第11話「【萩ケ丘の竜】」
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新入生歓迎パーティーが終わってから、あっという間に入学式の日となった。
それまでの間、俺の部屋に女子達がひっきりなしに訪れていたが、俺自身は今のところこれ以上のハーレムを増やす予定(と体力)は無いので、まずは友達からという定型文でお付き合いを断り続けていた。
訪ねてくる女子には、二年生と三年生の先輩(中には女性教師も!)もいたりして、改めて俺にモテ期が来ているんだな〜…と半ば現実逃避しつつ、これから俺はどうなるのだろうかと少し前までの俺なら羨ましがるような贅沢な悩みを抱えていた。
そうして迎えた入学式だが特に大きな問題も無くつつがなく進行した。
式は女子科だけでなく、男子科、戦乙女科とも合同で行われ、新入生挨拶に女子科代表としてマリが、戦乙女科代表としてユウナが挨拶をした。
そして、男子科代表として壇上に上がったのは、新入生歓迎パーティーで知り合ったユイの弟だという焔優武、通称【萩ケ丘の竜】と呼ばれている(自称している)男子だった。
身長は170にギリ届かない俺より少し高いくらいか、鍛えられたアスリート体型(どうやら野球部所属らしい)な細マッチョ系で、何処からどう見てもイケメンだった。
イケメンで成績優秀でスポーツ万能なんて絵に描いたようなスーパー美少年が壇上に上がると、女生徒数名から「きゃっ♥」という黄色い悲鳴があがった。
ここが入学式という場でなくアイドルのライブ会場だったなら、会場が割れんばかりの悲鳴があがっていたことだろう。
そんな彼のスピーチは無難なものだったが、その女性の脳を蕩けさすようなハスキーボイスは、会場の女生徒だけでなく女性教師陣の顔をうっとりさせていた。
正直、羨ましいと思った。
俺の声はどちらかというとソプラノ寄りで、カッコいいというよりカワイイと言われてもおかしくない、アニメなら少年役の女性声優が演じるような声色なので、ユウのイケメン男性声優が演じているような声はまさに俺の理想とするような声だった。
そんな彼だが、挨拶の最後にこんなことを言った。
『…最後に、俺は巨乳好きです。
巨乳女子は全て俺の女ですから、巨乳女子の皆さん、俺が迎えに行くまで待っていてくださいね♪』
…なんだ、ただの俺の敵か。
そこで昨夜のユイとマチの台詞を思い出した。
>ユウ君、中等部の頃からユウちゃんやユウキちゃんのことを狙っとったっちゃん…
>ユウ君も、かなりのおっぱい好きだから、おっぱい大っきいユウトちゃんやユウキちゃんにずっとアプローチしとったんよね…
>だから、その二人を恋人にしたマサトさんに、ひょっとしたらちょっかいかけてくるかも…、って…
なるほど理解した。
というか、ユウの巨乳好きはひょっとすると姉のユイの影響なんじゃないか?
ユイのバストサイズ99の美爆乳が常に側にいたらそりゃ巨乳好きにもなるだろ(俺しかり)。
それはともかく、そんなことを言っても許されるのがイケメンの強みか、巨乳女生徒達は目をハートマークにして鼻息荒く興奮し、巨乳には届かない女生徒達は、自身の胸元を手で揉んだりしてバストアップを図ろうとしていた。
…いずれこの学園の達は巨乳の女子達で溢れるかもしれないな……
もしそうなったら、その時だけは感謝しようと思いつつ、その後も入学式は続き、生徒会長挨拶や風紀委員長挨拶(突然ギャルな先輩が壇上で風紀を語り出すなんて初見の人はかなりビビっただろう)と続いて、最後に教師の紹介があった。
俺やマリの所属する魔法少女クラスの担任は緑川博士、マチやユイの所属する魔砲少女クラスの担任は翠山博士、そして女子科3組担任兼一年学年主任兼魔法授業担任は、ユイのお母さんだという焔優香先生、男子科一年担任はユイのお父さんである焔優弥先生、そして戦乙女科担任は碧風博士が担当する。
その他にも女子科4組と5組の担任や、その他科目別の担任の紹介もあったが多いので割愛する。
そうして最後にシホ学園長の話があってから入学式は無事に終わり、俺達はそれぞれの教室へと別れていった。
*
魔法少女クラス及び魔砲少女クラスは、実技授業の時だけ一年生から三年生までが合同で行うという特殊なクラスだが、入学式のこの日は一般在校生は休みのため、魔法少女クラスと魔砲少女クラスに所属する先輩達との顔合わせは後日ということになった。
なので、今教室にいるのは緑川博士以外は、俺、マリ、ユウト、フレンダ、サンゴの五人だけという少し寂しい状況だった。
「便宜上クラスを分けてはいるが、それは今年が発足の年だから人数が少ないせいで、いずれは一クラスを埋められるくらいには生徒を増やしていけたらと思っている。
とはいえ、魔法少女クラスに関しては、まず魔法少女になるための条件のせいでそれも難しいだろうがな」
なので、少なくとも今年に関しては、魔法少女クラスと魔砲少女クラス、そして戦乙女科の生徒は、実技授業だけでなく一般科目の授業も合同で行う予定だという。
「その際、せっかく建てた戦乙女科の校舎も有効活用するため、いくつかの授業ではそっちの教室を使う予定だ!教室移動が大変かもしれないが、それも体力作りだと思って頑張ってくれたまえ!あっはっはっ!」
それから、緑川博士はいくつかの連絡事項を矢継ぎ早に告げると「おっと!これから会議があるから、今日は解散!」と言ってさっさと教室を出ていってしまい、HRは終わった。
入学式はHRだけなのでこの後は帰るだけなのだが、しばらく教室で待っていると、同じくHRを終えた魔砲少女クラスのマチとユウキ、ササラ、そしてユイが入って来た。
「お!そっちも終わったか!」
ユウトがマチ達に話しかけると、自然と俺の周りにサンゴとササラ以外の女子達が集まって来た。
二人は二人で集まって談笑を始めている。
「おう!んで、これからどうする?」
ユウトの台詞にユウキがそう返すと、マリがスマホのメッセージアプリを見ながら代わりにこう答えた。
「とりあえず、戦乙女科のマリアちゃんとユウナちゃんを待とっか?二人の方もHR終わってこっち向かってきとーみたいやし」
戦乙女科の校舎は、男子科の校舎よりさらに離れた場所にあるため合流までに時間がかかる。
「あ〜…、だったらオレらからそっちに行かね?」
とユウトが嫌そうな顔を隠そうともせずにそう言った。
「あ〜…、アイツが来るかも、ってこと?」
フレンダの言うアイツとは、十中八九ユウのことだろう。
「まぁ、悪い子じゃないんだけどね。イケメンでイケボで成績優秀でスポーツ万能で、魔法師としての才能も高いからちょっと調子に乗っちゃってるだけで…」
と姉であるユイがフォローに入った。
まぁ、男子の数が少ない現代において、それだけ能力が揃っていればそりゃ調子に乗るなと言う方が無理な話だろう。
引く手数多、何もしなくとも優秀な遺伝子を求める女性達がわんさかと寄ってくるわけだ。
そんなユウがご執心なのが、俺の恋人達というわけだ。
マリ達は優秀な魔法師というだけでなく、おっぱいも大きいからユウがハーレムに入れたいと考えるのも当然だ。
中でも特にユウトとユウキのことを気に入っているらしく、中等部時代から何度も何度もアプローチを仕掛けては手酷くフラレているらしい。
「ユウキなんか特に断り方酷かったよね〜」
フレンダがニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらユウキに話を振った。
振られたユウキは顔を赤くしながら、チラチラと俺の方を見ながらこう言った。
「あ、あれはしゃーねぇだろ!?あまりにしつけぇから、ただ物理的に分からせてやっただけで…」
「ああ…、俺との初対面で放った蹴りみたいなやつか」
「うぐ…っ、あ、あん時は悪かったよ…!あの頃のアタイは、まだユウト一筋で男なんて眼中に無かったし…」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるユウキが超カワイイので許す!
「でもさ、蹴られたユウ君の方はなんか嬉しそうやったよね」
と、マチが言った。
「ウチのユウ君、文句無しのスーパーイケメン男子なんだけど、性格だけはシスコン巨乳好きの上にドMなのよね」
姉のユイが、『シスコン巨乳好き』の部分は嬉しそうに、『ドM』の部分は悲しそうに言った。
「ああ…、それでユウトとユウキが特にお気に入りってわけか…」
二人は付き合ってみれば甘々デレデレなカワイイ女の子なのだが、気に入らない相手に対してはツンが全力全開だからな…
「好かれるんは悪くないっちゃけど…、オレにはもうマサトっていう好きな人がおったし、ドMなんもな〜…」
「なんか…、ごめんね、ユウトちゃん?」
「いや、ユイが謝ることやないっちゃけど、」
というような話をしていると、にわかに教室の外が騒がしくなり、やがて教室内に複数人の巨乳女生徒を引き連れた男子生徒、噂のユウが入って来た。
「ユウト!迎えに来たぞ!さぁ、俺と婚約して俺のハーレムになってくれないか!って、ユウキもいるじゃないか!ユウキも俺と、」
「うっせぇ!バーカっ!!」
「へぶんっ!?」
ユウが入室すると同時にユウキの見事な飛び蹴りが決まり、ユウは教室の黒板に背中から叩き付けられた。
「ゆっ、ユウ君っ!?」
「「「「ユウ様ーっ!?」」」」
ユイと取り巻きの少女達がユウの元へと慌てて駆け付ける。
「だ、大丈夫、ユウ君!?」
「ああ…♥相変わらず素晴らしい蹴りだよ、ユウキ…!俺への愛を感じる…っ♥」
「相っ変わらず気持ち悪ぃ奴だな…」
蹴られた本人が喜び、蹴った当人が気持ち悪がるという異質な状況にしばし呆気に取られる俺達。
と、そこへ遅れてやってきたマリアとユウナとサクラ、そしてエセ関西弁のレンカ達戦乙女科のメンバーが、教室に入るなり驚きの声をあげた。
「わっ!?何事!?」
「なんや、オモロイことになっとんな〜?」
「な、何があったの、マリちゃん?」
「サンゴちゃん!ササラちゃーん!お待たせー!さ、一緒に帰ろー!」
いや、サクラだけはこの状況を意に介さずサンゴとササラの元へと駆け寄った。
「ちょ、おい、サクラ!?この状況で第一声がそれかい!?」
「はぁ〜…、相変わらずサクラは大物というか何と言うか…」
「えっへへ〜、それほどでも〜?」
「「褒めてない!」ですわ」
…それはさておき、教室に入って来たユウナを見るなりユウの目の色が変わった。
「おおっ!君は戦乙女科の緋崎郁凪じゃないかっ!なんと美しいおっぱいっ!!近くで見るとますますその大きさが分かるっ!!素晴らしいっ!!君も俺と婚約して俺のハーレムにっ、」
「いい加減にしなさいっ!」
ユイがユウの顔をバチンっ!と平手で叩いた。
「あ痛っ!?何するんだ、お姉ちゃんっ!?」
「何するも何も…、ユウトちゃん達はもうマサト君の恋人なの!
だから、ユウ君の恋人にはならないから諦めなさい!って昨日も言ったよね!」
「いや、でも…、」
「でもじゃない!」
「はい…、ごめんなさい、お姉ちゃん……」
ユイに怒られ、シュンとなるユウ。
くそ…、不覚にも少しカワイイところがあるじゃねぇかと思ってしまった…
「いや、それよりも!貴様がユウトとユウキを俺から奪ったマサトか!?」
と、急に元気になったユウが今度は俺に突っかかってきた。
「いや、奪ったってわけや、」
「しかも男のくせに魔法少女に変身するなんてっ!!ただの変態野郎では無いかっ!!コスプレか!?コスプレ野郎なのか!?」
「あ、これユウキちゃんと同じパターン?」
「あー、マサトが男のまま魔法少女に変身するって勘違いね」
俺の後ろでマリとフレンダがヒソヒソとそんなことを話している。
う〜ん、このパターンだと次に来そうな台詞が予想出来たので、俺は一刻も早くユウの勘違いを正そうと口を開こうとしたのだが、その前に俺の足元に白い手袋が投げられた。
「黒霧優人っ!ユウトとユウキとユウナをかけてこの俺と勝負しろっ!!」
「え!?わたしも!?」
「お前っ、ふざけんなよっ!?そんな勝負誰が受けるかよ!?」
しれっと巻き込まれたユウナと、ユウの提案に激怒するユウキ。
だが、このユウの提案に関しては俺も受けるつもりはない。
ユウキとの決闘の時とは違って今回は相手側に正当性が無いからだ。
「いや、ユウ、さすがにそれは、」
「いいぜ、その勝負受けちゃるっ!!」
「「「ユウトっ!?」」ちゃん!?」
俺が断ろうとすると何故かユウトが勝負を受けてしまった。
「オレらのマサトが勝てば、ユウはもうオレらにちょっかいかけんってことでいいっちゃろ?」
「ああ、勿論!漢に二言は無いっ!」
「なら決まりっちゃん!マサト!この勝負絶対に勝つぞっ!!」
「え〜……?」
というわけで、わずか一ヶ月以内に二回も決闘をすることになってしまった俺なのだった……




