第59話 進化の過程
「今、戻りました」
「アルディ殿、ご苦労だったな。ところでそっちの女性は? また新しい奥さんか?」
「タシューさん、冗談は顔だけにして下さい」
「俺の顔のどこが冗談だ」
最近では、こんな軽口も言えるようになった。
「こちらは冒険者パーティ『紅い百合』のリーダーで『キャロット・リリィ』さんと言います。そのキャロットリーダーが、お二人にお話があるそうです」
俺の話を引き継いだキャロットリーダーが話を続けた。
「実は我が艦の改修をお願いしたい。特にエンジン関係に手を入れたい。ただし、予算は帝国金貨200枚しかない」
「帝国金貨200枚ならエンシジン関係ぐらいしか改修出来ないな」
「それで良い。どのくらいの改修になるのか?」
キャロットリーダーの食い入るような口調にチャーリー博士がたじろぐ。
「ちょっと、待ってくれ。今、計算してみる」
チャーリーはコンピュータとアームデバイスを操作していたが、キャロットリーダーに語り出す。
「エンジンはアルディの艦と同じ『反転融合粒子加速ワープドライブ』に換装出来ると思う。エンジンを換装すれば船もある程度余裕ができるので、そこをどうするかは指示してくれ。余り、高機能でなければ帝国金貨200枚で出来ると思う」
「その換装するエンジンの性能は?」
「1回あたりのワープ距離は3000光年」
「さ、さんぜんこうねん! 直ぐに換装してくれ」
「まだ、あるぞ。エネルギー充填が不要だから、連続ワープが可能だ」
「な、なんだって! 連続ワープが可能だって! そんな馬鹿な」
「補助エンジンだけでも短距離ワープが可能」
「う、嘘だろう?」
「嘘ではない」
「そ、それが本当に帝国金貨200枚で出来るのか?」
「ああ、可能だ」
「なら、是非やって欲しい」
「ただ、今直ぐは出来ない。それはアルディの艦の建造があるからだ。完成まであと1か月程掛かるからそれ以降だな。換装にかかる期間は1か月だ」
「う、うむ、分かった。今の話は艦に戻ってクルーやパーティ仲間に話そう。恐らく反対意見は出ないと思うが、一応納得して貰う方が良いからな」
キャロットリーダーは一呼吸置いてから、今度は俺の方を向いた。
「アルディ殿に話がある。レッドリリィ号のエンジン換装後に我が艦と僚艦になって欲しい」
僚艦って何だ? 単なる友達の事か?
「僚艦になるのは良いのですが、僚艦って何をするんですか?」
「複数で対処するクエストに我が艦と一緒に行うとかだ。クエスト料は基本半々になる」
「それは別に構いませんよ」
「で、では、エンジン換装後に僚艦としてアルディの艦の横に居させてくれ」
「はい、分かりました」
キャロットリーダーが部屋から出て行ったらリゼルロッテ、イリューシャそれにシュリーが俺の所に詰め寄って来た。
「旦那様、キャロットリーダーが言ってた『僚艦としてアルディの艦の横に居させてくれ』とはどういう事でしょうか?」
「いや、そのままの意味だろう」
「とてもそうは思えませんでした」
「それはどういう意味だ」
「そのうち、旦那様の妻として横に居させてくれなんて言い出さないですよね」
「それは無いだろう」
「もう、これ以上は妻を増やさないで下さいませ」
「う、うん」
「声が小さい」
「は、はい」
「いいですか、ちゃんと言いましたからね」
それを見ていたチャーリーが俺に言って来た。
「海賊退治の立役者アルディも嫁達には敵なわんか、ははは」
「いや、チャーリー博士、揶揄うのはやめて下さい」
これにはリゼルロッテも俺の味方になってくれた。
「私達は旦那様の子を早く授けて貰わねばなりません。婦人だけ増えて子が無いというのは困るのです」
リゼルロッテの言葉にチャーリーが反論する。
「リゼルロッテ、それは無理だろう」
「どういう事でしょうか?」
「リゼルロッテ、イリューシャ、それにシュリーもそうだが、君達にアルディの子は産めんよ」
「「「ええっ、それは何故です?」」」
「簡単だよ。進化の過程が違うからDNAや染色体といったものが、まったく異なるからな。
アルディは猿が進化したもの、リゼルロッテはうさぎが進化したもの、イリューシャは魚が進化したもの、そしてシュリーの先祖は植物だ。
それでどうして猿の子供が産める?」
「「「ええっ!」」」
3人ががっかりして、床に座り込んだ。
「チ、チャーリー博士、私達が旦那様の子供を持つ事は出来ないんでしょうか?」
縋るような眼でリゼルロッテがチャーリーを見る。
「人工授精もDNAが異なるから無理だし、細胞培養も同じ理由で無理だ。
あと残るとしたら、養子か人族の女性を第四婦人に迎えて、その人に産んでもらうしかない」
「よ、養子か第四婦人ですか?」
「考えられるとしたら、それくらいだろう」
「旦那様、第四婦人は人族に限ります」
いや、もう第四婦人の話にするなよ。
「アルディ、後1ヶ月で進水だが、それまでシュミレーション装置を使って艦の性能を引き出せるように訓練してくれ」
「分かりました」
「えーと、奥方達も各々の役割に応じた訓練のメニューがある。ただ、アルディのパーティには治癒士はいないよな?」
「まだ治癒士はいません。一応候補者は居るのですが」
「なら、治癒士を確保してくれないか。今製作している治癒カブセルはかなりの高性能で、治癒士にも100%の扱い方をマスターして貰いたいからな」
「分かりました」
俺はチャーリーとの話を嫁達とジョンに話した。
「それで候補者というのは『マーガレット』の事だな」
ジョンが言う。マーガレットは冒険者訓練校の同級生で、現在星間病院船に乗っている治癒士だ。
もちろん、冒険者訓練校で同級生だったシュリーもマーガレットを知っている。
「アームデバイスでマーガレットと連絡を取れば良いんじゃない?」
「それが連絡がつかないんだ。どこか辺境の惑星で、仕事に当たっている可能性が強いと思う」
「星間病院船だったら、かなり辺境の地に行くから。いっそ、帝都の王立セントラルホスピタルに聴いてみたら?」
「個人情報については教えてくれないよ」
「辺境地に行っている病院船の情報は分かるでしょう?」
「セントラルホスピタルのホームページに掲載されているか」
「そうそう、それよ、セントラルホスピタルのホームページを見てみましょう」
俺はアームデバイスで王立セントラルホスピタルのホームページを開いてみた。そこには病院船の派遣惑星が表示されている。
そこには5艦の病院船が辺境地へ派遣されている。このうちのどの病院船にマーガレットが乗っているかは不明だ。
病院船が派遣されている辺境地を全て廻るとなると2年位かかる事になる。
「アルディ、どうする?」
ジョンが聴いて来た。
「取り敢えずイリューシャに治癒士をやって貰うしかない。イリューシャはローランド星で治癒士の訓練を受けているから、治癒士もやれると思う」
イリューシャも治癒士として訓練を受ける事を了承したので、早速訓練に掛かって貰う。
ジョンは航海士として既に訓練を受けているので、引き続き航海士の訓練を続行して貰う。
俺は新しいスペースコミューターの訓練を受ける事になった。しかし、これは今までスペースコミューターとして使用してきたが、前方にドッキングするので、もうスペースコミューターではなく、一つの攻撃機になっている。
だが、スペースコミューターの機能もあるので、この機体単体で地上への降下も可能だ。
また、地上降下用のスペースコミューターは別に格納庫にある。
これについては、チャーリー博士も同意見だった。
「アルディ、だとしたら、今までのスペースコミューター010号ではなく、名前をつけたらどうだ?」
「名前ですか?」
「それだけじゃない。この船にも名前をつける必要がある」
「船の名前ですか? でも冒険者のパーティ名が船の名前になってますよね。冒険者パーティ『紅い百合』ですと『レッドリリィ』号のように。だとしたら、パーティ名も決めなければなりませんか?」
「いや、それは冒険者パーティが面倒臭さがって艦名をパーティ名にしているんだ。だから、特にパーティ名と関係してなくても良いぞ」
「ちょっと相談させて下さい」




