて冷やす。
今日は、皆で薪作りと餌作りをしているのだけど、ジミーは夕方から抜けて、ヴェルディさんの畜産の手伝いに行く。
こちらも、冬の間の餌の確保に忙しい。とは言え、ヴェルディさんは毎年の事なので、春から夏に牧草を刈って乾かしていたけどね。
それらを、家畜小屋に積み上げる作業をジミーは手伝っているんだ。
「マジックバッグを貸してあげるよ!」と言ったけど、一通りは習いたいのか、首を横に振った。
相変わらず、口が重いジミーだ。まぁ、やり方が分かったら、マジックバッグを使っても良いんじゃない?
ただ、私の作るマジックバッグは、まだまだオリビィエ師匠のような大容量ではないんだよ。
サリーにあげたのは、この前、掃除しがてら描き直して、少し容量が増えたけどね。
火食い鳥の餌だけじゃなく、保存食作りも皆に手伝って貰ったよ。
「今日は、ろうそく作りをしよう!」
これも人数が増えたし、蝋燭は寒くなってからの方が固まりやすいんだ。家でも作っていたけど、他の子は塩水で濾すことはしていなかったみたい。
人数が多いと、冬支度の量も増えるけど、手伝いも増えるから、一気に片付く。
「アリエル師匠、もう少し樹糖を溜めておきたいです」
蜂を飼っているサリーは、秋にかなり樹糖を貯めた筈だけど、アリエル師匠がお酒にしたり、私が頼んでお酢にしてもらったし、スイーツにも使ったから、不安になってきたみたい。
「狩りに行こう!」
ヨナも基本的に狩りが好きだ。ジミーなんか斧を手に持っている。
「仕方ないわねぇ……樹糖を溜めたトレントもかなり狩ったから、遠くまで行かなきゃいけないわよ」
私がマジックボックスの中のもので、簡単なサンドイッチ弁当を作って持たせる。
「私達も最後の薬草採取に行こう!」
ヨシも一緒だから、オリビィエ師匠は遠出はしないから、お弁当は無し! 帰って食べたら良いからね。
それに、やはり寒くなったので温かい食事の方が嬉しい。
ヨシは、薬草の本を全て暗記しているけど、それと現物を見極めるのは別物だ。
「ヨシ、魔力を目に集めて薬草を探すんだよ」
採取の方法は、まだ私の方が先輩だ。でも、見極めは負けそう。
「これ、どっちだったかな?」
よく似た薬草、嗅がないと区別できないけど、ヨシはできる。
「このくらいで良いだろう! 寒くなる前に帰ろう!」
少しお昼をまわったぐらいなので、木の家でお昼だ。
「ヨシは、薬草を洗ったら昼寝をしなさい」
「もう、昼寝なしでも大丈夫です!」
「ふふふ、師匠の命令だから、昼寝をしなさい!」
前より体力がついてきたヨシは、気をつけないと無理をする。
二人で薬草を洗ったら、干すのは私だけでする。
ここから、夕食の用意をするのだけど、きっと疲れて帰ってくるから、簡単に食べられる物にしよう!
お風呂は、短い昼寝から起きたヨシが沸かしてくれた。トレント狩りは、泥だらけになりやすいからね。
それに、日が陰りだしてから、グンと寒くなった。身体を温めて、熱々のシチューを食べさせてあげたい。
冬の支度は、バンズ村でも大変だったけど、アルカディアでは食事が豊かな分、手間も掛かる。でも、美味しい食事は諦めたくないから、頑張ろう!




