第1話「TSマサトとのショッピングデート」
*
※前回の『オレガ・マギカ』!
緑川博士の好意から、俺、黒霧優人が〈マジョリティブラック〉に変身するためのアイテム〈マギアコンパクト〉にだけ新たな機能であるTSモード、つまり、魔法少女じゃない普通の女子に変身するための機能が追加された!
このモードを巡って、俺の幼馴染である白瀬麻里達と、高校に入って知り合った焔優武達との間で、激しいバトルが繰り広げることになってしまった!?
どうなる俺の貞操!?
*
ひょんなことから魔法少女に変身出来るようになってしまった俺が通う事になった第12魔法都市魔法師育成学園高等部(通称12魔高)は、基本的に全寮制だ。
しかし外出そのものは禁止されておらず、放課後には街に遊びに出る者も多い(ただし、門限は平日土日祝日関係なく20時と決まっている。高校生以上は成年扱いされる時代とはいえ、学生である以上、外での夜遊びは推奨されていない)。
そんな放課後の街中に、TSモードで女子になった俺とマリ、そしてユウとユウの保護者である彼の姉(双子では無いが同学年の姉)焔優依の四人はいた。
何故メンバーがこの四人なのかと言うと、あまり大人数で街を歩くのは目立ち過ぎるということでジャンケンで決めたようだ。
正確にはジャンケンでマリとユウが勝利したが、マリだけではユウの暴走を抑えきれないということでユイにも付いてきてもらったというわけだ。
ちなみに、四人とも学校指定の制服を着ている。
男子であるユウはオーソドックスな学ラン、女子であるマリとユイはシンプルなデザインのセーラー服だ。
これらの制服はかつて平成と呼ばれていた時代よりもさらに前、昭和と呼ばれていた時代に主流だったものらしく、シホ学園長の一存でこの昭和レトロな制服に決まったらしい。
しかし、派手な制服が増えてきているこのご時世においては、逆にこのシンプルなデザインの制服の受けがよく、魔法師の卵である生徒達からの人気も高く、この制服を着るためにわざわざ面倒な手続きをしてまで第12魔法都市に引っ越してくる者もいるそうだ。
そして、当然ながら俺もマリ達と同じセーラー服姿である。
これはTSモードにおいてデフォルト設定された服のようで、別の服に着替えた後に一度TSモードを解除し、再びTSモードを起動すれば着替えた服になるという仕組みらしい。
これは魔法少女への変身と同じ仕組みで、変身前の服がマギアコンパクト内に収納され、逆にマギアコンパクト内に収納されていた服が全身に着用されることで変身が完了する、という仕組みになっているためだ。
閑話休題。
そんな制服姿の俺達四人がやって来たのは、八幡東区にあるスペースOUTLET北九州だ。
ここにはかつて平成と呼ばれていた時代にスペースワールドという宇宙をモチーフとしたテーマパークがあったが、それが無くなり、令和と呼ばれていた時代にジアウトレット北九州というアウトレットモールに変わり、その後も何度か名前を変えて今に至っている。
「それで!?まずは何処に行くんだ!?アパレルショップか!?それともランジェリーショップか!?」
「はいはい、ユウ君落ち着こうねー!」
さっきから興奮冷めやらないユウと、ユウを羽交い締めにしながら歩くユイ。
「というか、めちゃくちゃ目立っとーやん…」
「他人のフリしよ、他人のフリ…」
大人数では目立つからと少人数で来たのにこれでは意味が無い…
「なんかゴメンね、ウチの弟がこんなで…」
「いや、ユイは悪くねぇよ。
むしろ、ユウの暴走を最小限に止めてもらえて助かる…」
「本当、ユウちゃんがジャンケンなんか言い出すけんこうなったとよ…、ジャンケンやなくてくじ引きなら、どうとでも出来たのに…」
ちなみにマリの言うユウちゃんとは、赤城結都のことだ。
TSモードを巡って、誰が女子化した俺とデートに行くかでかなり揉めることになった(TSモードで外出したくないという俺の意見は華麗に無視された)。
そこでユウトが「こうなったら正々堂々、ジャンケンで決めるっちゃん!」と言い出したため、ジャンケンをした結果こうなった。
「くじやったらやり方次第で焔君は除外出来たのに…」
「そんな堂々と不正宣言せんでも…」
「おっ!マサト!あそこの店なんかどうだ!?めっちゃカワイイ服あるぞ!!あれ絶対ぇマサトに似合うってっ!!」
「くっ…!?今日のユウ君、力強っ!?全然止まらない…っ!?」
そんな中、姉に羽交い締めにされていることすら気付いていないのか、ひたすらテンション高めなユウ。
対してマリは努めて冷静にこう返した。
「そっちもいいけど、平日の放課後は時間が限られとーけん、今日はまずマサト君の下着から揃えるの!サイズに合った下着を着けんと形とか崩れるけんね」
「…!なるほど、それは確かに!せっかくのマサトの美巨乳が合わない下着のせいで崩れるのは勿体無ぇもんな!」
「下着って…、今俺が着けとるデフォのやつじゃいかんと?」
マギアコンパクトによる変身で凄いのは服だけでなく下着まで変わることだ。
魔法少女の時は動きやすさとか防御面とかでインナーシャツみたいなものが装着されるが、TSモードの今はスポーツブラのようなものに変わっている。
下はよく分からないが、多分魔法少女の時も今も履いているのはよくある普通のパンツなんだと思う。
自分の体とはいえ、女子の体をそんなにジロジロ観察出来るほど経験を積んでいないので、よく見ていないというのが正直なところだ。
「駄目に決まっとーやん!あのね、マサト君!女の子の下着を舐めたらいかんとよ!?いい?成長期の女の子の身体を優しく守りつつ、かつ意中の男の子を一撃で落とす最終兵器!それがランジェリーなんよ!」
「お…、おう!」
「肌を露出させるだけなら水着と大差無いなんて言う人もおるけど、下着はそうや無いんよ!
水着は絶対に見えないし外れんことが大前提やけど、下着は見えそうで見えないその気になれば外せると、全くの対極にある存在!
やけん女の子は服以上に下着のお洒落にこだわる!特に好きな人の前やとね!」
「は、はぁ…?」
「そもそも下着とは古来より…、ぶつぶつ………、」
いつになく情熱的で饒舌なマリ。
いきなり始まった女子の下着の熱語りはなおも続くが、後半以降の語りは早口なのもあってほとんど頭に入ってこなかった。
マリにもこんな一面があったんだな…
勿論、個人差はあるんだろうが女子の下着が女子にとってはとても大事であることは分かった。
しかし、だからといって男(身体は女子だが)の俺がランジェリーショップに入るのは気が引ける…
ユウはどんな感じだろうかとチラリとユウに視線を向けると、先程までやたらテンション高かったにも関わらず落ち着いた口調でこう言った。
「あぁ、安心してくれ!俺は紳士だからな!さすがにランジェリーショップの中までは入っていかないさ!」
「紳士はあまり人前でおっぱいおっぱい言わないんやけどな」
「その代わり!寮に帰ったら、買った下着を着けて見せてくれよな!」
「誰が見せるか!何処が紳士だよ!」
「ははは!冗談だよ!そういうのはタイミングがあるからな、今じゃないことくらい分かってるさ!」
「よう分かっとーけど、分かっとらんな!?今にも後にもお前に見せる下着なんてねぇけんな!?」
「あぁ…っ!!美巨乳美少女から浴びる罵声…っ!!良いっ!!最高だっ!!もっと!もっと叱ってくれ!!」
「ひぃっ!?」
しまった!?
コイツは真正のドM野郎(ただし相手は美巨乳女子に限る)なんだった!!
さすがに身の危険を感じた俺は逃げ出そうとしたのだが、その前にユイが対応してくれた。
「いい加減にしぃっ!!」
「おっぱい!?」
ユイがユウの正面に回り込みその豊満な胸でユウの頭を挟むと、くきっ!とその頭を180度回転させてユウを物理的に黙らせてしまった。
いや待て!?さすがにそれはさすがのユウも死んでしまうのでは!?
…と思ったが、姉のおっぱいに挟まれたことがそんなに嬉しかったのか、「ふへへ…、おっぱい…、お姉ちゃんのおっぱい……♥」と幸せそうな寝言を言っていたので問題は無さそうだ。
「はい、これでしばらくは大人しいハズ。じゃあマリちゃん、マサトさん、あたし達のことは気にせずデート楽しんできてね!」
「う、うん、分かった!」
「お、おう…」
そんな感じで、焔姉弟をその場に残して俺達はランジェリーショップへと向かうのだった。
*
ここ、スペースOUTLET北九州は若者や家族向けのショッピング施設や遊具施設などが多く入っている。
アパレルショップも数店舗あるが、アウトレットモールであるため高級ブランドを扱っている店よりも比較的カジュアルな店が圧倒的に多い。
まぁ高級ブランド店が少ないのはここに限らず、世界的にそういった傾向にあるためというのも大きい。
というのも、いつ魔獣や魔物などに襲われるか分からないようなこのご時世に、高級ブランドで着飾って街中を歩く余裕なんて無いからだ。
故に、そういったファッションやアクセサリーは本当にごくごく一部の富裕層が、そうした集まりでのみ身に付けたりするもので、普段は持ち歩かないものという風に世間の常識が変わってきているのだ(昔ながらの学ランやセーラー服がいいとされているのもそうした世間の常識の変化によるものだ)。
そんなスペースOUTLET北九州にある女性向けのランジェリーショップへとやって来た俺とマリ。
「さ、マサト君!行こっか!」
「ま、マジで入ると…?俺は外で待っとくけん、俺のサイズに合うヤツをマリが買ってくるだけじゃいかんと?」
「駄目だよ!サイズと一口にいってもアンダーのサイズで合わなかったりとかあるけん、こういうのは実際に試着してみて決めんと意味が無いっちゃん!」
「し、試着出来ると!?下着を!?」
「うん、少なくともこのお店は出来るよ?お店によっては出来んとことかもあるみたいやけどね」
ちょっとしたカルチャーショックだった。
男は下着を買う際に試着なんてしないし、そもそもサイズもSかMかLかみたいな感じで大雑把にしか見ていない。
改めて女子って大変なんだな〜…と感じるのだった。
そして、その大変さをこの後実感することとなる……
「じゃあ、まずはサイズ測定からね」
目のやり場に困りながらマリに連れて来られたのは、カーテンで区切られた個室の内の一つだった。
この個室は一昔前で言う試着室というものにあたる。
現在、基本的にはAI管理された無人店舗がほとんどで、このランジェリーショップもその例に漏れず無人だった。
会計は商品を持った状態で出入口のゲートを通ることで、自動的にICカードから金額が引かれるシステムとなっている。
そして、ここからはアパレルショップなど特有のサービスになるのだが、各店舗にはカーテンで仕切られた個室がいくつも用意されている。
この中では客が自由に服を試着出来るし、何なら商品の服を着たまま店舗を出ることも出来る(店を出るには出入口のゲートを必ず通ることになるので、店を出ることで会計は自動で済まされるというわけだ)。
また、それ以外にも体のサイズを測るためのメジャーなどの器具や、商品在庫を調べて、その商品を実際に個室内へと『転移』させる魔法機能付きパソコンも置かれている。
さらに、全自動裾上げ機なる機械も設置されており、どの程度裾上げしたいかといったデータを入力して機械に投入するだけで、裾上げしてもらえるというサービスまである(別途料金が必要にはなるが)。
そんな個室にマリと入った俺は、制服を脱がされて(男の時は下着姿を見られても平気だったが、女子の時は恥ずかしいと思ってしまうのは何故なのか?)、マリにされるがままにバストやヒップ、股下などのサイズを事細かに測定された。
詳細は省かせてもらうが、測定の際にメジャーがどうしても敏感な部分に触れてしまうため、サイズ測定の段階ですでにヘトヘトになってしまった……
「えっとー、身長は165cmで、スリーサイズが上から97、56、85か…、身長は男の子の時より少し縮んどるんやね。それにしてもおっぱい大きか〜…、私より大きいとか反則やろもん…
後はアンダーのサイズと股下のサイズに、肩幅とそれから〜………、よし!これでオッケー!後は、このデータを元に在庫検索かけて……、ふむふむ、こんな感じか…、それじゃあこれとこれとこれと…、」
マリがモニターを見ながら画面をタッチして操作し、いくつか商品を見繕って商品を取り寄せた。
それらの魔法で取り寄せられた女性物の下着を手に持ち、マリが笑顔でこう言った。
「さ、マサト君♥お着替えの時間だよ♥」
その後およそ一時間に渡って、俺はマリの着せ替え人形にされるのだった……
*
「お!マサト、マリ!早かったな!」
大量の紙袋を抱えてランジェリーショップを出た俺とマリは、ユイ達と決めた待ち合わせ場所に向かうと、そこには同じく大量の紙袋を持ったユウとユイが待っていた。
「早かったか…?いや、それよりもユウ達のその荷物は何なん?」
俺が尋ねると、ユウはにっこりと笑って(悔しいがイケメンのせいで様になっている…!)こう答えた。
「ああ!これはマサトの服だ!あ、勿論今のお前の服だから安心してくれ!」
「それの何処に安心する要素が!?つーか、俺の服っていつの間に…!?」
「実はユイちゃんに私が頼んで、ユイちゃんのセンスで色々選んでもらっとったんよ!」
「ふふん!これからの夏コーデは勿論、水着なんかもバッチリ選んでおいたよっ!!」
と、ユイが袋の中からチラリと見せてくれたのは、ノースリーブのワンピースや際どいビキニ水着のトップスだった。
「本当は試着とかしながら色々見て回りたかったんやけど、放課後はあんま時間無いけんね!私達が下着選んどる間にその他の服とかをユイちゃん達に選んでもらっとったんよ!」
「はぁっ!?いや、服はまだしも水着って!?さっき散々サイズがどうこう言っとったのに!?」
「その辺も抜かりは無いよ!さっきのランジェリーショップで測定したマサト君のサイズをユイちゃんのスマホに送って、そのサイズに合った水着とかを買ってもらっとるけん、バッチリ合うハズっちゃん!」
このご時世、服は正確なサイズさえ分かってしまえば、後は魔法科学技術で作られた精密なAIが選定してくれるし、通販サイトであれば実際にそれらを着用したイメージ画像なんかもAI生成してくれるため、実店舗に行ってわざわざ試着する必要はほとんど無い。
それでも実店舗の需要があるのは、様々な店を実際に見て歩くライブ感とか、実際の商品の触り心地とか着心地とか、そういった商品を購入する以外の価値観を享受するためだ。
だから、さっきのランジェリーショップでも、下着を買うだけならわざわざ試着する必要性は無かったわけなのだが、今回に限っては男の俺にとって未知の女子の下着の付け方とかを習うという点では意味があったし、なんだかんだ楽しそうなマリの表情を見れて楽しかった(その分色んな意味で疲れたが…)。
そして、今また目の前には焔姉弟の購入した服やら水着やらがある…
「そっか…、なるほどな〜、わざわざ俺のために悪いな!えっと、お金は後で払うけんとりあえず寮に帰るか!門限も近いしな!」
俺は、次の展開を予想して一刻も早くこのスペースOUTLET北九州を離れるべくそう提案したのだが、
「何言いよーと、マサト君?」
「マサトさん!まずはこの買った服の試着をして行かないとっ!!」
「そうだぜマサト!このアウトレットモール内で買った商品なら、店の個室何処でも試着出来るし、それで合わんかったりしたらモールから出らん限りは返品もきくからな!」
ユウの言う通り、スペースOUTLET北九州内で購入した商品は、モール施設から出ない限りは返品が可能だ。
こういった点もある意味実店舗、特に複数の店舗が入った施設における利点のようなもので、通販サイトなどで購入した商品に関しては余程の事がない限り返品は基本受け付けていない。
「い、いやー、俺は二人のセンスを信用しとるけん試着は大丈夫かなって!そ、それより門限が、」
「時間はまだあるっちゃ!」
「そうそう!それよりもマサトさんの意見が直接聞きたいんですっ!!」
「つーか俺らの選んだ服を着たマサトが見たいっ!!」
鼻息荒く目を血走らせた三人に詰め寄られた結果、俺は門限ギリギリまで三人の着せ替え人形にされるのだった……
*
「ふぅー!満足満足っ!」
「ああ…!マサト、とんでもなく尊かった…!俺が生まれてきた意味はここにあったんだな……!」
散々着せ替え人形にされてゲッソリする俺とは対照的に、目をキラキラさせてツヤツヤした表情のマリとユウ。
「うん!ユウトちゃん達には悪いけど、なんかあたしも得しちゃった気分♪」
一方、ユウの保護者として付き添いで来ることになったユイも非常に満足気な表情をしていた。
「なんか妹が出来たみたいですっごく楽しかったよ!ありがとね、マサトさん!」
「そ、そうか…、楽しかったのなら何より…」
ユイの純粋な喜びの表情を見れば文句なんか言えなくなるし、何よりその表情のおかげで疲れも吹き飛ぶ気がした。
「まぁ、ユウちゃん達には買った服に着替えたマサト君の写真送ってあげとるし、何なら寮に帰ってから直接見せてあげることも出来るしね」
「また着せ替え人形になるのはゴメンだぞ!?」
「くぅ…っ!?俺が女子だったら寮にまで付いて行けたんだがなぁ…っ!!」
ちなみに、女子寮に男子が立ち入る事や、男子寮に女子が立ち入ること自体は禁止されていない代わりに、学校のある平日は門限である20時までに各々の寮に戻らなければならない。
だが、学校のない日に関してはその限りではなく、寮の出入りに関しては門限が取り払われている(学外への出入りは門限があるが)。
これは、一昔前ではあり得なかった常識かもしれないが、俺達高校生は学生であっても法律的には成年であり、学生でありながらも子供を作って家庭を持つことが許されている(そのための制度や補助金なども充実している)。
超少子化な上に、男子の赤子にかけられた【魔女】の〈呪い〉の影響で人類存続の危機という現代において、子作りは世界的に何よりも推奨されている行為であるため寮への出入りは自由とされているのだ。
ただ、魔法師育成学園に通っている俺達は、魔法師になって魔法を使えない人々を魔獣などの脅威から守るという職務もあるため、子作り同様魔法の勉強も優先されるため、平日におけるそういう行為は控えましょうということから、平日のみ夜間の出入りが制限されているわけだ(夜の街への出入りに関しても同様の理由からだ)。
そうした背景から、ユウは今日この後俺の住んでいる女子寮である桜寮に行けない(行ってもすぐ帰らなければならない)ことを悔しがっているわけだ。
「ま、焔君が来たところで門前払いやろうけどね」
「ユウ君、ユウトちゃん達に嫌われてるもんねー」
「うぐ…っ!?」
「残念やったなユウ」
「そ、そこを何とかっ!?せめて桜寮へ出入りする許可だけはっ!?」
「「「あはははは!!」」」
そんな会話をしながら、モールと直結している魔操レール車の停車駅であるスペースワールド駅(駅名だけはかつての名残からずっと変わらずスペースワールド駅のままである)へと向かっていると、正面から歩いてきた女性が俺達を見てギョッとした顔を見せた後に、突然マリの前で跪いてこう言ったのだ。
「まっ、マミ様!?何故このような場所においでに!?」
「えぇっ!?」
突然目の前で見知らぬ女性に跪かれて困惑するマリと俺達。
だがそれ以上に女性の発言が気になった。
「いっ、今、私のことをマミって言いましたかっ!?」
マミとは、十年前に起きた魔女教と呼ばれる【魔女】を崇拝する組織による『幼児集団誘拐事件』において誘拐され、今もまだ行方不明のままとなっているマリの双子の妹の名前だ。
何故、この女性がマリの姿を見て、マミ様と呼んだのか…?
「へ…?え、あ…っ!?ス、スイマセンっ!どうやら人違いだったようです!失礼しましたー!」
当の女性はマリの顔を見上げると、次に焦った表情になって慌てて立ち上がり、そそくさとその場から立ち去ろうとした。
そんな女性を、逃がすまいとマリは女性の腕を掴み、さらに問いただす。
「待って下さいっ!!人違いだとして、私を誰と間違えたんですか!?マミ様って…、白瀬麻美のことですか!?」
「何故それを…っ!?あ…、しま…っ、」
「やっぱりっ!!マミのこと、妹のことを知ってるんですね!?」
マリをマミと見間違えたことをあっさり白状してしまった女性は、しかし次のマリの発言を聞いて表情を変えた。
「妹…!なるほど、道理でマミ様にそっくりなわけですね…!」
「何を…、」
すると、女性の周りに突如黒子のような集団が現れた。
「なっ、何だぁっ!?」
「一体何事ねっ!?」
「黒子!?なしてこげんとこに!?」
周囲にいた人々が皆、突然現れた黒子集団に驚きの声をあげる。
俺は嫌な予感がしてマリを庇うように、咄嗟に前に出て女性とマリの間に入った。
「アンタ、一体何者だっ!?マミとはどういう関係なんっ!?」
「これは想定外の事態だけど、でもあの方の双子のお姉様を連れて帰ったとなれば、きっとわたくしも…、ふふふ♪」
女性は俺の質問を無視すると、胸元に手を突っ込み、首にかけられていたペンダントのトップを掴みだして握りしめるとこう叫んだ。
「【魔女】様の救いがあらんことを!」
それを合図に、周りにいた黒子達も同じように首から下げたペンダントのトップを握りしめて同じように叫んだ。
「「「「「【魔女】様の救いがあらんことを!」」」」」
すると、ペンダントからドス黒い光が溢れて女性達を包み込んだその直後、
『『『『『キシャアァアアアアアアッ!!!!』』』』』
黒子達の姿がトカゲのような姿をした人型の生物に変化した。
一瞬、魔生物の〈リザードマン〉かと思ったが、リザードマンにしては尻尾が無く、体勢も斜め前傾姿勢ではなく直立の姿勢で立っていた。
そしてもう一人、マリのことをマミと間違えた女性は彼らより一回り程大きい、三メートル程の大きさのトカゲ人間に変身していた。
「な…っ!?何なんだお前らっ!?」
『わたくし達は魔獣と人とのキメラ、〈魔獣人〉!
この世界に偉大なる【魔女】様の救いを届けるため参った、魔女教の使徒なりッ!!』
こうして、放課後のショッピングデートは予想外の展開を迎えることになるのだった…




