第50話 海賊の最後と嫁に出す親の気持ち
「上部コーテナー解放、アクアマリンを回収する」
キャロットリーダーが艦橋で声を上げる。
「アクアマリン、上部コーテナーに着艦しました」
「昇降用エレベータ降下」
「アクアマリン、格納庫に入りました」
俺達はアクアマリンを出て、艦橋に向かった。
「アルディ殿、それに奥方達、ご苦労だった」
キャロットリーダーが労ってくれる。
「最後の締めに行きましょう。水の惑星の夜の部分へ」
レッドリリィ号が水の惑星に向かう。
「後方からフォルテウス号来ます」
「水の惑星の海賊船の座標をフォルテウス号に伝送」
「伝送完了です」
「では、2艦で攻撃するぞ」
フォルテウス号は商船だが、少ないながらも武器を装備している。最大の武器でもレールガン3砲だが、今はそれでも十分だ。
レッドリリィ号とフォルテウス号は水の惑星の裏側の夜の部分に廻った。
そこには氷漬けになった海賊艦が11艦、固まっている。レーダーは着火ミサイルにより水素と酸素の爆発で破壊されているので、目視でこちらを確認したのかコーテナーを開けようとしているが、氷で固まってしまい開かない。
「砲撃用意、11艦を順番に砲撃していく。狙いは艦橋及び後部エンジン部」
攻撃目標がフォルテウス号にも伝えられた。
「砲撃開始!」
レッドリリィ号とフォルテウス号から一斉に海賊艦隊の艦橋とエンジン部に砲撃が集中する。
海賊艦隊も応戦しようとするが、凍った砲台では照準が定まらない。ミサイル発射管も凍ったままで動かない。
その内、オプティカルレーザー砲がミサイル発射管に着弾し、ミサイルが誘爆した艦もあった。
11艦の艦は最初のうちは攻撃しようとしていたが、そのうち沈黙し、最後にはエンジン部からオレンジの爆発が次々に起こった。
爆発した海賊艦は傾き、船首の方から水の中に沈み出す。
だが、沈んだ船首の部分は直ぐに凍り始めるが、垂直に近くなった時点で凍った氷が海賊艦をそのまま、その場に留める。
あと数時間もすれば太陽の光を浴びれば氷が溶けて、船は沈み始めるだろう。
「砲撃中止」
砲撃が止んだ。もう、海賊艦隊からは何の反撃もない。
「夜が明けるまでの時間を報告」
「あと30分です」
この水の惑星の1日は6時間だ。つまり夜の時間は3時間だ。
「30分このまま待機」
海賊艦隊を見ていると太陽の光が当たり出し、その熱で氷が溶けて行く。溶けた氷の一部は水蒸気になって大気中に放出される。
そして、船を留めていた氷が溶け出し、船は徐々に水中に沈み出し、最後には見えなくなった。
宇宙艦は密閉されているため水の中でも問題は無いが、バラストタンクが無い為、潜水航行は出来ない。
船が沈み始めたと言う事は、船内に水が入り込み、自重で沈んで行くという事だ。
「海賊艦隊11艦全て沈没しました」
「水中ソナー投下」
「水中ソナー投下します」
レッドリリィ号から水中ソナーが発射され、水の中に降りて行く。
「海賊艦監視」
「海賊艦沈んで行きます。まもなく300メル(300m)に到着。中性子星コアに到着します」
「中性子星コア到着を確認せよ」
「了解、1艦目到着、圧壊します。2艦目同じく圧壊、3艦目同じ、4,5艦目同じ、6,7,8艦目同じ、9,10,11艦全て圧壊しました」
通常300メル(300m)であれば、30気圧が船に掛かるが、それ位の気圧であれは船は圧壊しない。
だが、この水の惑星の中心にはとても重力があるコアがある。この場合、300メル(300m)も沈めばその100倍もの圧力が掛かってしまう。
そのため、宇宙艦と言えども圧壊してしまう。
「戦闘データ、圧壊データ全て記録しているな。これより帝国に向けて離脱する」
レッドリリィ号とフォルテウス号はカイマー海峡に向けて、発進して行った。
帝国に到着したらその足で冒険者ギルドに向かう。
同行してくれたのはエリーさんとキャロットリーダー、それにシュリーだ。
冒険者ギルドで海賊討伐の報告をする。
最初は信じて貰えなかったが、戦闘データと圧壊データを示すと信用してくれた。
受付嬢に案内されて会議室に通されると、ギルド長が顔を出した。
「ギルド長の『キケロ・パヘォーテス』です。『ヘルデス』海賊団を討伐されたとか」
「この通り、討伐データを提出します」
「データの検証には時間を要します。2週間程時間を頂きたい」
「分かりました。2週間後に来ます」
俺達は一旦冒険者ギルドを後にしたが、2週間後に再び冒険者ギルドを訪れ、帝国金貨1,100枚を現金で受け取った。
受け取った帝国金貨を3等分しようとしたが、エリーさんとキャロットリーダーは200枚ずつ受け取り、残りは俺に渡してくれた。
そして、エリーさんとキャロットリーダーの推薦で俺達の冒険者ランクは一挙にA3ランクに上がった。
キャロル商会の会議室で帝国金貨を分けながら話をする。
「本当に俺が帝国金貨700枚貰って良いのですか?」
それにエリーさんが答える。
「私なんて最後の砲撃をしただけです。ほとんど何もしてないのに、帝国金貨200枚でも多いくらいです」
キャロットリーダーも同じだ。
「私達も同じだ。最後に艦砲砲撃しただけだからな。それが帝国金貨200枚は多すぎくらいだ。それに護衛依頼の費用も入るから私としては十分だ」
「ちなみに護衛費用はおいくら?」
「帝国金貨5枚だ」
「えっ、5枚!」
「えっと、今回は特別ボーナスを出したいと思います。追加で帝国金貨5枚でいかがでしょうか?」
エリーさんが慌てて言う。
「だそうだ、アルディ殿。私としては、これ以上の儲けは何かありそうで怖い。
ところで、アルディ殿、もしどこかに行くのであれば送ってやるぞ。何せ、輸送費は帝国金貨200枚貰っているからな」
「では、俺達の船を造っている宇宙ドックまで送って貰って良いですか?」
「アルディさん、また何かありましたら、よろしく頼みます」
「アルディ殿、またどこかで一緒に仕事をしたいな。それから奥様方、シュリーをよろしく頼む。あの娘は鑑定士としても優秀だが、第三婦人としても奥様方をしっかりサポートできると思う」
「何かありましたら、アームデバイスで連絡頂ければすぐに駆け付けますよ」
「シュリーの事は任せて下さい」
キャロットリーダーの言葉に応じたのはリゼルロッテだ。
「「「では!」」」
俺達5人は握手して別れた。
部屋の外に出たらシュリーが立っていた。
「シュリー行こうか」
俺が言うが、シュリーはキャロットリーダーに向かい合ったまま、その眼を見つめている。
シュリーはキャロットリーダーに言う。
「リーダー、お世話になりました。この3年間色々と勉強させて頂き、自分でも成長を感じています。
このお礼は言葉では言い尽くせません。本当にありがとうございました」
「何かおかしいぞ。シュリーの美しい顔が歪んで見える。どうしたんだ?」
キャロットリーダーの眼には涙が浮かんでいる。
シュリーの眼からは一筋の涙がこぼれて落ちた。
「シュリー、幸せにな。でも、何かあったら戻って来い。歓迎するぞ」
「私の夫は生涯一人だけです。出戻りはありません」
「ははは、そうか。元気でな」
感動的な場面だが、この後もう一度宇宙ドックでこのやり取りを見る事になった。




