第12話「対決!マジョリティブラック対焔優武」
*
「あっはっはっ!!本当にマサトは面白い男じゃのぅ!」
開口一番、シホ学園長にそんな風に言われた俺。
「この短期間で二度も決闘を申し込まれるなどなかなか無いことじゃぞ?」
入学式が終わり、HRも終わってあとは帰るだけというタイミングで、ユイの弟である焔優武に決闘を挑まれた。
その話を何処でどうやって聞きつけたのか、突然教室に現れたシホ学園長(何故か今は、ボンッ!キュッ!ボンッ!の大人バージョンになっていた)が、「決闘するなら、妾の出番じゃな!」というわけで、俺達は女子科の校舎側にある屋内訓練施設にやって来ていた。
「え、決闘って今からするんですか!?」
「それは早い方が良かろう?
大丈夫じゃ、お主の変身アイテムとユウのマギアリング、そしてルリ達の開発したダメージ測定器を預かってきておるし、例によって妾の結界があれば死ぬことは勿論滅多なことでは大きな怪我を負うことも無い」
そう言いながらシホ学園長は自身の影からぽんぽんぽん!と俺のマギアコンパクトと、ユウが魔法を使うためのマギアリング、そして決闘の勝敗を判定するためのダメージ測定器(前回の決闘の時はあまり出番が無かったが、両者が受けるハズの本来のダメージ値を計算し、その受けたダメージ値が一定の割合を超えた段階で戦闘続行不能とみなし勝敗を判定する特別な機械だ)を出した。
どれだけ準備がいいんだ…
「さすがは学園長!準備が良いですね!」
ユウがシホ学園長を褒めながら、自身の左腕にマギアリングを装着する。
「そうじゃろ、そうじゃろ?妾に惚れたか?」
「いえ、いくらおっぱいが大きくともさすがにおばあちゃんは無理です」
「誰がババァじゃ!せめてロリを付けよ!」
「それで、ロリシホ学園長もう始めていいんですか?」
「そっちにロリは付けんでよい!
まぁ、待てユウよ、あと一人この場に呼んでおるからもう少し待たれよ」
シホ学園長がそう言ったタイミングで訓練施設内に一人の女性が入って来た。
「学園長、言われた通り来ましたけど…、」
「お母さんっ!」
「母さん!?」
現れたのは、ユイとユウの母親である焔優香先生だった。
ユカ先生(焔先生だと、焔優弥先生とごっちゃになって紛らわしいので、ユカ先生と呼ぶようにと本人から言われている)は、ユイをそのまま大人の女性にしたような美しい女性で、とても二児の母とは思えない程若々しい(実際、二人を産んだのは18歳の時なので今は33歳くらいだから実年齢も若いのだが、見た目はそれ以上に若い)。
「おお、来たか、ユカ!実はかくかくしかじかでの、この決闘の審判役をやって欲しいのじゃよ!」
「あぁ…、なるほど、つまりまたウチのバカ息子がご迷惑を…」
シホ学園長から説明を受けたユカ先生は、俺の方にやって来て深々と頭を下げた。
「なんか、ごめんなさいね?ウチの息子が迷惑をかけて…
その、嫌なら断ってもらっていいからね?」
「そんな…、頭を上げて下さい、ユカ先生!心配はいりません、俺もユウとは戦ってみたいと思ってますから!」
「そう…、分かったわ。学園長の結界があるから大丈夫だとは思うけど、無茶はしないでね?」
「はい、ありがとうございます!」
洞海湾での魔物と魔獣討伐、ユウキとの決闘、そしてゴブリン達との戦いを経験して俺はもっともっと強くなりたいと思っていた。
せめて、俺の周りの人達を守れるだけの力が欲しい。
そのためにも、ユウとの実戦はいい機会だし何より俺のユウト達をユウに渡すわけにはいかない。
「ククク…!マサトの意思も固いようじゃの。それでこそ男の子じゃ!
ならば、これよりマサトとユウの決闘を始める!
ルールは前回と同じじゃが、あの時ユウはおらんかったので、改めて説明しておく。
戦闘は、妾が張った特殊な結界の中で行うこと。この結界内であればどれだけダメージを食らおうと、肉体的な傷を負うことはなく死ぬことも決してない。じゃが、ダメージを受けた状態で結界を出るとそのダメージ分の怪我を負うことになるので注意するのじゃ。
勝敗は、ルリの用意したこの機械が両者が受けるハズの本来のダメージ値を計算し、その受けたダメージ値が一定の割合を超えた段階で戦闘続行不能とみなし、その時点で敗北とする。
もしくは、相手に『参った』、『降参』、もしくはそれに準ずる言葉を言わせれば勝利とする。
両者、何か質問はあるかの?」
「いえ、ありません」
「俺も大丈夫です」
シホ学園長が俺とユウキの決闘の時にも説明したのと同じ内容の説明をしてくれた。
そうして改めて思うが、シホ学園長の張るこの特殊な結界がいかにデタラメかということだ。
魔法や科学では絶対に再現出来ない特殊結界こそがシホ学園長がこの世ならざる存在、吸血鬼であることの証明であろう(身長まで含めた見た目年齢を12歳と17歳で一瞬で変えられるというのも、魔法や科学では説明不可能な芸当の一つではあるが)。
閑話休題。
シホ学園長の張った結界の中に入る俺とユウ。
そして、結界の外にはシホ学園長が用意した応援席にて、マリ達とユウのハーレム候補の女子達が左右に分かれて俺達を応援してくれている。
「頑張ってね、マサトくーん!」
「負けんなよー!マサトー!」
「ユウ君頑張ってー!」
「ファイトッ!ユウ様ー!」
そんな中、ユイだけは複雑そうな顔をしながら、両応援団のちょうど真ん中あたりに座っていた。
「うぅ…、勿論ユウ君には負けて欲しくないけど…、でも、マサト君には勝って欲しい…!あたしはどうすれば…っ!?」
俺のことを応援してくれるのは嬉しいけど、ここは身内としてユウの方を応援してやって欲しいかな…
「さて、それじゃあマサト君、魔法少女に変身してもらえる?」
審判役のユカ先生に言われ、俺はマギアコンパクトを胸にあて、叫んだ。
「『マギアコンパクト起動』っ!」
すると、俺の全身はドス黒いオーラに包まれ、股間がスースーする感覚と急激に胸が重くなる感覚の後に、俺は黒を基調とした可愛らしいフリフリドレスに見を包んだ魔法少女、マジョリティブラックへと変身を遂げた。
「な…っ!?キサマっ、その姿…っ!?」
そんな俺の姿を見て、ユウが絶句していた。
…あ〜、このパターンはやはり……、
「めちゃくちゃカワイ過ぎる上におっぱいデカ過ぎんだろっ!?」
「…やっぱりか……」
ユウキの時とほとんど同じ反応を示すユウ。
ユウも、俺が性転換して魔法少女になることは知らなかったらしい(ユウキと同様、男のまま魔法少女の力を使えると思っていたようだ)。
「ちょっ待てよ!?お前っ、マジで魔法少女やん!?その身体っ!!めっちゃ女の子やんっ!!おっぱい大きいし、顔もカワイイし、声もハスキーで、おっぱい大きいし、それに、おっぱい大きいしっ!!」
「どんだけおっぱい大きい強調すんだよっ!!あー、とにかく!もう始めていいか!?」
右太ももに装着された棒状の魔装具、マギアデバイスを右手に持つと、その形状が変化していき刀の形へと変化した。
このマギアデバイスは、変身した全ての魔法少女の右太ももに装着されており、デフォルト状態では棒状なのだが、手に装備することでその人の特性に合った魔装具へと変化する。
その刀型に変化したマギアデバイスを構えると、ユウの方もまたマギアリングを左腕に装備し、それとは別にスマホ型のデバイスを操作すると一瞬でユウの全身に〈対魔装束〉と呼ばれる魔法師の戦闘スーツが装着された。
対魔装束は、見た目で言うと往年の特撮ヒーローを思わせる黒いスーツに、肩や腰、胸回りに銀色のプレートアーマーが装着されたスーツだ。
さらに、そのスーツのポケットからカプセル状の魔装具を取り出して右手に持つと、それが杖状に変化した。
一般の戦闘魔法師の場合は基本的に汎用型の魔装具が渡されるのだが、普段はカプセル状に小さくして収納し、使用する際に手に持つことで元の形状に戻すことが出来るそうだ。
ユウがその杖を構えると、真剣な眼差しを向け俺にこう言った。
「マサト、俺は君に勝ってユウトとユウキとユウナ、そして君を戴くよっ!」
「そうはさせ…、って俺も入っとる!?」
いつの間にか俺までユウのハーレムに入れられることになってるが冗談じゃねぇ!?
「この勝負…、絶対に負けられんっ!!」
「いざ…っ!!」
こうして、俺とユウの決闘が始まった。
*
「『ファイアバースト』っ!!」
開始早々、いきなり上級クラスの魔法をぶっ放してきたユウ。
俺はそれを自慢の機動力で間一髪避けたのだが、その動きを読んでいたのか俺の避けた方向にユウは杖を向けていて、続け様に魔法を放った。
「『ファイアアロー』っ!!」
「うおぉっ!?」
正確に俺の足元めがけて放たれた炎の矢を、俺は床を蹴って横に転がるようにして避けた。
「おー!今のを避けるのか!さすがだな!なら、これはどうだ!?『ファイアボゥル』!『ファイアボゥル』!『ファイアボゥル』!」
今度は俺の正面方向と左右に向けて『ファイアボゥル』を放ってくるユウ。
これだと、避けるにしても後ろにしか避けきれない。
「狙いがあからさま過ぎるだろっ!」
俺はあえてそのユウの狙いに乗ることにし、バックステップで正面から来る『ファイアボゥル』をかわし、振り向き様に刀のマギアデバイスを斜め下から斬り上げた。
すると、予想通り俺の背後に移動していたユウが杖で俺の刀を受け止めた。
「はは!さすがにバレバレだったか!」
「まぁな!『シャドゥショット』!」
「『ファイアショット』!」
至近距離で互いの魔法がぶつかり合い、激しい爆発が起こる。
その爆炎に紛れて、バックステップで距離を取ろうとするユウに対し、俺はあえて爆炎の中を飛び込みユウに肉薄した。
「なっ!?」
「そりゃあああっ!!」
俺は刀を右斜め上から斬り下ろし、足で地面を蹴った直後でわずかに浮いた状態のユウの上半身を斬り裂いた。
「ぐぅっ!?」
これが本来の決闘ならば血が噴き出すところだろうが、ここはシホ学園長の結界内なので血は出ることはなく、代わりに赤い血のエフェクトのような線がユウの身体に走り、ダメージ判定となった。
「ユウ君に重度のダメージ判定!
マサト君にも中程度のダメージ判定!」
ユカ先生がダメージ測定器を見ながらそう言った。
俺のダメージ判定は、爆炎を通り抜けた際に負った火傷のせいだろう。
魔法少女装束にはある程度の物理ダメージや魔法ダメージをカットする効果があるが、それでも完全に防ぎきれるものではない。
そしてそれはユウが着用している対魔装束も同様だ。
「やれやれ…、まさか自傷覚悟で突っ込んでくるとはね!」
「俺的には今の一撃で決めたかったんだけどな…!」
足が地面から浮いていて避けようのない状況での斬撃は完全に決まったと思ったのだが、ユウは斬られる直前に杖で地面を叩き、擬似的な二段ジャンプをすることによって斬撃が急所に入るのを防いだのだった。
「あぁ…!いい…!すごくゾクゾクする…っ!!それでこそ俺のハーレムに相応しい…っ!!マサト、いや、マジョリティブラック!お前を俺の花嫁さんにするっ!!」
「はっ、はぁあっ!?」
突然、ユウがそんな血迷ったことを叫び出したかと思うと、一瞬で俺の懐に入り込み炎を纏わせた拳でアッパーを繰り出してきた!
「『ファイアパンチ』っ!!」
「『シャドゥシールド』っ!!」
俺は反射的に盾の魔法を繰り出したが、ユウの拳の勢いは止められず、俺は盾を砕かれながら後方へと吹き飛ばされた。
「がぁ…っ!?」
「はははは!やはり凄いっ!!あと一瞬で防御魔法なんて!!いい!最高だっ!!俺は強い女の子が大好きなんだっ!!」
目を血走らせて興奮するユウに、女子の本能的に恐怖を感じた俺は、色んな意味でコイツに勝たなければ…、と改めて強く思うのだった。
*
一方その頃、マサトとユウの決闘を観戦していたマリ達は…
「相変わらずえげつねぇ強さだな、ユウは…」
「戦闘魔法師としての実力なら、恐らく今の時点でプロ並みの実力はあるやろうね…」
ユウトとマリがユウをそう評すると、姉であるユイが自慢気にこう答えた。
「ふふん!さすがは我が弟ね!」
「女子、特に強くておっぱいの大きい女子が相手の時はなんかめっちゃ強いよね、ユウ。ボクも中学時代はまともに勝てたこと無いし」
「え、そうなの?」
フレンダの言葉にマリアが意外だという表情をする。
そんなマリアの疑問にユイが代わりに答えた。
「ユウ君は子供の頃からお母さんの戦いを見てきてその姿に憧れてたからね。いつしかお母さんがユウ君にとっての理想の女性となり、そんな女性に相応しい男になりたい、ってのがユウ君の強さの原動力なんだよ!」
「おまけに、ただでさえ優秀な戦闘魔法師であるユウヤ先生とユカ先生の血を引いとるけんね…」
と、マチが補足する通り、ユウは優秀な父と母の血を引いて、より優秀な戦闘魔法師としての才能をいかんなく発揮している。
勿論、その姉であるユイもまた例外ではない。
「いやいや、だとしても!いくらブラックが魔法初心者だからって、普通の戦闘魔法師で魔法少女と互角以上に戦えてるとかさすがに強過ぎんだろ!?」
「う〜ん…、確かに、ちょっと想定外の強さやな…」
「落ち着いてる場合じゃねぇだろ、
ユウト!?元々この決闘はおめぇが受けたんだろうが!?」
「あはは…、いや〜……」
ブラックを追い詰めるユウの強さに、冷静でいられないユウキと内心焦るユウト。
「マサト、本当に勝てると…?」
ユウナは祈るような気持ちで二人の戦いを見守っている。
そんな中、唯一冷静に試合を見ているのは、意外にもマサト達と関わりが一番浅いレンカだった。
「まぁ、なんとかなるやろ」
「なんとかなるって…、どういうこと?」
ユウナの問にレンカが似非関西弁で返した。
「どうもこうもあらへんよ。確かに、ユウはんがえげつない強さなんは分かるけど、最終的に勝つんはマサトはん、ってこっちゃ」
「レンカちゃんはなんでそう言い切れると?」
今度はマリが尋ねると、レンカはウィンクしながらこう答えた。
「そら、ユウも男の子やちゅーことや!」
*
「はぁっ!!」
「ふんっ!!」
俺が刀でユウに斬りかかると、それを杖で受け止めるユウ。
「『ファイアソード』っ!!」
その状態で左手に炎の剣を作り出したユウは、その剣を俺に向かって突き出した。
「くぅっ!?」
俺はバックステップで剣の突きをかわす。
「『ファイアブラスト』っ!!」
すると、ユウの持っていた炎の剣がそのまま一直線状の炎の光線となり、俺に向かって伸びてきた。
「うわぁあああああっ!?」
さすがに避けきれず、まともに食らってしまった。
「マサト君に重度のダメージ判定!」
今の攻撃でかなりのダメージ判定を受けてしまった。
…恐らくあと一撃、強力な魔法を食らえば、俺は戦闘不能になるだろう……
「さぁ、どうするマジョリティブラック!?君の強さはまだまだこんなものじゃないだろ!?」
ここまでの戦闘で、互いに受けたダメージ判定はほぼ同じ。
だから、ユウもあと一撃俺の攻撃を食らえば戦闘続行は不可能となるハズだ。
にしても、本当にユウは強い。
これだけの強さがあるからこそ入学式でのあの発言も納得だ。
マズいな…、このままじゃ冗談抜きで勝てねぇぞ……?
「くそ…っ、だけどっ!!こんなとこで俺は負けるわけにはいかねぇんだっ!!」
俺が負ければユウト達がユウのハーレムに入ることになる。
それだけは絶対に嫌だっ!
ユウト達を奪われるわけにはいかないんだっ!!
俺はボロボロの身体に鞭を打って立ち上がる。
ダメージは無いがダメージ判定による動きの制限が加わるため、今の俺は立ち上がるだけでもかなり精一杯だった。
「いいぞ!マジョリティブラック!もっとその強さを俺、にぃっ!?」
と、突然ユウが素っ頓狂な声を上げた。
「な…?どうしたんだよ、ユウ、急に…?」
その時ふと、胸がスースーすることに気が付いた。
ぱっと下を見ると、なんと、俺のおっぱいが丸出しになっていたのだ!?
「な…っ!?」
そうか、さっきのユウの『ファイアブラスト』!
まともに食らったせいで、戦闘でボロボロになっていた魔法少女装束が焦げて、ついに限界を迎えてしまったのだろう。
そのせいで、おっぱいが丸見えになってしまっていた…!
「あっ!?なっ!?ちょ…っ!?」
恥ずかしさのあまり咄嗟に胸を隠そうとしたが、ユウの様子を見ると…、
「おぉ…っ!スゴい…!スゴ過ぎる…っ!!これが女子の生おっぱいっ!!本物を見るのは母さんや姉さん以外では初めてだっ!!スゴいっ!!スゴ過ぎるっ!!感動したっ!!」
俺の生おっぱいに滅茶苦茶興奮していた。
「『シャドゥエンドバースト』」
「ほぎゃぁああああああああああっ!?!?」
「……ユウ君に重度のダメージ判定。それにより、ユウ君のダメージ値が一定の割合を超えたため戦闘続行不能とみなします。
よって、勝者、マサト君!」
こうして、俺はユウとの決闘に勝利した。
勝因は、勿論おっぱい。
やはりおっぱい……!
おっぱいは全てを解決する……!!




