第58話 相談があるのです
さすがに領都は木の家でなくて、高層ビルが多く建っている。それでも大木の有る公園や池が多く点在しているのは他の星より多い感じがする。
高層ホテルの一室から下を見ると、夕日が落ち街には他の領都と同じように街灯が灯り出した。
「夕食はホテルのレストランに行こうか?」
「それは構いませんが・・・」
リゼルロッテが答えるとイリューシャとシュリーも同意した。
「チェルシー、食事に行って来るから留守番を頼む」
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
チェルシーを部屋に残し、最上階にあるレストランに来た。最上階のレストランだけあって、さすがに高級レストランだ。
4人掛けのテーブルに座るが、大体このような場合、座る位置は自然と決まっている。
俺の前にはリゼルロッテ、リゼルロッテの横にはイリューシャ、そして俺の横はシュリーといった具合だ。
「旦那様、何故今日は街に出なかったのですか?」
「今日はシュリーとの結婚を許して貰った日だから、シュリーのために祝おうと思って。逆にシュリーには、このようなホテルのレストランで結婚を祝う事を許して貰いたい」
「そ、そんな、私の為に・・・。うっ、うっ」
「シュリー泣かないで」
イリューシャが慰める。
「ううん、嬉しいのです。嬉しくて涙が出ちゃうんです」
「じゃあ、各自好きな物を頼んで」
「野菜サラダ」
「魚料理」
「フルーツ」
お前らブレないな。折角、高級レストランに来たのだから、もっと高級な物を頼めよ。
翌日は11:00出港だが、早めにフォルテウス号に戻った。
艦橋に行くと、クルーが出港準備をしていた。
「ベッチ艦橋、ただ今戻りました」
「おお、アルディ君、シュリーさんのご両親と逢ったのだろう。どうだったね?」
「何か思ったよりはすんなり認めてくれて、どっちかと言うと拍子抜けでした。
娘をやるから一発殴らせろくらいは覚悟していたのですが」
「ははは、エルフ族は我々とは違う環境で生活して来たから、我々の常識では計り知れないよ」
「そうですね」
そんな話をしているところへ冒険者パーティ「紅い百合」のキャロットリーダーもやって来た。
「アルディ殿、実は折り入って話があって来たんだ」
「何でしょうか?」
「出来れば人に聴かれたくないので、レッドリリィのリーダー室で話をしたいのだが」
「ですが、後少しで出港ですよ」
「では、帝国領に着いていてから宇宙ドックに送るので、その時に話をしないか?」
「でも宇宙ドックへの送迎は依頼に入ってないと思ったのですが・・・」
「そこは話を聴いて貰う代償ということで」
「分かりました。それで構いません」
2日後、フォルテウス号とレッドリリィ号は帝国宇宙港に到着した。
護衛の契約はここまでである。乗客の下船と積荷の荷役が終わったら、フォルテウス号は1か月間ドック入りするということだ。
ドック明け後は資源惑星への資材運搬が決まっているらしい。
俺達はフォルテウス号のベッチ艦長とクルーに挨拶をしてから、レッドリリィ号に乗船した。
そして、レッドリリィ号で宇宙ドックまで送って貰う。
俺たちはキャロットリーダーと話をするために、レッドリリィ号のリーダー室に来た。
「それで、キャロットリーダーのお話とは何でしょうか?」
この場には俺と嫁達、向かいにはキャロットリーダーとレッドリリィ号艦長の『モルテ・リベラ』が居る。
「実はアルディ殿の艦を建造していると聴いてな。我々の船もそこで改修を行いたいと思うのだが、そのチャーリー・ゲレン殿にその改修を依頼したいと思っている」
「チャーリーにですか?」
「そうだ、エンジン関係を大幅に改修したいのだ」
「エンジン改修をチャーリーに頼むと言うなら、単にエンジンを整備すると言う訳ではないのですね?」
「そうだ、アルディ殿の艦と同じエンジンにしたい」
「でも、どうしてその事を知ったのですか?」
「キャロル会長から話を聴いてな」
「そうだったんですか? でも、改修費用とかはどうするんですか?」
「この前貰った帝国金貨があるから、あれを充てようと思う」
海賊退治で得た報奨金を艦の改造費に充てるようだ。
「それは皆の合意ですか?」
報奨金を艦の改修に充てるのをクルー全員が了承していないと、この改修は難しい。
「それは皆で話し合った結果だ。私が報奨金を皆で分けると言った時にクルーやパーティメンバーはもっと有効な事に使おうと言ってくれたんだ。
もちろん、それに反対するクルーやパーティメンバーはいなかった」
キャロットリーダーはそこで一旦、言葉を区切った。
「それで、何に使うかという議論をした結果、艦の機能向上に使おうと言う事になったんだ」
「分かりました。チャーリー博士はご紹介しましょう。ですが、チャーリー博士と宇宙ドックのオーナーのタシューさんのご理解を得る必要があります」
「それは、もちろん了承している」
キャロットリーダーと話をした2日後に、レッドリリィ号は宇宙ドックに到着した。
「投錨する。アンカー発出」
艦橋の窓から外を見ると錨がレッドリリィ号から宇宙ドックに向けて飛んで行く。
宇宙ドックにはボーディングブリッジが無いので、スペースコミューターで移動する必要がある。
レッドリリィ号の後部コーテナーからスペースコミューターで宇宙ドックのコーテナーに来ると人工重力があった。
宇宙ドックのコーテナーから中央操作室に来ると、チャーリー博士とタシューさんが図面を広げて相談している姿があった。




