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厨二病棟の夜  作者: 東京 澪音
3/4

夜を司る者

マーリンに手を取られ205号室を出ると、階段で一階まで下りる。


「覚えておいた方がいい場所から案内しますね。一階は所謂カリキュラム的な教育・学習支援をする部屋が殆どです。多分、最初に案内されたのが中央のカウンセラー室だったと思います。基本的に、一日に一度はカウンセリングがあります。他にも診察室的なものや検査室的なものもありますが、この病棟のメインは教育と言う名の洗脳だと私達は考えています。能力者・異能者、呼び方は様々ですが、力の小さい者から私達の様な強大な力の持ち主まで一括管理する。それがここ厨二病棟なんです。」


洗脳!?

その言葉で得心がいった。何故、あのチェイサーが我を捕縛したのか。


確かに人間からすれば我らは恐怖の対象となる。しかし力を封じ込め、人間界に住む住人達と同じ様に教育を施し洗脳してしまえばその恐怖と危険リスクは低くなる。


しかし分からない事もある。

ヤツラの言う、厨二病とは何なのか?


「マーリン、我は人間界の事がよく解らないうえ質問したいのだが、厨二病とはどういう意味だ?暗号か何かか?」


クスクスと笑いながらもマーリンは丁寧に質問に答えてくれる。


「厨二病。中二病とも言います。この国の教育制度における中学二年生頃の思春期に見られる背伸びしがちな言動を自虐する語です。また、身の丈に合わない壮大すぎる設定や、仰々しすぎる世界観を持った者を、この国では厨二病と呼ぶそうです。ちなみに私達を捕縛した人曰く、205号室に集められる人達、つまり私達のような能力者の事を邪気眼系中二病患者と呼ぶそうです。本来は治療を必要とする医学的な意味での病気ではないので、治療の必要はないらしいのですが、傍から見てあまりにも痛々しすぎる対象については、この病棟に保護されるそうです。これがこの世界で言う所の厨二病と言う訳です。」


思春期に見られる言動何かと一緒にするとは。

人間とは浅はかな生き物だな。


「要するに、厨二病とはさしずめ隠語。つまり我々と言う脅威を民衆から遠ざける為のモノと解釈していい訳だな。」


そんな話をマーリンとしていると、何処かで聞き耳でも立てていたのか?白衣を身に纏った女が突然話に割って入って来た。


「いかにも。的な事をさっきから二人で話してるけど全然違うわ。まぁ、厨二病の件は概ねあっているけど、異能だの能力者だのについてはあなた達の思い違いよ。そんなものこの世に存在しないわ。いい、二人とも。この世界にはそんなおとぎ話的なものは存在しないの。あなた達のソレは一種の思い込みで、世間ではそれをパラノイアと言うわ。そしてここはそう言った人達を治療する施設なの。ところで、二人はこんなところで何してるの?」


よく分からな小難しい事を言いながら、腕組みして我らを見る。


「今日205号室に入って来た悪鬼羅刹さんを案内している所ですが、なにか?」

どこか少し不機嫌そうにマーリンは答える。


「そう。でも先程の話を聞いた限りじゃ、まともにこの施設内を案内できるとは思えないわ。いいでしょう。私も同行します。」


マーリンは益々不機嫌そうな顔になったが、それ以上何も言う事はなかった。


「あなた、吉田英雄君だったかしら?私は冴木さえき 晴美はるみあなた達を指導する謂わば先生的な事をしているわ。よろしくね。さて、ざっと一階施設の案内をします。カウンセリング的なものの他、診療・検査・個別指導室が設けられています。特に2階の人達はその殆どが個別で一階指導室をマンツーマンで使います。外にはグランドと体育館。適度に身体を動かす事も必要と考え、プールも完備しているわ。では二階に行きましょう。」


冴木何某の後について歩いて行く途中、マーリンが小声で話しかけて来た。


「羅刹さん、この冴木 晴美と原 理恵には注意して。冴木晴美。通称ザフキエル、神の番人。この施設内でそれなりに権力を持っているわ。それと原理恵。通称、ハラリエル。警告の天使と言われていて、容赦なく私達を洗脳しようとしてきます。その他にも、この施設内には一癖も二癖もある者達で溢れています。気を抜いたが最後、完全にアイデンティティを消去されてしまいます。ここはそう言う場所ですから、十分気をつけてください。」


その言葉に頷きながら、冴木の後ろを歩く。


「ここは説明する必要はあまりないでしょうけど、職員の詰め所、準備室、リラクゼーション室、そしてあなた達の205号室。その他としては他の病院と然程変わらない、入浴室やトイレ、給湯室なんかもあるわ。ちなみに食事は各階に設けられている談話室でとります。食事・入浴時間については後で同室の人達に聞いてちょうだい。じゃ、三階に行くわ。」


中央に位置する階段を三階に向かって登って行く。


「この施設は上に言えば行くほど厨二病の症状が少ない者が共同生活している。三階は主に妄言を話す者がメインの階だな。施設的には音楽室や図書室的なものもこの階にはある。それと看護婦が常に在中しているのが特徴だ。」


妄言?つまり言葉を司る異能者が集められし階と言う訳だ。


「妄言と言ったが、それはどう言う類のものなのだ?」


冴木に向かってそう質問すると、冴木は少しだけ笑ってこう答える。


「そうね、あなたに分かりやすく言うならば、呪文的なものだったり、預言的なものだったりかしら?私達から言わせれば、その全ては妄言以外の何者でもないわ。口で説明するより、実際に話してみたらどうかしら?」


そう言うと我らを301号室に誘う。

冴木はドアをノックして301号室に入る。室内は我らの住む205号室と同じ広さ。しかし明らかに違うところが。ベットが一つしかないのだ。部屋の中央に置かれたベットに腰掛ける少女。


少女と言っても我と然程変わりはない。


「璃々須さん。こちら205号室に入った吉田君。あなたとお話したいんだって。」


そう冴木が告げると、リリスと呼ばれる少女は我を見て話しかけてくる。


「私はリリス。夜を司る者。知を司る者・未来を見る力を持つ者・魔の言霊を操りし者・全てを切り裂く力を持つ者、そしてその者達を統べる者。私の住む世界が滅びに瀕しています。私はこの世界に救いを求めやってきました。貴方がもし力を有する者ならば私の言葉に耳を傾けて。」


それだけ呟くと、視線を窓の遠くに移してしまう。


「我は悪鬼羅刹。その願いに報いる対価は?」


我の質問にもう一度だけ視線を戻す。


「望みのままに。」


漆黒の瞳で見つめるその先に何を見ているのか?

我の力をもってしても、ソレを解明するまでには至らなかった。


「あまり長居しても璃々須さんを疲れさせてしまうだけでわ。出ましょう。璃々須さん、またね。」

冴木はそう告げると我らを連れて外へ出た。


「理解した?妄言て言うのはああいう事。特に彼女に関しては同じ事を何度も何度も呟くの。さっきも話した通り、ここの階はこう言った事を話す子達が集められている。4階に関しては症状が軽い人達が共同生活していて、その辺の学校と変らない環境でカリキュラムが進められているわ。他者との接し方なんかがメインね。まぁ、案内する程でもないからここは省くけど、これが大まかな施設内の案内になるわ。分かったかしら?それじゃ、私はこの辺でお暇するけど、生活に関しての細かい事は田中さん達にでも聞いて、早くこの施設に馴れる様にね。」


そう告げると、右手をひらひらさせて階段を下りて行った。


「璃々須さんの言葉、少し気になりますね。では、私達も一度部屋に戻りましょうか。多分、兄さんも戻ってきていると思いますので、入浴室や設備の使い方に関してはその時にでもご説明しますね。」


マーリンもリリスの言葉が気になるようだった。

もう一度だけ301号室の窓から部屋の中を見ると、ただ佇んで遠くを見つめる少女の姿がポツリとあるだけだった。



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