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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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三歳の冬

 ジミーと私の誕生日を自分で祝う。勿論、サリーやヨシのも祝ったよ。ヨナは春生まれなので、お祝いできるかな?


 マジックボックスに残しておいたドラゴンの肉で、豪華なパイを焼いた。それと、誕生日なのだからケーキもね! 


 生クリームは贅沢だけど、卵はあるから、ドライフルーツをいっぱいいれたキャロットケーキにしたよ。

 商隊から買った砂糖でアイシングを掛けて、涎が溢れそうなケーキになった。


 調理ストーブを作ってくれたルシウス師匠にも、キャロットケーキを持って行く。これで、やっと十個目! でも、これからもケーキを焼いたら、持って行くつもり。


 砂糖とかも買って渡してくれるからね。


「そうか、まだ三歳なのだなぁ」とオリビィエ師匠に言われちゃった。


 確かに、前世で三歳なら幼稚園の年少さんだ。でも、今の私は十歳ぐらいに見えるんじゃないかな? サリーなんか、十二歳ぐらいに見える。


 こちらの世界は子どもに厳しいので、人間の子どもも十歳ぐらいになったら働くのが多いそうだ。

 勿論、農家の子はもっと幼い頃から手伝うのが当たり前。


 それは森の人(エルフ)も同じだけど、狩人の村は三歳から若者小屋で親と離れて暮らしている。

 これも、光の魔法が使えるようになって、寿命が長くなったら変わっていくのかもね。


 アルカディアでは、五歳が幼児から子どもへと変わるみたい。学舎には二歳か三歳から通うけど、五歳になったら物見の塔での当番をしなくてはいけない。


 三歳の冬は、木の家(アビエスビラ)で賑やかに過ごした。流石に畑仕事は無理なので、その分、お勉強する時間が増えたんだ。


「ミク、光の魔法が上手く使えるようになったな」とメンター・マグスに褒められたのが嬉しい。


 サリーは、とっくに使えるようになっていたけど、後から来たヨナやジミーやヨシより早く覚えられたのにホッとしたよ。


 冬になっても火食い鳥(カセウェアリー)の世話はしなくてはいけない。

 餌をヨシ達に協力してもらって作ったけど、一日分は決めてあるんだ。それで足りなさそうな時は、森に行って木の枝などもやる。


 可哀想だけど、(キラービー)も冬場は過ごしにくいみたいで、死んだ(キラービー)火食い鳥(カセウェアリー)の餌にしている。


「小物の魔物なら餌にできる」


 口の重いジミーが発言するのは『狩りに行きたい!』という意味だ。


「狩りは苦手だけど……アルミラージぐらいなら……」


 オリビィエ師匠は、私の薬師の師匠の筈なのに、何故か狩りも積極的にさせたがる。

 うっ、そう言えば卒業試験はドラゴン討伐だったから、師匠としては狩りの訓練もアリなのかも。


 まぁ、こうして偶には狩りに行くのも修業になるのかもね。トホホ。


 ジミーやヨナの前で使うのは恥ずかしいけど、弓を背負って向かう。


 サリーもアリエル師匠に「行っておいで!」と追い出されたけど、本人は小物狩りには興味がないとソファーと仲良くしている。


 ヨシも、森歩きの訓練だと、オリビィエ師匠に連れて行かれた。ヨナは、寒いのに大丈夫なのか心配そうだけど、オリビィエ師匠は無理をさせたりしない。


「あっ、ヨシ! 枯れた薬草でも見つけたら採取してね。火食い鳥(カセウェアリー)は何でも食べるから」


 野生の火食い鳥(カセウェアリー)は、枯れた草や木の皮を食べて冬を過ごすのだ。まぁ、半分は他の魔物に食べられてしまいそうだけどね。


 木と木を移動しながら、森の奥を目指すけど、川の手前までだとオリビィエ師匠に言われているから、先行しているヨナとジミーもそれを守っている。


 ここでは、師匠の言うことを守らないと、命が簡単に無くなる世界だからね。ティーンエィジャーの理由なき反抗なんて、一瞬で死んじゃうよ。


 それは、狩りが大好きなジミーやヨナも分かっているから、小物狩りに集中する。


 オリビィエ師匠は、やはり遅れがちな私やサリーやヨシと一緒にいる。後の二人は、奥じゃ無ければ大丈夫だと信頼しているのだろう。


 少し悔しいけど、ヨシと二人だと不安なのも確かだ。


「サリーはもっと奥に行きたいんじゃないの?」


「良いの! あの狩り馬鹿とは一緒に行動したくないわ。それにトレントは十分に討伐したから」


 サリーは、私より狩りに向いた風の魔法が使える。それに弓も上手い。


「ふふふ、良かった! サリーと一緒なの楽しいんだ!」


 二人で手を取って笑いあうけど、オリビィエ師匠に「シッ」と叱られた。


 そこからは、真剣に魔物を探す。火食い鳥(カセウェアリー)を飢えさせる訳にはいかないからだ。


 良い肉の部分は、私たちで食べるけど、内臓とか、骨とかは、粉砕して脂身に混ぜたい。


 私は、アルミラージを二匹、サリーはアルミラージを一匹、エルクを一匹仕留めた。


 呼び笛が鳴ったので、オリビィエ師匠は二人が仕留めたエルクとビッグボアをマジックバッグに入れに向かった。


 笛って、魔物から逃れたい時だけじゃなく、獲物を持って帰る手伝いを呼ぶ時も使うんだね。


 小物狩りだけど、かなり肉が手に入った。脂身は、餌に混ぜるし、良い肉はステーキ、屑肉はハンバーグ、シチュー。内臓は焼いてから、乾燥させて餌に混ぜよう。


 私は、肉を中心に作業したけど、他の子は皮を鞣す遣り方も学んでいる。

 

 この日は、ビックボアのカツレツ! 脂身を少しの水で煮て、ラードもどきを使って、それでパン粉をつけたビッグボアをあげたんだ。


 ソースは、保存している水煮トマトと買ったスパイスで作ったよ。


「来年は、トマトをもっと植えなきゃいけない!」


 ピザソースに使い過ぎちゃった。お腹もいっぱいで満足なのに、アリエル師匠に「そろそろ肉まんかハンバーグ屋をした方が良いわよ」なんて言われちゃった。


「ミク、無理しなくても良いぞ!」とオリビィエ師匠は言ってくれるけど、お金も貯めたいから、皆で相談しよう。


 私の三回目の冬は、忙しくなりそう!


 


 


 

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