第52話 ヒューマノイドも美人なら良し
入って来た美人を見て、リゼルロッテとイリューシャの顔が強張る。
「紹介しよう。感情AIヒューマノイド『AI-FON1型』だ」
「はっ? どういう事ですか? 感情AIヒューマノイド『AI-FON1型』って?」
俺達の疑問について、ジョンが説明してくれた。
「早い話、人間では無いということさ」
「「「「ええっ!」」」」
俺とリゼルロッテ、イリューシャ、シュリーが同時に声を上げた。
「いやいやいや、どう見ても人間ですよね? どこがヒューマノイドですか?」
「ちょっと、ブラジャーを取ってくれ」
チャーリー博士が言うと、AIヒューマノイドは自分でブラジャーを脱いだ。そこにはピンクの乳首がちゃんと2つあったが、その背中には小さなモニターがあった。
このモニターが、彼女が人間でない事を表している。
「ほ、本当だ。信じられない」
「これについては、まだ初期設定が完了していないので、アルディが初期設定してくれ」
「どうやって設定するんですか?」
「ジョイスティクで設定出来る」
「そのジョイスティクってどこにあるんですか?」
「その胸に2つあるだろう」
「えっと、乳首がありますが・・・」
「その乳首がジョイスティクになっている。前にモニターを付けれなかったので、後ろからこう手を回してジョイスティクを操作してくれ」
「こうですか?」
俺はヒューマノイドの後ろに回り、腕の下から手を前の方に回し、ジョイスティクを指で摘まんだ。
そして、上下にするとモニターのバーが上下左右し、その度に音が出るのだが、その音が「アン」と出る。
なので、2,3個上に移動すると「アンアンアン」と音が出る。
「あのさ、これって誰の趣味ですか? ちょっとやり過ぎじゃないですか?」
「すまん、俺の趣味だ」
チャーリー博士が言う。
「だが、アルディ、お前も悪い気はせんだろう?」
「まあ、そうですね」
その瞬間、リゼルロッテとイリューシャから両脚を踏まれ、胸をシュリーから肘打ちされた。
「ま、まあ、そうだな、まずはそのヒューマノイドに名前を付けてやってくれ。いつまでもヒューマノイドじゃ呼びにくかろう」
チャーリー博士が言って来たので、俺はジョイステックを使って名前を入力する。AIを使っているというのに、名前の入力だけはジョイスティクなのは旧式を思い出させる。
「えーと、何にしようかな。チャーリー博士が製作者だから、チャーリー博士から『チェルシー』でどうだろうか? リゼルロッチ、イリューシャ、シュリーどうだろう?」
「「「ご自由に!」」」
「何、怒っているの?」
「「「別に何も怒ってない!」」」
「じゃあ、『チェルシー』にするな」
「「「フン!」」」
「『チ・ェ・ル・シ・ー』と」
名前を入れて決定ボタンを押すと、今までただの機械仕掛けだったヒューマノイドが人間のように動きだした。
「私は『チェルシー』です。私のご主人様、今後ともよろしくお願い致します」
チェルシーは深々と頭を下げた。
それだけだったら良かったが、チェルシーは巨乳を剥き出しのまま俺の腕に抱き着いて来た。
「ご主人様、私は何でもご主人様の言う通りにしますので、決して捨てないで下さいませ。ポイ捨て禁止です」
「チャーリー博士、これも仕様ですか?」
「まあ、趣味だな」
「どうにかしてくれ」
「感情AI仕様だから、そのうち恥ずかしいと言う事も学習するだろうから、それまで我慢してくれ」
「い、嫌だー」
「ご主人様、私を好きにして良いのよ」
それを見ていたリゼルロッテとイリューシャがキレた。
「こら、このオンボロロボット。私達の旦那様から離れなさい」
「あなた、何者?」
「オンボロロボットに何者って言われる筋合いはないわ。私はこの人の妻よ」
「ツナ? マグロって事かしら。どうせ夜もマグロなんでしょ」
「キー、誰がツナよ。妻よ。このオンボロ解体してやる」
「こんな女が妻なんて、ご主人様が可哀そう。これからは私が、ご主人様のために何でもしますから、ご心配いりません。
この女こそ、廃棄して下さい」
「キー、誰が廃棄よ」
リゼルロッテがうさぎ耳を立てて怒った。
「イリューシャ、何か言って」
「私もリゼルロッテが廃棄される事は賛成かな」
「ちょっと、イリューシャだって、あのオンボロロボットに妻の座を取られるのよ」
「それは困るかも」
「そうでしょう。シュリーも、あなたより、あのオンボロが第一婦人になるのよ」
「それは、ちょっと抵抗があるかも」
「ほら、あなた達も何か言って頂戴」
口の達者なシュリーが、ここで出て来た。
「チェルシーとか言ったかしら。あなたにとってアルディは何?」
「アルディはご主人さまです」
「私達にとってアルディは夫なのよ。夫とご主人様とどっちが上だと思う?」
「情報解析中。夫とご主人様では夫の方が上と判断しました」
「ではアルディを夫する私達の方が上であるわね」
「解析結果、完了。アルディを夫とするあなた達の方が、アルディに近いと判断致します」
「アルディにとって妻である私達の方がアルディに近い。YES or NO?」
「YES」
「で、あるならば、あなたは私達の指示に従わねばならない。YES or NO?」
「YES」
「私たちは命じる。あなたは直ぐにアルディから離れる必要がある。YES or NO?」
「YES」
チェルシーが俺から離れた。
「さすが、シュリー、感謝するよ」
「まさか、そのロボットまで妻にするとか言い出さないわよね」
「まさか!」
その後、いくつかの設定を行って服を着せた。
「チャーリー博士、このチェルシーのエネルギーは何ですか?」
「エネルギーは小型の『陽電子融合炉』になっているから、後100年はエネルギー要らずで動くぞ。ただし、『陽電子融合炉』の交換の際は、もう一度再設定が必要だが」
つまり、エネルギー補充は不要って事ね。
「それで新しい宇宙艦の完成はいつ頃ですか?」
「後3か月ほどだな」
「そんな短期間で・・・」
「今の建造技術はそんなもんだ」
「それで、コパイロットはチェルシーがやる訳ですか?」
「ふむ、チェルシーは中々優秀だぞ。学習させればさせる程優秀になっていくがな。ただ、問題もある」
「何ですか?」
「感情AIがインストールされているので、感情も学習すると言う事だ」
「えーと、感情を学習していくとどうなるんですか?」
「愛情表現とか嫉妬とか、そういうのまで学習して行くと言う事だな。さっきまでの事がまた起こる可能性がある」
「どうにかして下さい」
「いや、無理。諦めてくれ」
俺はorzになった。




