第2話「魔女教と魔獣人①」
*
『わたくし達は魔獣と人とのキメラ、魔獣人!
この世界に偉大なる【魔女】様の救いを届けるため参った、魔女教の使徒なりッ!!』
突如、目の前に現れた女が巨大なトカゲ型の人間(尻尾が無いので、魔生物であるリザードマンとは別種の生命体)へと変身し、自らを魔女教の使徒と名乗った。
「魔女教って…!?」
「最近は大人しくなってたかと思いきや、こんなモン作ってやがったのか!?」
ユイとユウが険しい表情をしながらそう言った。
魔女教は十年前に、俺やマリ達を含む多くの幼児達を誘拐し、とある実験を行おうとしたが、俺達の両親達を含む戦闘魔法師達の活躍もあって組織は壊滅状態にまで追い込まれ、この十年は全くその活動をしていなかった。
「だが、表立って活動してなかっただけで、裏ではしっかり色々とやっとったみてぇやな…!」
人間がトカゲ人間に変身するなんて技術は聞いたことがない。
それこそ、戦前からある特撮ヒーロー作品に出てくる敵の怪人を思い出すが、これは特撮でもCGでもないれっきとした本物だ。
「なっ!?なんだぁ!?」
「とっ、トカゲ人間!?」
「うわぁああああっ!?怪人だっ!?逃げろぉおおおっ!!」
周囲にいた人々が次々と魔操レール車の駅へと向かって逃げていく。
「どうする、マサト!?俺達も逃げ、」
『おっと!お前達は逃がさんぞ!?』
すると、女の配下の人間が変身した人間サイズの大きさのトカゲ人間達が、俺達を囲って逃げ道を塞いできた。
幸いと言うべきか、他の人達には一切の興味が無いのか逃げ惑う人々に対しては全く何もしようとしない。
「ちっ…!?」
「これじゃ逃げられないっ!」
「マサト君、どうする…?」
マリの問いに、俺はマギアコンパクトを構えながらこう言った。
「許可なく魔法を街中で使うのはご法度やけど、正当防衛ってことで許してもらうしかないな…!」
「了解!」
「なら、あたしも戦うわっ!」
「マサトが戦うなら、俺もマサトの騎士として戦うぜ?」
マリがマギアコンパクトを、ユイが剣型の変身デバイス〈マギアソード〉を、そしてユウが〈マギアリング〉を左腕にはめ、スマホ型のデバイスを構えて全員同時に叫んだ。
「「『マギアコンパクト起動』っ!!」」
「『マギアソードセットアップ』っ!!」
「〈対魔装束〉装着!」
すると、ユウを除く俺達三人の全身が光に包まれ、その光が晴れると、俺達の姿はフリルとリボン多めの可愛らしいデザインの戦闘衣装と、セーラー服のような見た目のスタイリッシュでカッコいいデザインの戦闘衣装に変わっていた。
ユウの方はスマホ型のデバイスを操作し、往年の特撮ヒーローを思わせる黒いスーツに、肩や腰、胸回りに銀色のプレートアーマーが装着されたスーツ、対魔装束と呼ばれる魔法師の戦闘スーツを一瞬で着用した。
「マジョリティブラック!」
「マジョリティホワイト!」
「マギキュリィドライ!」
「〈魔法騎士〉ユウ!」
いや、何勝手に新たな職業作ってんだ!?
「さっきからずっと考えてたんだよ!マジョリティブラックにつり合うカッコいい名前はねぇかなーって!」
「だからって、魔法騎士は、」
「ブラック!焔君!今はそんなことより、」
『『ファイアボゥル』!』
『『サンダーボゥル』!』
『『アクアボゥル』!」
ホワイトに言われ、俺は意識を目の前のトカゲ人間達に集中させた。
トカゲ人間達はどうやら魔法が使えるらしく、俺達に向かって一斉に魔法を放ってきた。
「皆!俺の周りに集まれっ!」
ユウに言われて俺達はユウの近くに集まると、ユウが両手を真上に上げながらこう叫んだ。
「『ファイアシールド』っ!」
すると、俺達四人を囲うように炎のドームが現れて周囲から飛んでくる魔法を全て防いだ。
「皆!屈んで!」
続くドライのセリフに、俺達は膝を付いて屈むと、ドライはマギアソードを真横にして構えて魔砲を放った。
「『バスタースラッシュ』っ!!」
『BUSTER SLASH ATTACK!』
ドライが地面に平行に円を描くようにマギアソードを振るうと、剣先から白い魔砲による斬撃が円状に飛んでいき、ユウの張った『ファイアシールド』を斬り裂くと、その周囲にいた敵のトカゲ人間達に直撃した。
『ぐぎゃぁっ!?』
『がはぁっ!?』
魔砲による斬撃で腹を斬り裂かれたトカゲ人間達は、赤い血を吹き出しながらその場に倒れた。
傷はすぐには塞がらないようで、倒れたトカゲ人間達は再び立ち上がってくることは無かった(死んではいないらしい)。
「どうやら、防御力が特別に高いとか再生力に優れてるなんてことも無いみたいですね!」
「なら、雑魚達の相手は俺とお姉ちゃんでするから、ブラックとホワイトはあのでっけぇトカゲ女の方を頼む!」
「了解っ!」
「ありがとう!ユイちゃん!焔君!」
『ファイアシールド』が完全に解除されると、ユウとドライは残りのトカゲ人間達の元へと駆け出して行った。
残された俺とホワイトは、目の前の三メートルはあるトカゲ人間へと視線を向けた。
『ああ…!さすがは、マミ様の姉君であらせられる方…!変身したお姿もなんて美しい…っ!』
女のトカゲ人間は、ホワイトを見ながらそんな風に言った。
「アナタにはこの後、そのマミちゃんのことでたっぷりと聞きたいことがあるけん、覚悟しときぃよ?」
『アナタが魔女教に入るのであれば、マミ様のことは何でも教えて差し上げるわよ?』
「魔女教…、やっぱりマミちゃんはまだ魔女教に捕らわれたままなんやね?」
十年前、マリの双子の妹であるマミは俺達と一緒に魔女教に誘拐され、そのまま魔女教残党と共に行方が分からなくなってしまっていた。
十年間、全くその手がかりが無かったマミの行方に関する情報が、まさかこんな形で向こうから転がりこんでくるとは…!
『ウフフ♪それを知りたければ私と共に来ることね』
「分かったわ。アナタを倒して、力尽くで情報を吐かせるっ!」
闘志を燃やすホワイトを、俺は全力でサポートすることを決意し、改めて戦闘態勢をとるのだった。
*
あたし、魔砲少女マギキュリィドライこと焔優依は、弟の優武君と共に、魔法少女マジョリティブラックとマジョリティホワイトのサポートをするために戦闘員役であるトカゲ男達を相手に戦っていた。
「『バスタースラッシュ』っ!!」
『BUSTER SLASH ATTACK!』
あたしが剣型デバイスマギアソードを振るうと、剣先から魔砲の斬撃が放たれトカゲ男達を斬り伏せる。
『『グギャーっ!?』』
『ちぃっ!?厄介な魔法を使いやがって…!?』
『クソがぁっ!!『ファイアカッター』っ!!』
『『アクアボゥル』っ!!』
あたしが魔砲を放った直後のスキを付いて、斬撃を避けたトカゲ男達が次々と魔法を放ってくる。
「『ファイアシールド』っ!!」
だけど、それらの攻撃はユウ君の半球型に張った『ファイアシールド』によって全て防がれる。
『クソっ!また…っ!?』
『ならっ!!『ファイアパンチ』っ!!』
『『サンダーパンチ』っ!!くっ!?これでも壊れねぇのか!?』
『あの男の防御魔法、硬すぎるだろがっ!?』
そう、ユウ君の『ファイアシールド』は鉄壁。
生半可な力では破壊出来ない程の強度をほこる防御魔法を扱える。
トカゲ男達が『ファイアシールド』を破ろうと何度も何度も魔法を放っているが、『ファイアシールド』はびくともしない。
「さすがはユウ君だね!」
「ああ!これはマジョリティブラックを守るために神様が俺に与えてくれた力っ!そう簡単には破れんぞ!?」
「それなら、ブラックと一緒に戦いたかったんじゃないの?」
「俺だって空気くらいは読めるさ。この戦場において俺がすべきことは、ブラックの側にいて彼女を守ることではない、ってことくらいはな」
「ふふ♪やっぱユウ君はカッコいいね♪」
あたしは改めて自慢の弟に惚れ直しつつ、マギアソードのモードチェンジ機能を呼び出し、操作した。
「モードチェンジ!ツインモード!」
『TWIN MODE ACTIVATE.』
すると、マギアソードが真ん中から半分に分かれ、二本の刀型の形態ツインモードへと変化した。
そして、分かれた一本をユウ君に渡した。
「それじゃ、ユウ君のカッコいいとこ、もっと見せてもらおっかな♪」
「おうよ!」
ユウ君は刀型になったマギアソードを腰に構え、腰を低く落として居合抜きの体勢となった。
「いくぜっ!!『炎の居合斬り』っ!!」
そして、『ファイアシールド』を解除するのと同時に、ユウ君が炎を纏わせたマギアソードと共に敵陣の中を突っ切った。
『え…!?』
『なっ、何が…?』
『う…っ!?うぎゃぁああああああっ!?!?』
何が起きたか分からないトカゲ男達は一瞬ぽかんと呆けていたが、数瞬遅れて斬られたことに気付いた彼らの身体から血飛沫が吹き出すと、男達は次々に叫び声をあげて倒れていった。
『このガキっ!?防御だけじゃねぇのかっ!?』
そう、ユウ君は普通に攻撃魔法も強いし、生身でも剣道五段の達人だ(でも部活は野球部なんだよね)。
ちなみに今の魔法はユウ君のオリジナル魔法で、あたしのマギアソードに炎の魔力を纏わせることで放つことが出来る剣技と魔法の合わせ技だ。
普通の剣や刀だと炎の魔力を纏わせることが難しいが、マギアデバイスの一種であるマギアソードだからこそ可能となる術なのだ!
ちなみに、ユウ君の持つ杖型のマギアデバイスでも同様の技は可能だけど、「やっぱ杖よりも剣のほうが様になってるよな!」というわけで、専らこの技を使う時はあたしのマギアソードを借りて使う。
『くっ!?クソがぁ…っ!!『サンダー、』
「おっと、させないよ?『ブレードスラッシュ』!」
『BLADE SLASH ATTACK!』
『ぎゃぁあああああっ!?』
傷が浅かったのか、かろうじて倒れなかった男がユウ君の背後から魔法を放とうとしていたけど、彼が魔法を放つ前にあたしが魔力を纏わせたマギアソードを直接男の背中に振り下ろしてとどめを刺した(と言っても殺しはしてないけどね)。
「サンキュー!お姉ちゃん!」
「ふふん♪どういたしまして!」
これぞあたし達姉弟の息の合ったコンビネーション!
『な…っ!?なんなんだ…、コイツら…!?』
『まだプロにもなってねぇガキ共だろ…!?なんでこんなに強ぇんだ!?』
遠巻きに様子を伺っていた残りのトカゲ男達がジリジリと後退りしているのが見えた。
「おっと!逃さねぇぞ!?」
ユウ君が地面を蹴ると、次の瞬間にはトカゲ男達の背後に回り込んでいた。
『な…っ!?』
『はっ、速、』
ユウ君とあたしで挟み撃ちにした状態で、あたし達は同時に魔法と魔砲を放った。
「『炎の斬撃』っ!!」
「『バスタースラッシュ』!」
『BUSTER SLASH ATTACK!』
『『うぎゃあぁああああああっ!?』』
トカゲ男達は逃げる間もなく、血飛沫をあげながら倒れていった。
「ふぅ、一丁上り!」
「数だけは多かったけど、本人達の実力は大したこと無かったね」
「だな!」
こうして戦闘員役のトカゲ男達はあっさり制圧することが出来た。
一応、トカゲ男達の名誉のために言っておくと、あたし達は優秀な魔法師である両親の血を受け継ぎ、幼い頃から魔法の英才教育を受けていた上に、あたしは最先端魔法技術の結晶である魔砲少女であるということ、そしてユウ君は恐らく100年に一人くらいの超天才魔法師であるということ。
つまり、彼らは運が悪かったのだ。
あたし達が相手じゃなければもう少し活躍出来ていたかもしれない(してもらっては困るのだけれど)。
その後、あたし達は守衛隊が来るまで男達(全員、変身が解けて元の人の姿に戻っていた)が逃げないように拘束し、死なないよう傷口を塞ぐなどの処置を行いつつ、ホワイト達がピンチになった時にはいつでも助けに入れるように態勢を整えるのだった。




