第51話 俺の船
スミス宇宙ドックに戻ると、俺達の船を急ピッチで建造していた。その中で運搬ロボットが動き、溶接ロボットが各部分を溶接している。
だが、ロボットだけで全て出来る訳ではない。重要な部分は人手で行う必要もあるので、何人かの人も動いているのが見えた。
建造ドックの船を見ながらドック内にある会議室に入ると、そこにはドックのオーナーのタシューさんとチャーリー博士、それにジョンが居た。
「ただ今帰りました」
「おおっ、無事帰ったのか。お疲れさま。うん、ところで、見掛けない人が居るが?」
チャーリー博士は、シュリーを見るのは初めてだ。
「紹介します。鑑定士の『シュリー・ホワイト』です」
その言葉を聴いて背の高いジョンが目を丸くしている。
「本当にシュリーなのか?」
「ジョン、久しぶり。元気していた?」
「シュリーこそ、冒険者学校卒業以来だから3年振りだな」
「そうねえ、後から3年間の話を聴かせてね」
「そっちこそ、色々な星に行ったんだろう。その話を聴かせてくれよ」
シュリーにもジョンの事は多少は話してある。シュリーもジョンの事を気の毒に思っていたようだ。
そして、そのまま会議室で建造している船の話を聴く事になった。
説明者はチャーリー博士だ。
「まず、この宇宙ドックは資源衛星が近いので、そこで算出される貴重なオリハルコンを使った『オリハルコン合金』を外装として使う。
これは軽い上に強度が有り、例えば相手艦と接触した程度では相手艦は多大な損害を受けても、こちらの艦には一切の損害が出ないくらい頑丈だ。
もちろん、オプティカルレーザー砲ごときでは傷一つつかん。
次にメインエンジンだが、『反ミジハロスキーβ粒子』をエネルギーとする。これをインテークで収集し、『粒子融合反転リアクター』で圧縮、ワープエンジンである『反転融合粒子加速ワープドライブ』にてワープを可能とする。
補助エンジンは2機搭載し、メインエンジンと同じエネルギーで航行可能だ。従来の艦は補助エンジンだけではワープが出来なかったが、この船は10光年以内の短距離ワープであれば補助エンジンだけでワープが可能だ。
次に主砲だ。
主砲は『重粒子加速砲』を備える。ただ、この主砲にはやや癖がある。
それは、重粒子を加速させる必要があるため、主砲後部に加速器が積まれている。そのため、砲台のように主砲を回す事が出来ないということだ」
「それは目標を砲撃する際は、目標に艦を向けなければならないと言う事ですか?」
俺の質問にチャーリー博士が答える。
「その通りだ。その代わり、これ一発で2000メル(2000m)級の戦艦も撃沈出来る威力があるが、連射は出来ん。
エネルギー充填と重粒子加速に時間がかかるからだ。
主砲の位置は艦前方になる。反対に艦橋は艦後方だ。艦のレイアウトはこれを見てくれ」
チャーリー博士が指示すると会議室の大型スクリーンに艦の全映が映し出された。
その姿は前世で見た後退翼の飛行機に似ている。後退翼機は戦闘機に採用されている形で、翼が機体の後ろ側にある。
その艦影はとても美しい。しかし、驚いたのは主翼だけでなく、垂直尾翼が2枚もあった事だ。
「主翼には意味がある。まずこの船自体が大気中の航行が可能である。早い話、惑星への降下が可能ということだ」
「えっ、単体で惑星への降下が出来るんですか?」
「だから、そう言っただろう。もちろん大気中飛行も可能なので、主翼と垂直尾翼は必要なのだ」
「300メル(300m)級の宇宙艦が大気中航行するなんて・・・」
「実は主翼の役割はそれだけで無い。主翼の前方にはインテークがあり、このインテークで『反ミジハロスキーβ粒子』を収集する」
「艦の前方にあるインテークから収集するのではないのですか?」
見ると艦の前方に穴が開いている。
「うむ、これは良く見ておれ」
チャーリーがスイッチを押すとアニメーションが動き、小さな飛行機が後ろ向きで前方の穴にすっぽりと入った。
「ええっ」
「これはお前たちが乗っていたスペースコミューターだが、多少改造した。外装はもちろん『オリハルコン合金』、武装は『オプティカルレーザー砲』1門、『ブラスター機関銃』2門、60セル(60cm)キセノン粒子弾頭ミサイル20発を備える。
もちろん、スペースコミューターとしての役割も可能だ。
正直な話をすると、このスペースコミューターはでかくてな、格納庫に入れると庫内をかなり圧迫してしまうんだ。だから、このような形にした。
もちろん、母船とのテイクインとテイクオフは自動で可能だ」
「でもそれだと、主砲を発射するのに邪魔になりませんか?」
「さすがにそこまで馬鹿ではないわい。先程主砲は左右に転回出来ないと言ったが、上下の仰角は付けられる。角度は0度から90度、主砲の長さは1メル(1m)、直径50セル(50cm)だ」
イラストで見ると、艦の中央にちょこんと盛り上がったものが有り、それが主砲との事だ。確かにこの位置だとスペースコミューターに邪魔にはならない。
「主砲ってもっと大きいかと思いましたが、意外と小さいですね」
「無駄に大きければ良いと言うものではないからな」
「この主翼って、かなり分厚い様に見えますが・・・」
「この主翼はコスモファイターの格納庫を兼ねている。コスモファイターは主翼後方から着艦し、そのまま主翼の中に格納される。発艦は主翼付け根にあるリニアカタパルトだ。リニアカタパルトの推進力は増大しているが、原理等は従来の物と変わらん。
左右の翼に20機ずつ、計40機の格納が可能だ。従って、リニアカタパルトも左右に1台ずつ有る。
ただし、翼への着艦は宇宙空間のみで、大気中での着艦は上部コーテナーか後部コーテナーに限られる。理由は分かるな?」
「後流があるからですね」
「その通りだ」
「コスモファイターの形が従来とは違うような」
「コスモファイターは可変翼になっている。これは格納庫のスペースの有効活用からだ。コスモファイターは翼を折り畳んだまま、リニアカタパルトから射出し、空中で翼を展開する。ただし、宇宙空間では翼の意味が無いので、そのままでも戦闘は可能だ」
コスモファイターは全長5メル(5m)翼を広げた幅6メル(6m)と小さい。後退翼機であり、前方に翼を畳む構造になっている」
「『反ミジハロスキーβ粒子』って聴いた事がないのですが、宇宙空間の航行で収集する事が可能なんですか?」
「その粒子はワームホールの中でしか収集できない」
「えっと、どういう意味ですか?」
「つまり、ワープ中に収集すると言う事だ」
「と、言う事はもしかして、ワープアウト後にエネルギーを収集のため、充填する必要は無いと言う事ですか?」
「その通りだ」
「それは凄い」
「だがな、この船の一番の性能はその性能だ。1回のワープ距離は3,000光年、エネルギー収集のための時間が必要無いので、連続ワープが可能だ」
「な、なんと! 3,000光年で連続ワープが可能」
俺は開いた口が塞がらなかった。
「それだけじゃないぞ」
そこにジョンがやって来た。どうやら部屋に入る前から話を聴いていたらしい。
「この船の操縦はAIが分担しているので、操縦士1人で飛ばす事が出来る。
とは言っても、通信士、砲撃手、鑑定士は必要だけど。それ以外にもコパイロットも必要だがね」
「やっぱ、それなりに人がいるなぁ」
「それは仕方ない。宇宙艦を飛ばすんだから。でも、従来艦に比べたら、画期的に少ない人数だぞ」
「取り敢えず鑑定士と砲撃手、通信士はどうにかなりそうだ。後はコパイロットとコスモファイターの乗員とかだな」
コパイロットは副操縦士の事だ。
「コパイロットはどうにかなりそうだ」
「ジョン、どういう事だ? もう既に目途がついているのか?」
「チャーリー博士、呼んでも良いですか?」
チャーリー博士が頷くと、ジョンが外に声を掛けた。
「入ってくれ」
ドアを開けて入った来たのは、冒険者のユニフォームであるミニスカートを着た金髪のロングヘアがとても良く似合う白人の美人だ。




