表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

14 カジノ潰し

14 カジノ潰し


「10億だっ! 10億だぁーーーーっ! ギャンブルの神様が、10億を当てたぞーっ!!」


 観衆のその一言に、ナキリンは紙のように真っ白になった。

 よろめきながらもルーレット台の上にあがると、


「い……いまのはナシ! いまのはナシじゃっ!

 ワシがクシャミをしたから、やりなおしじゃーーーーーーーーーっ!!」


「そんなの許されるかよ!」


「そうよそうよ! クシャミしてハズレてたら、やりなおししなかったクセに!」


「大人しく払えっ! 10億払えーーーーーっ!」


 そして巻き起こる『10億』コール。

 客たちはみんな僕の味方だった。


 客が説き伏せられないとわかったナキリンは、台の上で四つん這いになり、僕に耳打ちした。


「わ、若いの! 10億はさすがに言い過ぎじゃ!

 元の倍率の3億6千万を払うから、ここはひとつ……!」


 僕は首も振らずに即答する、「10億だ」と。


「そうそう、ワシは『ワールド・オーダー』のギルド員なんじゃ!

 お前さんもギルドに入れるように口利きしてやるから、ここはひとつ、3億ということで……!」


「しれっと6千値引くんじゃない。僕にとって『ワールド・オーダー』は1(エンダー)の価値もない」


「なんたる無礼な!?

 『ワールド・オーダー』を敵に回すということは、世界を敵に回すのと同じなんじゃぞ!」


「そうかな? まわりの客たちは、僕の味方のようだが。

 これだけ大勢の客の前で不払いなんてしたら、もうこのカジノには誰も来ないだろうね」


「ぐっ……! ちょ、調子に乗るなよっ、この若造がっ!」


「……負けてやろうか?」


 ナキリンの表情がコロリと一転、「えっ!? 本当ですか!?」


「ああ。キミが預かっている土地の権利書すべてと、5億(エンダー)

 それで手を打とう」


「け、権利書はダメだっ! あれがあったから、ワシは『ワールド・オーダー』に……!」


「権利書ナシなら10億だな。権利書かプラス5億か、好きなほうを選ぶといい

 僕の見立てでは、すべての権利書を換算しても5億には届かないと思うがね」


「ぐっ……ぐぬぬぬぬぬぅぅぅぅ~~~~~~~っ!!」


 歯茎から血が出そうなほどに奥歯を噛みしめるナキリン。


「それに権利書アリなら、ひとつオマケを付けよう。

 その権利書と5億を賭けて、もうひと勝負してやる」


「なに……?」


「ただし条件としては、いったん権利書と5億を僕に渡すんだ。

 そのかわりといっては何だが、勝負はキミが選んでいい。

 スロットでもルーレットでも、もちろんカードでも」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 小一時間後、僕はカードのテーブルに座っていた。


 周囲には熱狂冷めやらぬ観客たち。

 僕の対面には、普通のディーラーとはひと味違う、百戦錬磨の雰囲気を醸し出す人物が。


 そしてその隣には、腰巾着のようにナキリンがいた。


「ぐふふふふ、バカなヤツめ! このカジノには『カードキング』がいたんじゃよ!

 彼はカードにおいて、いちども敗れたことがないんじゃ!」


 『カードキング』は見事なカードさばきを披露しながら、アリでも見るような目で言う。


「本当に、この私に挑戦なさるおつもりですか? 若いのに、たいした度胸だ」

 あなたのような若き王子(ジャック)が、(キング)に挑むのはまだ早いと思いますがね」


 周囲の客たちは僕の味方だったが、この時ばかりは分が悪いと思っているようだった。


「まさかカードチャンピオンに挑戦するとは! 命知らずもいいとこだぜ!」


「前に挑戦したヤツは、1億も負けて破産したんだよな!」


「いくらあの兄ちゃんがツイてるからって、キング相手じゃケツの毛まで毟られるんじゃねぇか!?」


「みなさん、言わないであげてください。彼はまだ、自分が雛鳥であることを知らないんです」


 僕は、半笑いのチャンピオンに向かって言う。


「雛鳥といっても、鳳凰かもしれないよ?

 それじゃ、羽ばたくところをお見せしようか。いろんなものが()える、翼を……!」


 バッ! 両手を広げる。


万象(ネイト)! 真理(トゥルー)! 審判(ジャッジメント)

 天地開闢よりありし銀の月、その鱗粉満ちるところに我はあり!

 永久不変の月輪(がちりん)をもって、衆生の(いまし)めを解き放て!

 神智なる聖餐論(アカシック・レコード)!」


 物陰から飛び出した奴隷に襲いかかられたかのように、王は目をぱちくりさせる。

 僕はネズミに襲いかかる猫のように、妖しく微笑んだ。


「ウェルカム・トゥ・オーバーグラウンド……!」


「な……なんだかよくわかりませんけど、自信だけはたっぷりのようですね。

 それじゃ、カードを配りますよ」


 僕の前に、数枚のカードが滑り込んでくる。

 僕がカードに触ろうともしないので、キングはいぶかしがった。


「おや? カードを確認しないのですか? それとも、怖くなったとか?」


「いや、勝負にならないと思ったんだ」


「ふふ、今になって身の程を知るとは……でも、もう遅いですよ。

 運命のカードは配られました、あなたの言葉を借りるなら、これこそが真理(トゥルー)です」


「そうか、キミは真理(トゥルー)を望むのか、なら、遠慮はいらないな」


 僕は肘掛けがわりに使っていたステッキを持ち上げ、王に向かって突きつける。。


 ……ガッ!


 ステッキの曲がっているところで王の手首を絡め取り、捻りあげた。


「いだだだだっ!? なっ、なにをするんだ!?」


 次の瞬間、観衆たちは息を呑んでいた。

 僕がいきなりの暴挙に出たからではない。


 王の服の袖から、バラバラとカードがこぼれ落ちるのを目撃したからだ。

 僕は眼鏡をクイと直しながら微笑む。


「言っただろう? 『勝負にならない』って」


 僕はベットテーブルにあった土地の権利書と5億の小切手を、内ポケットにしまう。

 立ち上がり、魂が抜かれたようになっている観客たちの間をすり抜ける。


 背後から、怒声が爆発した。


「ふっ……ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」


「まさかキングがイカサマしてただなんて!」


「そうか、このカジノはインチキカジノだったんだ!」


「くそっ、どうりで最初はツイてるはずだぜ! このカジノではいつも、最後に大負けするんだ!」


「よくも今まで俺たち客を騙してくれたな!?」


「オーナーもディーラーも、みんなまとめてやっちまえーっ!」


「壊せっ、みんなブッ壊せーっ! こんなカジノ、ブッ潰してやるぅぅぅぅーーーーーーっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ