ケース2:緊縛フェチ
佐藤詩織はいたって真面目なOLだ。
都内勤務で25歳、高校卒業から務めている会社では既に中堅社員だ。
そんな彼女にはある秘密があった。
それは緊縛フェチである事。
佐藤の柔らかな肌に容赦なく食い込む縄の感触とその逆らえなさ、
そして誰かに見つかれば終わりだと言うスリル。
まだ若い彼女はそうした刺激を求めて、あらゆる場所で自らを縛り
自撮りまで行うほどに性癖を極めていた。
(あー、仕事ダルいなぁ。早く終わって縛られたい。って言うか縛りたい。
自分で自分を縛るのって何気にテクがいるんだよね。
だけど緊縛師とかもいるけど、信用出来ないんだよなぁ。
身動き取れなくなったら襲って来たりするんでしょ?
やっぱり私は自縄自縛が性に合ってるや。)
そんな事を考えながらPCをカタカタと打っている彼女は、
カバンの中に既に縄を用意している。
ちなみに彼女の仕事は銀行での事務処理だ。
(あー、もうすぐ窓口が閉まるなぁ。
まぁでもそこからの処理が本番って言うか…。
皆に見えない所からの仕事が意外とキツいんだよね~、
さて、もうひと頑張りしますか~。)
そんな時、突然銀行のドアが激しく開かれた。
すると黒い服に身を包んだ覆面の男達数人が侵入して来た。
『銀行強盗だ。オラ、手を挙げろ。命だけは助けてやるよ。』
・・・最悪だった。
せっかく性癖を満たす事を妄想していたのに、この事態。
佐藤は強盗に関しては所長や警察が何とかするとタカをくくり、
性癖を満たす時間が取れ無さそうである事についてを嘆いた。
(うわ、最悪じゃん~、絶対に警察からの聞き取りとかあるし、
そんなの対応してたら緊縛出来ないじゃん~)
しかし、男達の狙いはATMや店舗内保管の金銭だけでは無く、
個人の財布にまで及んでいた。
『オラ、コイツらの財布の中も調べろ。』
リーダー格の男がそう言うと、下っ端が片っ端から
行員達のカバンを漁り始めた。
(え、何それ・・・?って言うか、ヤバくない?)
行為は用意周到に素早く行われ、ついには佐藤のカバンにまで
強盗達の手が伸びて来た。
(お願い、上手くバレないでいて!!)
しかし佐藤の願い虚しく、カバンの中に忍ばせた縄がバレてしまう。
『ん、…何だ、コレ。…縄?』
するとリーダー格の男がニヤリと笑った。
『へぇ、お前もしかして、緊縛フェチか?』
まさかの一発での性癖を当てられた事により、佐藤の脳内は混乱した。
そして、あろう事か正直に答えてしまった。
「ハイ…、本当は仕事の後、自分で自分を縛ろうと思いまして…。
だけどこんな強盗事件の後では絶対に時間が取れないし、
残念ながら今日は妄想オナニーするしか無いと思ってます…。」
あまりに正直過ぎる受け答えに、強盗は拍子抜けしてしまう。
『お前…。
フ、まぁ良い。都合が良いぜ。それなら、同僚達を縛れ。』
「え?どうして、私が?」
『縛られるのが好きなようだが、もしかしたら縛る才能があるかもだろ。
言っておくがオレは緊縛師だ。中途半端な縛り方をするようなら、
お前のその年季の入ったくっせぇ縄を取り上げるからな。』
バレていた。この縄は佐藤の様々な体液が染み込んでおり、
非常に恥ずかしい一本に仕上がっていたのだ。
それを佐藤自身も非常に楽しんでおり、この縄を取り上げられる事は
生理の時に生理用品が無いくらいに辛い事だった。
「え、それは困ります…わかりました、縛ってみます。
だけど人を縛るのは初めてだから、多めに見て下さい。」
『ダメだ。あくまでプロ目線で見させてもらう。
さぁ、サッサと早くしろ!お前の性癖のせいで、
コイツら皆同僚から縛られるんだぞ!!』
強盗の言った理由は、佐藤が早く縛る必要性とは全く無関係だった。
佐藤は観念し、カバンから縄を取り出す。
むわぁっと、佐藤の染みついた体液の匂いが香り立った。
『くせぇな。』
「長年愛用してますから。」
佐藤は臆する事無く冷静に答えを返した。
『ヘッヘ、良いじゃねぇか。
それじゃあまずは、お前の直接の上司はどいつだ?』
「この人、高田所長です。」
『よし、じゃあまずはそいつを縛れ。』
「…わかりました。」
強盗に言われるがまま、佐藤は所長を縛り始めた。
「すみません、所長。
絶対に逃げられない縛り方をさせて頂きますね。」
こうして高田は佐藤により丁寧に縛られ始めてしまう。
「さ、佐藤君…。キミにまさかこんな性癖があったなんてな。
だけど心苦しかろう。私は大丈夫だ。思う存分、縛ると良い。
その方がアイツらは満足するだろうからね。」
心強い言葉だった。
佐藤は言われるがまま、強く高田を縛った。
そうして、ついに完璧な脱出不可能の緊縛が完成した。
「所長、苦しくないですか?」
しかし、高田は口の所に結んだ縄が玉状になっており喋れない。
フガフガと言葉にならない言葉を喋る高田は見るからに苦しそうだった。
「あぁ、所長すみません…。だけどきっとこうする方が、
強盗達は早く満足するでしょうから…。
アレ?だけど私は縄を一本しか持っていないのに、
どうやって全員を縛らせるの?」
そんな単純な疑問にやっと佐藤が気付いた時だった。
強盗が高田の背中に向けてゴルフクラブを強く打ち付けた。
━バシィッ!!━
「む、むぐぅ~!?」
痛みにのたうつ高田だったが、縛られており動けない。
その目は既に降伏してしまっていた。
『ヘッヘッヘ。ようやくのろまなお前達でも気付いたか。
そうだよ、この緊縛好きの変態女のせいでお前達は縛られて
抵抗する事も出来ずに殺されて行くんだよ。
ヘッヘッヘ、さぁ次は顔面を直接狙うかな?』
高田の目が見開かれ、首を横に振ろうとするが頭が動かせない。
「や、やめて…そんな事をする為に所長を縛ったんじゃないわ...。」
『ハァ?緊縛なんてお仕置きの為にあるんだろうがよ。
こんな大金を自分達だけでがめつく独占しようとしてるヤツらに
お仕置きの正義の鉄槌を下すための緊縛だぜ、ハッハッハ。』
佐藤は自らの性癖がバレてしまった事をひどく後悔した。
もし自分の縄が見つからなければこんな事にはならなかった。
どうしよう、もう強盗達は自分を緊縛役として見なしている。
「・・・めて。」
『ん、何だどうした?お前の性癖は既に情報漏洩してるんだよ(笑)
今更もう、止めろとは言わせねぇぜ?』
「所長を殴るのは止めて。代わりに私が縛られてあげるから。
あなた、緊縛師なんでしょ?」
『へぇ?お前みたいな若い女を縛れるんなら遠慮はしねぇぜ。
よし、わかった。縄を解いてやれ。』
佐藤はホッとして、高田の縄を解いた。
「所長、すみません...。」
「なぁに、少し怖かったが、結果として皆まだ無事だ。
だけど佐藤君、キミが縛られて…そんな事をしたらキミは…」
「所長、大丈夫です。今はただ、見守っていて下さい。」
「あぁ、ありがとう。あ、それと…縄にこびりついた匂い、最高だったよ」
最後にいらぬセクハラ紛いの言葉を残し、所長は再び大人しくなった。
『さぁて、それじゃあ緊縛師として最高の作品を作るぜ?』
「どうぞ。だけどこんなくっさい縄で縛らされるとか、貴方も可哀そうね」
『ハァ?いやいや、女の発情した良い匂いじゃねぇか。』
「貴方には、緊縛師としてのプライドが無いのね。
普通なら、自分の使いこんだ縄で縛るものでしょう。」
『ハッ、好きに言ってろ。さぁ、縛るぜ?』
そして強盗団のリーダーは丁寧に佐藤を縛り始めた。
途中でわざとらしく性器を何度も擦ったりして、
その度に佐藤は「んっ...」と恥ずかし気に身を捩らせた。
そして30分。ついに佐藤は完全に縛られていた。
『ヘッヘッヘ、最高の芸術作品が出来たぜ。写メ撮りてぇなぁ。
まぁ、スマホは止められてるから持ってねぇけどよ。』
そう言うと、強盗はゴルフクラブを手に握った。
『さぁ、それじゃあ思い切りやらせて貰うぜ?』
「せめて一発で逝かせて。女の子の最後のお願い、聞いてくれるでしょ」
『おっけー、わかったぜー!!』
そう言うと、強盗リーダーは思い切りゴルフクラブを振った。
━ガッキィィィィィーーーーン!!!!!!!!!!!━
強く鉄を打つ音。・・・鉄?
何と佐藤は、瞬時に縄を抜けてゴルフクラブを避けていたのだ。
そして強盗は佐藤の後ろにあった鉄の柱を思い切り打ち付けてしまった。
『痛ってぇーーーーー!!!!!!!!!!!!』
思わずゴルフクラブを手放してしまう強盗リーダー。
佐藤はそれをすぐに奪い取り、高田に渡す。
「所長、コレを!!」
「ん?あ、あぁ、ありがとう佐藤君。」
高田はそれを思い切り強盗リーダーの頭目掛けて打ち付けた。
強盗リーダーは抵抗出来ない状態のまま、気絶させられた。
更に佐藤が行員達に言った。
「皆さん、どんなやり方でも良いので強盗達を押さえつけて!!
そんなに長い時間は要りません。私が緊縛します!!」
すると2人いた強盗達は逃げ出そうとするが、それを男性行員達が
覆いかぶさり佐藤を待った。佐藤は適当な強度の紐を手に取った。
「さぁ、縛るわよ!!」
あっという間に佐藤の手により強盗達は後ろ手に縛られてしまった。
そして最後に強盗団リーダーは佐藤の縄で縛られた。
『ん...んう?アレ、オレは一体何をして…』
気絶から目が覚めた強盗リーダーの鼻に付いたのはメスの匂いだった。
『クセッ!!…いや、女の発情した匂い?逆に興奮すんゾ、コレ。』
強盗団のリーダーに向けて佐藤が言い放った。
「やっぱり、何のプライドも無い緊縛師だったようね。
普通、緊縛師は自らの縄の特性やこなれ具合を把握しているもの。
だから私は私の縄の特性を良く知っていたわ。
それで、どう身を捩れば良いのか、どう縛られれば抜けられるか
自分の縄の事くらい、自分が一番よく知ってるからね。」
『グッ…負けたよ。こんなハイレベルな緊縛師がいたなんてな。』
「勘違いしないで頂戴。私は単なる縛られフェチよ。
ただ、自らを縛る上で当然の経験と知識を持っていただけよ。
逆に、私の性癖を情報漏洩してくれてありがとう。
皆を助ける事が出来たわ。」
こうして、佐藤の活躍により銀行強盗達は捕らえられた。
事情聴取により時間を奪われるかに思われたが、
高田の計らいにより佐藤は定時退社を許された。
その後警察からは佐藤の居場所を聞かれたが、明日にしてくれ、
と伝えたのだった。
そして一方佐藤は、自宅に帰る前に人気の無い河川敷に居た。
「あぁ、最高に興奮するわ、こんな場所で緊縛なんて…。
あれ、この縄、強盗の匂いは付かないように気を付けたけど、
別のオスの匂いがするわね…あぁコレは、所長のだわ。
しかも興奮した時の匂いね。フフ、所長ったら私に縛られて興奮して。
今度、誘ってあげようかしらね。
でもその前に今は、このピンチを楽しみ切りましょう。」
こうして佐藤は後に高田の妻との間に別れさせ屋を雇い、
二人の間の子供の養育権を元妻に丸投げした上で、高田と結ばれた。
そして二人は緊縛夫婦として行内でも有名な変態夫婦となったのだった。




