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天気屋のお仕事~天気を売買する世界の物語~  作者: 相場 巴
第1部 第1章:天気を届ける仕事
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晴天、返品不可 ②

 めいは店の奥に目を向けた。そこには、販売用とは別に、自分用として保管していた『晴天』の瓶がある。


 めいはそのうちの一本を取り出すと、農家の客が持ち込んだ瓶と交換しようとした。


「めい、規則を忘れたわけじゃないよな? 一度売った天気は返品不可。これがこの街の鉄則だぞ」


 蔵が念を押す。


「規則は知ってる。でも、それはあくまで原則よ。明らかな不良品を売っておいて、返品にも応じないなんて、アマギ屋の看板にかけて絶対にできないわ。これ、私のストックから交換するわ」


 めいは自分の瓶をカウンターに置き、農家の客が持ち込んだ瓶と交換した。


「嬢ちゃん、助かった。本当に恩に着るよ!」


 農家の客は、ほっとした表情で何度も頭を下げた。

 その様子を見ながら、蔵は呆れたようにため息をつく。


「まったく。赤字確定だな」

「困っている人を放っておけないでしょ」


 めいはそう答えたものの、表情は晴れなかった。

 ---


 農家の客を見送ったあと、めいはカウンターに残された瓶を手に取った。


 中には、本来なら混ざるはずのない『雷雨結晶』が紛れ込んでいる。瓶の底には、見慣れない特殊な刻印番号もあった。


 めいは番号をじっと見つめた。


「この特殊な刻印番号、気になるわね。中央気象卸問屋街に行けば、何かわかるかもしれない。誰がこんな瓶を流通させたのか、突き止めよう」

「仕方がないな。配達のついでだ。付き合うよ」


 蔵は肩をすくめながらも、調査に協力することを決めた。

 こうして二人は、問題の瓶を持って中央気象卸問屋街へ向かうことになった。

 ---

 中央気象卸問屋街。


 ここは、帝国内を流通する『気象結晶』のおよそ八割が集まる場所だ。


 街に到着すると、二人の目の前には、活気に満ちた光景が広がっていた。通りを荷車が行き交い、倉庫の前では、気象結晶を詰めた箱が次々と運び込まれている。商人や運び屋たちの声が飛び交い、街全体が慌ただしく動いていた。


 蔵は周囲を見回し、めいに尋ねた。


「それで、勢いでここまで来たのはいいけど、どこをどう調べるんだ?」

「実は、もう目星はついているの」


 めいは問題の瓶を取り出し、底に刻まれた番号を指さした。


「この番号の頭にある『7』。これ、中央気象卸問屋街の第七倉庫を仕切っている『黒潮堂(くろしおどう)』のマークにそっくりなのよ。だから、まずは黒潮堂に行ってみない?」


「なるほどな。手がかりがあるなら、行ってみる価値はありそうだ」


 蔵がうなずいた、そのときだった。


 背後から、誰かに見られているような気配がした。

 蔵は会話を止め、人混みの中に目を走らせた。


「めい、誰かに俺たちの話を聞かれている気がする」

「え?」


 めいも周囲を見回した。


 すると、積み上げられた荷物の陰から、笠をかぶった人物が姿を現した。

 二人と目が合った瞬間、その人物はさっと身を翻し、路地裏へと走り去っていく。


「今のやつ、黒潮堂の方へ走っていったよな?」

「うん。私たちも追いかけよう!」


 二人は急いで、謎の人物が消えた路地へと向かった。

 ---

 路地を抜けた先にあったのは、「黒潮堂 第七倉庫」だった。


 目の前には、重厚な鉄扉が立ちはだかっている。扉は固く施錠されており、中の様子はわからない。


 しかし、めいは扉の隙間に目を留めた。

 そこから漏れ出していたのは、回収した欠陥ボトルの中で見たものと同じ、紫色の雷光だった。


 バチッ。


 小さな火花が散り、薄暗い足元を一瞬だけ照らす。

 蔵は目を細め、鉄扉を見つめた。


「これは、怪しすぎるな」

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