第54話 故郷へ
レッドリリィ号は、その日のうちに帝都宇宙港に入った。隣にはキャロル商会の商船が停泊している。
「アルディ殿、明日には出港だが、帝都に降りるか?」
キャロットリーダーが俺に聴いてきた。
「いえ、商船の護衛になりますから、このまま商船に行きます」
俺は、リゼルロッテ、イリューシャ、シュリーそれにヒューマノイドのチェルシーを連れて商船の艦橋に向かった。
「キャプテンベッチ!」
「おおっ、アルディ君。どうしていた、元気にしていたかい?」
俺はベッチ艦長と握手をした。
「今回も護衛をする事になりました。よろしくお願い致します」
「何を言う。お世話になったのはこっちだ。会長から海賊退治でボーナスが出たんだが、あれはギルドからの報奨金だと後から知ったよ。
クルーもボーナスが出たから全員君に感謝しているよ」
「アルディ君、ありがとう」
艦橋に居たクルーがお礼を言ってくれた。
「クルーも君が居てくれれば心強いだろう。ところで、その美人は誰だ? また新しい嫁か?」
「私はご主人様の玩具です」
俺が答えようとしたが、その前にチェルシーが答えた。
「えっ、玩具だって・・・」
ベッチ艦橋が驚いたような顔をしている。
「チェルシー、勘違いするような事を言うな。これはチェルシーと言って、ヒューマノイドなんです。AI学習のため、今回同行させる事にしたのです」
「成る程、そういう意味で玩具と言ったのか。でも、自分で自分の事を玩具と言うなんて、自分の立場をわきまえている出来たヒューマノイドだな」
「優秀ではあると思いますが、どこか人工知能が暴走しているような感じがします」
「ふむ、学習させて行けば、そのうち正常になるのではないかな」
「ええ、そうします。優秀である事は認めますので」
「ところで、君達専用のエアロパイロットとアトラスアクターはレッドリリィ号に積んであるのかね?」
俺とリゼルロッテそれにイリューシャのエアロパイロットとアトラスアクターはローランドから送られた特別製だ。
それは現在レッドリリィ号に積んである。
「こちらに乗艦させて頂くので、こちらに移動します」
「では、後部コーテナーを開けさせるから、そこから持ち込んでくれ」
ベッチ艦長と挨拶を終えた俺達は一旦、レッドリリィ号に戻ってから、再び自分のエアロパイロットとアトラスアクターを持って、商船フォルテウス号に来た。
再び入った艦橋では前回、ユーリー辺境伯領に行ったクルーも多く、皆から言葉を掛けられたり、握手を求められた。
そこにベッチ艦長が艦橋に入ってきた。
「艦長のキャップソン・ベッチだ。これよりヘーデルランド領へ向けて出港する。渡航期間は6日間だ。なお、今回もアルディ・モーディスター君とその奥方様達が護衛についてくれる事になった。
みんなもよろしく頼む。さあ、出港だ。錨を上げよ」
「抜錨!」
「フォルテウス号、係留解除。港を離れます」
「1500メル(1500m)で船首回頭後、微速前進」
「船首回頭完了、微速前進で港を出ます」
右に赤い灯台、左に白い灯台を見て、宇宙港を出た事を確認する。
フォルテウス号に続いてレッドリリィ号も港を出て来た。
「レッドリリィと同期航行を取れ」
「レッドリリィと同期航行を取りました。これよりこちらの操舵で航行します」
「50,000宇宙ノットでワープエリアに向かう。ワープエリア到着後、ヘーデルランドに向けてワープインを行う」
ベッチ艦長の指示が次から次に出され、クルーはそれを忠実に行う。
「艦長、今回の輸送品は何ですか?」
「今回は農作業用機器、養殖用資材、農畜産用資材が主な運搬になる。それとヘーデルランドに資源衛星があるのを知っているかな。
そこの資源採掘の機材も運搬する。
帰りはヘーデルランドで生産された穀物、鮮魚、畜産物などになる。途中のエルフレッドランドではヘーデルランドで生産された食料を半分降ろし、替わりに木材、紡績、レアアース類を積み込む」
「だからヘーデルランドに寄港するんですね?」
「うむ、そうだな。一つの星で全て賄う事は出来ないから、こうやって惑星事に生産出来るものを交換して行く訳だな」
2時間後にワープエリアに到着した。
「ヘーデルランドに向けてワープする。レッドリリィとの連携を確認」
「レッドリリィ、ワープ準備整っています」
「よし、ワープイン」
「ワープイン」
艦長の指示で艦がワープに入った。艦橋のモニターにてフォルテウス号の後方に赤い外装のレッドリリィ号が表示されている。
窓の外はワープ中は真っ暗になるので、後方カメラにはレッドリリィ号は映っておらず、この艦だけが暗闇の中にいる状態である。
3時間程するとワープアウトした。ワープ距離は300光年だ。ここで、レッドリリィ号は「ミジハロスキー粒子」の充填を行う。3時間充填し、また3時間ワープするということを繰り返して行く。
4日目には故郷の惑星である「ヘーデルランド」星が見えてきた。青い星に白い雲があり、前世の地球によく似ている。
「1時間後にヘーデルランド外宇宙港に接岸します。下船の方は準備をお願いします」
今回のフォルテウス号には乗客も乗船している。その人達へのアナウンスだろう。
「アルディ君、君は実家に行きたいだろう。今回は3日間の停泊期間があるから、行って来れば良い。
停泊期間中の安全は、ヘーデルランド治安当局が行ってくれるからな」
「ご配慮、ありがとうございます。お言葉に甘えて、下船させて頂きます」
俺達はエアロパイロットやアトラスアクターをフォルテウス号内に残し、徒歩で生家に向かう事にした。
もちろん、嫁達とヒューマノイドのチェルシーも一緒だ。
ヘーデルランド星の地上宇宙港との間に軌道エレベータが無いので、スペースコミューターでの降下になる。
外宇宙港からスペースコミューターで地上宇宙港に降下し、そこで入国手続きを行い、そこからはエアロビークルで生家に向かう。
俺達が乗ったエアロビークルは、俺の生家の前で停止した。そこにはちょっとだけ古びたが、見慣れた家があった。
道路から歩いて玄関に行き、玄関のインターホンを押す。
呼び出し音が家の中に響いているのが、外に居る俺の耳に聴こえる。
「はーい」
懐かしい母の声がした。
「ガチャ」
玄関扉が開くと、そこには多少老けた母の顔があった。
母は俺の顔を見ると驚いた顔をして
「アルディなの?」
と聴いて来た。
「そうだよ、母さん」
「ああっ、アルディ!」
母は俺に抱き着いて来た。
「夢でも良い。夢でも良いから、もう一度逢いたかった」
「夢じゃないよ」
「あなたが死んだって聴いて、信じられなかったの。さあ、中に入ってゆっくりして頂戴。そして、今までの事を話して」
そこまで言った母が、俺の後ろに居た女性達に気付いた。
「えーと、その方たちは?」
「俺の妻達なんだ」
「ええっ! あなた結婚したの?」
「ま、まあ、そういうことで。それについても話すよ。でも、父さんや姉さん、兄さんにも聴いて貰いたいから、全員が揃ってからで良いかな。
それまでは、この家の事を話してよ」
母は直ぐに父、姉、兄にアームデバイスで連絡をすると、直ぐに帰って来ると言う事だった。
「モニカは結婚が決まったの。男爵家のメイドも辞めて今はアグリ集会場で事務員をしているわ。
クワイデルは父さんと一緒にプラントで働いているわ」
モニカは姉で、クワイデルは兄である事を嫁達に教える。
10分程するとヒューンというエアロパイロット特有の軽い音がし、玄関扉を開ける音がしてリビングに姉が入って来た。
姉はリビングの椅子に座っている俺と目が合うと
「アルディ?」
と母そっくりのリアクションで聴いて来た。
「そうだよ、姉さん」
「ああっ、アルディ!」
俺に抱きついて来るのも母と一緒のリアクションだ。
「それで、この女性達はどなた?」
これも母と一緒だ。
「えっと、妻達」
「ええっ、あなた私より先に結婚したのー?」




