晴天、返品不可 ②
めいは店の奥に目を向けた。そこには、販売用とは別に、自分用として保管していた『晴天』の瓶がある。
めいはそのうちの一本を取り出すと、農家の客が持ち込んだ瓶と交換しようとした。
「めい、規則を忘れたわけじゃないよな? 一度売った天気は返品不可。これがこの街の鉄則だぞ」
蔵が念を押す。
「規則は知ってる。でも、それはあくまで原則よ。明らかな不良品を売っておいて、返品にも応じないなんて、アマギ屋の看板にかけて絶対にできないわ。これ、私のストックから交換するわ」
めいは自分の瓶をカウンターに置き、農家の客が持ち込んだ瓶と交換した。
「嬢ちゃん、助かった。本当に恩に着るよ!」
農家の客は、ほっとした表情で何度も頭を下げた。
その様子を見ながら、蔵は呆れたようにため息をつく。
「まったく。赤字確定だな」
「困っている人を放っておけないでしょ」
めいはそう答えたものの、表情は晴れなかった。
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農家の客を見送ったあと、めいはカウンターに残された瓶を手に取った。
中には、本来なら混ざるはずのない『雷雨結晶』が紛れ込んでいる。瓶の底には、見慣れない特殊な刻印番号もあった。
めいは番号をじっと見つめた。
「この特殊な刻印番号、気になるわね。中央気象卸問屋街に行けば、何かわかるかもしれない。誰がこんな瓶を流通させたのか、突き止めよう」
「仕方がないな。配達のついでだ。付き合うよ」
蔵は肩をすくめながらも、調査に協力することを決めた。
こうして二人は、問題の瓶を持って中央気象卸問屋街へ向かうことになった。
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中央気象卸問屋街。
ここは、帝国内を流通する『気象結晶』のおよそ八割が集まる場所だ。
街に到着すると、二人の目の前には、活気に満ちた光景が広がっていた。通りを荷車が行き交い、倉庫の前では、気象結晶を詰めた箱が次々と運び込まれている。商人や運び屋たちの声が飛び交い、街全体が慌ただしく動いていた。
蔵は周囲を見回し、めいに尋ねた。
「それで、勢いでここまで来たのはいいけど、どこをどう調べるんだ?」
「実は、もう目星はついているの」
めいは問題の瓶を取り出し、底に刻まれた番号を指さした。
「この番号の頭にある『7』。これ、中央気象卸問屋街の第七倉庫を仕切っている『黒潮堂』のマークにそっくりなのよ。だから、まずは黒潮堂に行ってみない?」
「なるほどな。手がかりがあるなら、行ってみる価値はありそうだ」
蔵がうなずいた、そのときだった。
背後から、誰かに見られているような気配がした。
蔵は会話を止め、人混みの中に目を走らせた。
「めい、誰かに俺たちの話を聞かれている気がする」
「え?」
めいも周囲を見回した。
すると、積み上げられた荷物の陰から、笠をかぶった人物が姿を現した。
二人と目が合った瞬間、その人物はさっと身を翻し、路地裏へと走り去っていく。
「今のやつ、黒潮堂の方へ走っていったよな?」
「うん。私たちも追いかけよう!」
二人は急いで、謎の人物が消えた路地へと向かった。
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路地を抜けた先にあったのは、「黒潮堂 第七倉庫」だった。
目の前には、重厚な鉄扉が立ちはだかっている。扉は固く施錠されており、中の様子はわからない。
しかし、めいは扉の隙間に目を留めた。
そこから漏れ出していたのは、回収した欠陥ボトルの中で見たものと同じ、紫色の雷光だった。
バチッ。
小さな火花が散り、薄暗い足元を一瞬だけ照らす。
蔵は目を細め、鉄扉を見つめた。
「これは、怪しすぎるな」




