第53話 ついて行きます
1週間程、宇宙ドックで寝起きしていたが、エリーさんから再び護衛の依頼があったので、帝都に行く事になった。
迎えに来たのはレッドリリィ号だ。
赤い船体のレッドリリィ号は宇宙ドックにアンカーを降ろした。
「キャロットリーダー、お久しぶりです。またお世話になります」
「アルディ殿、またよろしくお願いする。ところで、その金髪の女性は誰だ。また嫁を貰ったのか?」
「これは『チェルシー』と言ってヒューマノイドです」
「ヒューマノイドだと? どう見たって人間じゃないか。触っても人間の肌のようだし」
キャロットリーダーがチェルシーの腕を触った。
「おやめください。セクハラで訴えますよ」
「いや、ヒューマノイドを触ってもセクハラにならないだろう」
「キャロットリーダー、なんか学習のやり方を間違ったみたいで・・・」
「ま、まあ仕方ないかもしれないな」
俺とリゼルロッテ、イリューシャ、シュリーそれにチェルシーがスペースコミューターでレッドリリィ号に乗り込む。服は一般服で乗り込むが、冒険者用のユニフォームとエアロパイロットとアトラスアクターは人数分をレッドリリィ号にコンテナで持ち込む。
艦橋に行くと昔シュリーの座っていた鑑定士の席に、新たな女性鑑定士が座っている。
シュリーはそれを見て懐かしそうな顔をした。
「シュリー、何か感じるものがあるか?」
「あの席に3年間座っていたんだと思うと、何だか懐かしい思いが出て来て・・・」
「紹介しよう。新しい鑑定士の『メルダ・フォード』だ」
「『メルダ・フォード』です。よろしくお願いします」
俺達は交互に握手した。
「皆さんから聴いています。シュリーさんは、かなり優秀な鑑定士だったと」
「いいえ、そこの席は、もうあなたの席だから、あなたがこのクルーに力を貸してあげてね」
メルダは潤んだ瞳でシュリーを見た。
キャロットリーダーに今回の航海について聴いてみる。
「それで今回の航海はどこに行くんですか? また、辺境領ですか?」
「いや、今回は、もっと安全なところで、『ヘーデルランド』領だ」
「ヘーデルランド」領。それは俺の故郷だ。
「『ヘーデルランド』に行くのですか?」
「そうだが、何かあるのか?」
「俺の故郷です」
「そうなのか。アルディは『ヘーデルランド』出身だったのか」
「はい、そう言えば、冒険者学校を卒業してから両親にも逢っていません。逢ってみたいです」
その時、シュリーの顔が目に入った。そういえば、シュリーの故郷である「エルフレッドランド」にも途中で寄港するんじゃないだろうか?
「もしかして、『エルフレッドランド』にも寄港しますか?」
「行くときは『ヘーデルランド』に直行するが、帰りに『エルフレッドランド』には寄る予定だ」
それを聴いたシュリーの顔が明るくなった。
「久しぶりに両親に逢える」
シュリーはとても嬉しそうだ。
それに対し、リゼルロッテとイリューシャの顔は暗い。二人には、もう戻ろうとしても戻る場所が分からないし、リゼルロッテには両親はいない。
イリューシャだって父親は居るが、自分の惑星に戻る手段がない。
それを考えると俺やシュリーには戻る故郷がある。
「リゼルロッテ、イリューシャ申し訳ない」
俺はリゼルロッテとイリューシャに謝った。
「どうして私達に謝るのですか?」
リゼルロッテが、俺にやや強い口調で言う。
「二人を帝国に連れて来たのは俺だ。もしかしたら前の星で暮らしていた方が、二人にとっては幸せだったのじゃないかと思うと後悔がある」
リゼルロッテ、イリューシャの以前の事を知っているシュリーも俺の言葉を聴いて、単純に喜んだ事を反省したのか、今は黙っている。
だが、リゼルロッテは強い口調で言った。
「でも、旦那様について行くと決めたのは私です。旦那様は私について行って後悔したと思わせないで下さい。
旦那様には私の人生を掛けているのです。旦那様は私を幸せにする責任があります」
それに対しイリューシャも言って来た。
「私だって、リゼルロッテと同じです。私は父よりご主人様を選びましたし、父もそれが娘の幸せだと思って送り出してくれたのです。
今更、私達二人に謝って欲しくありません」
「リゼルロッテ、イリューシャ・・・」
「あの、私だっていますから。二人だけを妻と思わないで下さい」
二人の言葉にシュリーが言う。
「でも、シュリーって、旦那様とまだ夜明けのコーヒーを飲んでないわよね」
「ねー、私達二人はもう何日も夜明けのコーヒーを飲んだ仲なのよ」
二人は俺より遅く起きるから、俺は未だにお前達と夜明けのコーヒーを飲んだ覚えがないが。
「わ、私だって、そのうちアルディと二人で夜明けのコーヒーを飲むわよ」
「それは無理だわ。だって私達二人が一緒だもの。それに夜明けのコーヒーって誰が用意するの?」
「そ、それは私が用意します」
「婦人順位が低い者が夜明けのコーヒーを用意する事で良いかしら。YES or NO?」
「YES」
「婦人順位が低いのは第三婦人である。YES or NO?」
「YES」
「第三婦人は上位の婦人の意見に従う。YES or NO?」
「YES」
「シュリーは第三婦人である。YES or NO?」
「YES」
「シュリーは第一婦人、第二婦人の意見に従う。YES or NO?」
「YES」
「と、言う事で今後は私やイリューシャの意見に従って頂戴。YES or NO?」
「YES!」
女の世界って怖いわー。
「痴話喧嘩はそろそろ終わったかな」
キャロットリーダーは三人の会話を遮った。
「では、帝都宇宙港に向けて出港する。抜錨せよ」
「抜錨!」
宇宙ドックに繋がれていたアンカーが引き抜かれ、レッドリリィ号に回収される。
「サイドスラスターを起動し、宇宙ドックから距離を取れ」
「サイドスラスター起動、宇宙ドックから離れます。距離1500メル(1500m)になります」
「微速前進。30分後にワープインする。各位準備」
艦橋が慌ただしくなった。




