第55話 家族とのひと時
しばらくして父と兄が帰って来て母と姉と同じリアクションを取ると、やはり女性達の事を尋ね、そして同じように驚いた。
それから、俺はワームホールに捕まり、未知の惑星に飛ばされた事。そこで知り合った「ローランド」と名乗る男性と3年間暮らした事を話した。
そして、その星で星獣に襲われていたリゼルロッテとイリューシャを助けて妻とした事などを話した。
その後、ワームホールで再び戻って来た俺は正式に冒険者になり、偶然知り合った「キャロル」商会の護衛にあたり、ユーリー辺境領に運搬した後に海賊団を討伐した事を話した。
「なんだか大きな海賊団が討伐されたという話が一時期、大きな話題になっていたが、あれはアルディがやった事なのか?」
「俺だけでやった訳でなくて、『紅い百合』という冒険者パーティと共同でやったんだ。
で、その時『紅い百合』の鑑定士で冒険者訓練校の同級生だったシュリーと再会して、妻としたって事さ」
「その3人は分かったが、この人は?」
父はチェルシーの事を言った。
「これはヒューマノイドの『チェルシー』だ」
「えっ、ヒューマノイド? 人間じゃないのか?」
「感情AIという高度な電子頭脳を持っているけど、身体は機械なんだ」
「信じられん。もう一つ、信じられんのが、リゼルロッテさんとイリューシャさんだ。リゼルロッテさんにあるこの耳は?」
「リゼルロッテはうさぎ族って言う種族で、イリューシャは人魚族って言う種族なんだ」
「二人共、人間じゃないのか?」
父が言うのも無理はない。このヘーデルランド星の領都中心部以外では 人族以外見た事が無い。
日本なら田舎で外人を見た事が無いのと同じだ。
「いや、二人共人間だけど、種族が違うと言う事さ。宇宙に出ると色々な種族の人が居るんだ。
シュリーだって、エルフ族っていう種族なんだ」
「へー、初めて見た」
まあ、田舎に外人が来たみたいなものだから、家族全員が驚いている。
「良い機会だから自己紹介してくれ」
俺はリゼルロッテ達に自己紹介するように言う。
まず第一婦人のリゼルロッテが立ち上がった。
「お義父様、お義母様、お義姉様、お義兄様、初めてお目に掛かります。リゼルロッテと申します。見ての通りうさぎ族です。よろしくお願いします」
リゼルロッテは簡単に挨拶して着席した。
次に立ったのはイリューシャだ。
「お義父様、お義母様、お義姉様、お義兄様、初めてお目に掛かります。イリューシャと申します。私は人魚族にりなります。今後ともよろしくお願いします」
イリューシャも簡単に挨拶して着席した。
次に立ったのはシュリーだ。
「お義父様、お義母様、お義姉様、お義兄様、初めてお目に掛かります。シュリーと申します。私はエルフ族になります。リゼルロッテ、イリューシャ同様よろしくお願いします」
シュリーも簡単に挨拶して着席した。
最後に立ったのはチェルシーだ。
「義父上、義母上、義姉上、義兄上、私はチェルシーと申す者。見ての通り第四婦人でござる。以後、よろしくお頼み申します」
いや、お前は誰だよ。どうして侍言葉なんだ。それに、第四婦人って何だ。
チェルシーの挨拶を聴いた両親と兄弟が固まった。
「あ、あの、父さん、母さん、こいつは第四婦人ではなくて、さっきも言ったように、ただのヒューマノイドでまだ人工知能が学習しきれてない部分があるから」
「よよよっ、ご主人様、私の事を玩具にしたのですね、よよよっ」
「いい加減にしろ」
俺が怒ったので、チェルシーが黙った。
固まっていた父が言葉を繋いだ。
「えーと、リゼルロッテさん、イリューシャさん、シュリーさんにチェルシーさんだね。
私はアルディの父で『ワーゼル』で、隣に居るのが妻の『アーリア』、娘の『モニカ』と息子の『クワイデル』だ。こちらこそよろしく頼むよ」
父の言葉に全員が頭を下げた。
「しかし、アルディ無事生還したのなら、どうして直ぐに連絡をくれなかったんだ。心配していたんだぞ」
「そのローランド師匠からの伝言やらユーリー辺境伯への護衛やらで忙しくて、中々連絡しようがなかったんだ。
今回、ヘーデルランドへの護衛がたまたまあったので、ここに来れたという訳さ」
父に代わって今度は兄が聴いて来た。
「アルディ、さっき『キャロル』商会とか言ってたよな。会長のエリー・キャロルさんと知り合いなのか?」
「護衛の仕事をくれるお客さんかな」
「凄い人と知り合いになったもんだ」
「えっ? そんなに凄い人なの」
「凄いってもんじゃない。3年前に努めていた会社を辞めて自分の商会を立ち上げた人で、ネット通販では即日配達、豊富な品揃え、安価な価格設定で一躍時の人だ。
その右腕と言われる『エイチェル・エーシー』と言われる若い美人交渉人が優秀で、何でも彼女がいなかったら今のキャロル商会は無いとまで言われてる人だ」
「ええっ、あのエイチェルさんが・・・」
「知っているのか?」
「ええ、今、船を造って貰っています」
「お前、宇宙艦を造っているのか?」
「まあ、冒険者となるなら必要ですから」
「凄いな、アルディは俺達の知らない世界に行ってしまった」
兄が遠くを見る目で俺達を見る。
兄との話が終わると、今度は姉が俺に話し掛けてきた。
「ね、ね、アルディ、来月、私達の結婚式があるんだけど、出席できる?」
「姉さんの? 姉さんの婚約者も知らないんだけど」
「あっ、そうか、ちょっと呼ぶわね」
姉はアームデバイスで婚約者を呼び出しているようだ。
その間、今度は母が俺に話し掛けてきた。
「アルディ、あなたはその女性達を妻だと言ったけど、本人達は納得して妻となったの? もし、違うならその・・・」
母の言葉に答えたのはリゼルロッテだ。
「お義母様、私達は納得して夫アルディの妻となったのです。決してお義母様の考えられているような手段で強制的に妻となった訳ではありません」
「それなら良いけど、今はほら、奴隷売買とか聴いた事があるし、本人の意志でないならどうしようかと思ったの」
「決して私達は、そのような者ではありません」
リゼルロットが強く言うと、イリューシャとシュリーも頷いた。
「私は、ご主人様に強制的に人工頭脳に服従の命令を書き込まれました」
チェルシーが爆弾発言をした。
「チェルシー、誰が服従の命令を書き加えただって? 初期設定をしただけだろう」
「その初期設定で私のご主人様はアルディ様と認識しましたので、強制的に書き込まれたと同じです」
「お前、一度リセットしてやろうか?」
「いえ、リセットは困ります。また一から学習し直しになりますので」
そこに婚約者と連絡が取れた姉のモニカが帰って来た。
「マイクも直ぐに来るって。アルディが帰って来たと言ったら、びっくりしていたわ」
すると庭にエアロパイロットの音がしてインターホンの音が鳴った。
「来たみたい」
姉が玄関に出迎えに行くと、直ぐに日焼けした男性が入って来た。入って来た男性は俺とその周りに座る女性達をみて驚いた顔をした。
「あ、あの僕がモニカの婚約者の『マイク・ゴンザ』です。アルディ君始めまして」
姉の婚約者のマイクが挨拶してくれたので、俺も名乗り、妻達も紹介した。
「ええっーー、奥さんが既に4人も居るのか」
「いえ、3人とヒューマノイドです」
「僕はモニカだけで十分だよ」
「そうよ、マイクの愛は私だけのものよ」
「モニカ」
「マイク」
家の中で、何でこんな茶番を見せられなきゃならん。
それを見ていたリゼルロッテが言った。
「モニカお義姉様が羨ましい。だって私には3分の1の愛だもの」
「リゼルロッテの言う通り。私達への愛は3分の1しかないわ」
イリューシャもリゼルロッテに続いて言う。
「俺の愛は普通の人の3倍はあるから3分の1にしても十分だと思う」
「「「それならば良し」」」
「あのう、私への愛はどうなっているのでしょうか?」
ヒューマノイドのチェルシーが言った。
「お前はAIだから既にアイ(AI)が詰まっているだろう」
「ああっ、そうでした。私には既に、ご主様のアイが詰まっていました」
このAI、こんなで大丈夫か。
そしてマイクも姉との結婚式に是非参加してくれと言う。
「結婚式って、何日?」
「11月15日の日曜日に地区の集会場で行う予定なの」




