第8話 宇宙の蒲鉾
ホーデングブリッジ内にあるハンドルを掴むと、自動的に先に進む。そして、到着すると再び違うコミューターの中に入った。今度は他の乗客も一緒になって乗車している。
満員になったコミューターは、重力コントロールされていのか不快感はない。
そしてコミューターの窓側に座った俺が、その窓から見たのはとてつもなく大きな宇宙艦だった。
宇宙艦は蒲鉾のような形をしており、前世のアニメで見たようなカッコイイとはいえないものだ。
その大きな蒲鉾が宇宙空間に浮いている。
「なっ!」
思わず声が出る。
俺の顔が余程だったのか、隣の男性が話し掛けてくれた。
「君は、外宇宙航行船を見るのは初めてかね?」
「は、はい、そうです。こんなに大きいなんて・・・」
「これは1000メル(1000m)級シュワント7373型なので、そこまで大きくはない。もっと大きな船なら2000メル(2000m)級のシュワント7777型があるからね」
1000メルと言えば1kmだ。そんな船が宇宙空間を飛ぶなんて。俺は転生した先が、とてつもなく未来である事を実感した。
確かに、これだけ大きいと、いくら技術があると言っても重量があり過ぎて、地上に降りてこれないだろう。
地上に降りた瞬間に重力で押し潰されてしまうし、再び宇宙空間に出るのにかなりのエネルギーを使う。
コミューターが宇宙艦の中に入り、先と同じようにボーデングブリッジが接続されるが、今度は重力があるので無重力にはならない。
俺が不思議な顔をしていると、先程の男性が教えてくれた。
「この船全体に重力制御されているから、コーテナーに入った時から重力があるのさ」
コミューターが発着する場所は、コーテナーと言うらしい。
そして、ボーデングブリッジを先に進むと広いロビーに出た。
そこでは乗客の案内をしている。俺は身分証を係員に見せると、その案内人はひとつのサッカーボール大のロボットを呼んだ。
「このロボットに従って進んで下さい」
俺がそのロボットに案内されて進むと、ひとつの部屋の前に来た。ロボットに指示されるままにその扉に身分証を近づけると扉が開く。そこは小さな部屋でベッドが一つとシャワーとトイレがある。ただし、窓はない。
小さいながらも個室のようだ。これより下のランクの部屋もあるのだろうか。
取り敢えず部屋に荷物を置いて、外に出てみる。
すると、そこには一緒のコミューターで来た女性が居た。
「こんにちは」
俺は何気なく挨拶した。
「こ、こちらこそ、こんにちわ」
その女性も挨拶を返してくれた。荷物を持ったままなので、まだ部屋に入ってないのだろう。案内ロボットも足元に居る。
俺は先程のロビーに行こうとしたが、その女性が声を掛けて来た。
「あのう、ちょっと待っていて貰って良いですか。私も色々と船を見て廻りたいので一緒に廻りませんか?」
「えっ、構いませんが・・・」
俺は自分の部屋の前で、そのまま待つ事にした。
女性は荷物を置くと直ぐに出て来たようで、俺はそんなに待つ事なく、案内ロボットが来た方に二人並んで歩いて行く。
それほど時間も掛からずに先程の受付ロビーのところに来て、様子を見ると入り口とは反対の奥の方にエレベーターと見られるものがある。
俺達はその方向に歩いて行った。その前で立ち止まり、エレベータのボタンを押すと、直ぐに扉が開いた。扉の中に入るとボタンがフォログラムで浮かび上がる。そこには数字が表示されると思うが、文字を読む学習をして来なかった俺はその数字が読めない。
「えーと、これ分かりますか?」
俺は女性に聴いてみた。
「いえ、私にも分かりません」
俺は取り敢えず一番上のボタンを押してみる。前世の記憶があるので、ボタンを数えて見るとボタン数は40あった。
つまり、40階まであると言う事だ。その40階に向かう。
「えーと、僕は『アルディ・モーディスター』と言うけど、君の名を聴いても良いかな?」
「あっ、ごめんなさい。私は『マーガレット・カスペリアス』といいます。ブルメン地区出身です」
「ブルメン地区というと領都の反対側だね。俺は領都出身なんだ」
「領都かぁ。いいなあ」
「そうかな、そうでもないと思うけど」
「ううん、領都以外は、生活水準があまり良くないから」
そんな話をしているとエレベータは40階に到着し、扉が開いた。エレベータの外に出ると展望台のようになっている。その展望台には大きな窓があり、漆黒の闇の中にたくさんの星が輝いていた。
「きれい!」
マーガレットが思わず声に出す。
俺は前世で宇宙の星の写真を見たことがあるので、そこまで感動はしない。
しばらく黙って星を見ていたが、マーガレットが俺に聴いて来た。
「アルディで良いかしら。アルディは帝都に何しに行くの?」
「俺は冒険者訓練校に行くんだ。そのために帝都に行く」
「えっ、アルディもそうなの。実は私もそうなの」
「じゃあ、同級生って事だね。よろしく」
それから二人でお互いの話をした。
それによるとマーガレットは18歳で俺より3歳上と言う事だ。年齢を知った時マーガッレトはまずは驚いた。
俺はどうも落ち着いて見られるらしく、てっきり自分より上だと思ったらしい。
それがまさかの年下だったため、それに驚いたということだ。
マーガレットの家族は両親と5人の兄弟の7人家族らしい。
父親は漁業の養殖の仕事をやっているらしく、長男、次男もその家計を継いでらしい。
三男は男爵家の兵士として、この星の防衛に当たっているということだ。姉が一人おり姉は既に嫁いでいるらしかった。
マーガレットは最初男爵家のメイドとして男爵邸にいたそうなのだが、3年間勤めたが冒険者になると決めてメイドを辞めたということだ。
「どうして冒険者になろうと思ったの? メイドとして働いていれば安泰ではないの?」
「確かにそうだけど、毎日同じ仕事で、こんなので良いのかなって思って。
出来れば宇宙を廻ってみたいなと思うと、居ても立っても居られなくて」
俺は前世の記憶があったから同じような事を思い、冒険者になろうと思った。
だから、彼女の気持ちも理解できた。
「それにね、領都以外での生活って、かなり厳しいものがあるの。領都に近いと仕事に使うマシンは最新型で仕事の効率が図られる物ばかりだけど、領都から離れる程中古品が与えられ、仕事の効率も上がらないの。
マシンの修理で1か月も使えない事ってザラよ。そうなると、生産性が上がらくて管理官から文句を言われるし」
すると、うちは比較的恵まれた生活環境だっという事か。
展望台では話が一段落すると39階に降りる事にし、エレベータの扉の前にいく。下の階に向かいボタンを押すと直ぐに扉が開いた。
「ん?」
前世の記憶だと、エレベータが来るまで時間が掛かるので、ある程度待たなければならないのが普通だった。それがこの船では直ぐに来る。
それに前世のエレベータの室内は四角いBOXタイプだったが、このエレベータは円柱形だ。これではまるで茶筒の中に居るようだ。
それでも、エレベータの中に入りフォログラム表示された40階より一つ下のボタンを押してみるが、その階の表示が変わらない。それは30階部分全てのボタンが機能しない。
恐らく30階は、俺達の持っている身分証では行けないと言う事らしい。
これは前世でも同じような仕組みがあったので、特に不思議とは思わなかった。
それで、俺たちが行けたのは29階だった。
29階に降りると、そこは搭乗する時と違った広いロビーがあり、沢山の人々が居た。
俺はその中にコミューターで一緒だった男性を見つけた。
「あ、あの、すみません」
俺は恐る恐るその男性に声を掛けた。
「おや、君は確か・・・」
「コミューターの中ではお世話になりました。また、その時は名乗らずに失礼しました。俺は『アルディ・モーディスター』と言います。
こちらは、先程知り合った『マーガレット・カスペリアス』さんです。一緒に船の中を散策していました」
「僕は『エリー・キャロル』、商人だ」
「だから、宇宙艦に詳しかったのですか。それで、ヘーデルランド星にはお仕事で?」
「商人は、星間を飛び回る事が仕事だからね。最近は宇宙間通信が発達して来たけど、それでもお互いに会って商談すると言う事は大切だからね」
前世で会社員だった俺は、その言葉に同意出来た。
前世でも電子メールやTV会議で在宅勤務とかも出来たが、相手と会って商談するというのはとても重要な手段だった。
それは、どれだけ文明が進んでも、基本的に変わらないものなのではないだろうか。




