第7話 さらばヘーデルランド
家族と話した翌日、エアロパイロットで役場に行ってみる。役場は男爵様の城の裏手にある5階建ての建物だ。
中に入ると前世の日本の役場のようになっている。その中の2階に人事庁のフロアがあり、そこに向かう。
フロアに入ると臣下の解除というコーナーが有った。
「あのう、冒険者になりたいので、臣下を解除して欲しいんですが・・・」
俺が受付の女性に言う。
「冒険者にですか?」
年若い女性は、俺の顔を見ながら言う。
「はい、そうです」
「それで、今後の予定とかは決まっていますか?」
「えーと、まだ手続きはしていませんが、帝都に出て冒険者訓練校に入りたいと思います」
「ああ、成る程、そういう事ですね。では、あちらの方で冒険者訓練校への進学登録を行って下さい。
その登録完了後に臣下の解除手続きを行います」
俺は言われた通りに、指示された窓口に行くと、冒険者訓練校への進学要望を伝えた。すると、あっさりとその要望は認められた。
あまりの簡単さに呆れる程だ。
そして、元の窓口に戻ると臣下解除の手続きに入った。
「あ、あの、どうしてこんなに簡単に冒険者訓練校への進学と臣下の解除が認められるんですか?」
「冒険者って、帝国全体に渡って人材不足なんです。なにせ危険が大きいですからね。
なので、帝国から冒険者訓練校進学者は優遇するように言われているんですよ。
ちなみに、この星から帝都までの旅費と学生生活に掛かる費用など、一切が免除となっています。
ただし、あなたが今まで受けた優遇措置については、この星に置いて行って貰う必要があります。つまり、エアロパイロットとかですね。
それで、出発の日が決まりましたら、ご連絡下さい」
俺は家に帰り、両親と相談した後、1週間後に出発する事を決め、アームデバイスで役場に連絡した。
すると、1週間後に宇宙港に来いとの指示があった。
そして3日後には家族やマークやエリスが送別会を開いてくれた。
男性はそれほどでもなかったが、姉やエリスは泣いていた。特にエリスは最後まで、俺が冒険者になるのには反対していた。
出発の日、俺は自分のエアロパイロットに乗り、宇宙港に向かう。
宇宙港は領都から50kmほど離れた所にあるので、エアロパイロットごとエアロビークルに乗り、宇宙港に入った。
思えば宇宙港に来たのは初めてだ。いかにもお上りさんという体で、うろうろとていると警備員と思われる人から声を掛けられた。
「どうかしましたか?」
「あのう、帝都に行きたいんですが、どこに行けば良いのか分からなくて」
「進学ですか、商用ですか?」
「進学です」
「でしたら、まず右側の方へ進んで下さい。すると進学受付がありますから、そこで受付て下さい。地図をアームデバイスに送ります」
左手に装着されたアームデバイスを見ると宇宙港の地図と行き場所が指示されている。
「ありがとうございました」
俺は警備員にお礼を言い指示された順路を進むと、まもなく進学受付に到着した。
「進学の方ですか?」
「はい、そうです」
「名前とアームデバイスを」
「アルディ・モーディスターです」
名乗ると同時にアームデバイスを見せた。するとハンディ型の装置を近づけて内容を確認している。
「はい、事前に申請して頂いた方で問題ありません。それでは、乗って来たエアロパイロットとアームデバイスをここに置いて下さい」
俺は乗っていたエアロパイロットを停止させ、アームデバイスをカウンターに置いた。
「荷物を持って、こちらにお越し下さい」
指示された通りに扉を開けて奥に進む。そこには待合室のようになっており、長椅子が置かれていた。その椅子には既に5人の人が座って居た。
男女比は男3人女2人だ。
俺が空いていた席に座って10分程すると、また一人の若い男性が入って来た。
「これで全員となりましたので、今から帝都行のコミューターに案内致します」
俺たちは案内人に導かれるようにコミューターに向かう。
するとそこには大型バスのような乗り物がある。大型バスと言っても作りはかなり重厚になっており、宇宙空間に行ってもおかしくない乗り物だ。
そして、中に乗り座席に座ると扉が閉まり、コミューターはゆっくり出発した。窓から外を見ると今まで暮らしたヘーデルランド星が下の方に遠ざかって行く。
初めて見る我が母星だが。青い星であり、前世で見た地球のようでもあった。
1時間程すると到着を知らせるアナウンスが聞こえる。
「間もなく、ヘーデルランド外宇宙港に到着しますので、降車準備をお願いします」
そのアナウンスが終わってからほどなく、宇宙空間に浮かぶ建造物の中にコミューターは入っていった。
窓から外を見ていると人が渡る通路が建物側から出て来て、このコミューターに接続しようとしていた。
前世の空港にあった空港のボーデングブリッジに似ている。
「降車準備が整いましたので、ご案内致します。なお、重力コントロール出来ておりませんので、イミグレーション室に入るまで、無重力になります。
従いまして、移動用ハンドルをお捕まり下さい」
そう言ったって、既に無重力になっている。しかも気分が悪い。これは宇宙酔いというものだろう。
「うっっ」
そう言うと、一緒に乗っていた一人が前もって渡されたエチケット袋に顔を埋めた。
俺も釣られて吐きそうになるが、必死に我慢する。
だが、我慢できない人も二人居た。
それでもボーデングブリッジを渡り、イミグレーションと呼ばれている部屋に入ると重力が戻った。するとどうであろう。あんなに気分が悪かったのに、何事もなかったように気分が良くなった。
そのイミグレーションと呼ばれる部屋には窓口が一つあり、そこには受付の女性が座っている。
「では順番に行いますので、荷物を持って並んで下さい。手続きが終わったら横の扉から先に進んで下さい」
何故か俺が一番先頭に並んだので、窓口に行く。
「名前は?」
「アルディ・モーディスターです」
「アームデバイスを返却したので、これからはこれが身分証になります。どこに行くにもこれを身に付けておいて下さい」
渡されたのは顔写真がある1枚のカードだ。大きさは前世のクレジットカードほどで、銀色だが素材は何か分からない。
アルミのようでもあるが、かなり軽い。
だが、驚いた事にそこには文字が書かれていた。だが、文字の教育を受けていない俺にはそれが何と書いてあるのか分からない。
恐らく、俺の名前が書かれているのだろう。
「ここに書かれているのは文字ですか?」
俺はその受付の女性に尋ねてみた。
「そうです。それと認識番号です。これを専用の機械に通すと、あなたの出身地連絡先が分かります」
恐らく上段にあるのが認識番号、下段にあるのが名前だろう。俺は自分の名前の文字を初めて知った。
その文字は前世でのアルファベットに似ているとも思った。
渡された身分証と荷物を持って、指示された扉を開け進んで行く。すると広い待合室に出た。
「アームデバイスをお持ちの方はこちらの方へ。身分証をお持ちの方はこちらの装置をご利用下さい」
係員が案内している。俺は身分証持ちなので指示された方に行く。
「この装置に身分証をタッチして先に進んで下さい」
これは前世での駅の改札に似ている。俺はそこに身分証をタッチするとさらに先に進んだ。
するとまた部屋があり、係員が叫んでいる。
「このボーディングブリッジから先は無重力になります。移動ハンドルをご利用下さい」




