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第5話 未来の乗り物って面白い

 家に到着するとエアロパイロットをガレージに入れてリビングに入った。そこには母がキッチンに向かって夕食の用意をしている。

「ただいま」

「おかえり、学校どうだった?」

「どうだったと言われても。 まあエアロパイロットを貰っただけかな」

「まあ、そうね。初日はそんなものかしら。友達とか出来た?」

「えーと、マークとエリス」

「その二人は前から友達じゃない」

「まあ、そうなんだけど・・・」

 その後、兄、姉、父が帰って来て、一家で夕食を囲んだ。


 翌日は自分のエアロパイロットで学校に向かう。

 家を出て、道路に出ると丁度エリスに逢ったので、並んで学校に向かった。

 学校に到着すると昨日の続きの授業があった。

 生徒は自分のエアロパイロットを講堂に持ち込み授業を受ける。

「エアロパイロットの操作の続きの授業になります。

 今回はマウスの下にあるボタンの説明です」

 昨日、マークが聴いたボタンだ。

「昨日は、アグリコンバインやコンストバインにドッキングするためのボタンと言いましたが、それは左側にあるボタンです。

 今回は右側にあるボタンの説明をします」

 右マウスの手前の位置に車のパワーウィンドのようなボタンが4つずつ左右にある。今回は右のボタンの説明らしい。

「まず、左上のマークを押して下さい」

 そこにはエアロパイロットに屋根がついたアイコンがある。それを押してみると、背もたれの位置にあるボックスから透明のアクリルが出て来て、エアロパイロットを覆った。

 これでは前世にあったピザ屋の宅配バイクのようだ。

「雨が降って来た時に使うキャノピーです。もう一度押すと格納します」

 言われた通り、もう一度押すとキャノピーが格納した。

「このキャノピーはアグリコンバインやコンストバインにドッキングした際のディスプレイにもなりますので、覚えておいて下さい。

 次にその隣にあるボタンを押して下さい」

 また言われた通りに押してみる。このボタンには山のアイコンがある。

 すると、フォログラム表示が地図に変わった。フォログラムいっぱいに表示されていた高度表示とスピード表示のグラフは小さくなって隅の方に表示されている。

「これはオートパイロットです。あらかじめ登録しておくとその場所まで自動で操縦してくれます。

 今回はこの訓練校を設定して下さい。そうすると、明日から自動でここまで操縦してくれます」

 それから地点の登録や自動操縦方法、注意点などの説明があった。

「左下のボタンは通話ボタンになります。アームデバイスと連携して電話したり、一緒に作業をする人との連携に使ったりします」

 車のパワーウィンドで言うなら左後部座席の窓を開けるボタンだ。見るとそこには会話のアイコンがある。

 そこから通話ボタンを使用した連絡方法の実習を行った。

「最後に右下のボタンになりますが、これは空調用ボタンになります。

 ただし、エアロパイロット単体では機能しません。他のアグリコンバインやコンストバインにドッキングした場合、密閉となる場合があるので、その時に空調を利用するためのものです」

 その日は1日中、アエロパイロットの操縦訓練を行った。

 下校は地図モードで自宅を登録しておいたので、自動運転で帰ってみる。

 途中までエリスやマークと並んで帰るが通話モードを知った事で、お互い話をしながら帰るのは前世の小学校の下校時を思い出して懐かしかった。


 訓練校の授業は実技以外は座学であり、農業、漁業、工業について学ぶが、文字が無いため、そのほとんどの授業がイラストか写真および動画になる。

 確かにこの方法でもそのノウハウを学ぶ事は出来るし、特にコツが必要な動作においてはスローで再生する事で詳しく習得出来るかもしれないが、それを記録として残せないのは技術の発展がない。

 現状維持というなら問題ないのかもしれないが、発展性がないのである。

 ある日、俺は思い切って聴いてみた。

「先生、文字が無いのは不便だと思いますが、何故文字は使用しないのですか?」

 ジャック・マルテという男性教師は40代の熟年教師で、主に工業課程の電気技術を受け持っている。

「文字がそんなに必要かな。私はこの世界で20年以上教師をやっているが、特に不便と感じた事は無いが。

 現在はイラストや画像、録画や映像等様々なマニュアルがあるので、技術習得は早いと言えるんじゃないか?

 君たちはどう思う?」

 ジャック・マルテはクラスの生徒の一人に聴いてきた。

 指名された生徒は答える。

「僕も特に不便を感じた事はありません」

 その言葉にジャック・マルテは同意を得たとばかりに言う。

「今の意見に反対を唱える者はいるかね?」

 教師の言葉に手を上げる生徒はいない。

「これが答えだと思うが、アルディ君はどう思う?」

「ですが、文字が有る方が記録や技術革新が出来るのではないでしょうか?」

「記録は画像や音声として残せるし、技術革新はその専門としているところから提供される。問題は無いと思うがね」

 この世界では改善という言葉がない。労働者は言われた仕事を淡々と熟すだけだ。


 気象については全てコントロール出来ている訳では無く、たまに嵐とかが来る時もあるが、農業は建物内の専用プラントで行っている為、四季を通じて野菜や穀物が採れる。

 それは畜産も同じで生産が天候に左右されることは無い。

 漁業だってほとんどが養殖で行われており、水質管理、餌の管理から全てがコンピュータで制御されている。

 そのため毎年生産量は一定で豊作も無ければ不作と言う事もない。

 俺は黙って椅子に座った。

「では、今日の授業はこれで終了としよう」

 ジャック・マルテの言葉で下校となった。

 帰り道、俺はマークとエリスに言われた。

「アルディって、時々変な事を言うと思ったら、今日は文字が必要かだと。最初、俺はこいつ何を言ってるんだと思ったよ」

「マークの言う通りね。でもね、アルディと先生の話を聴いている内に私も疑問に思ったの。

 だって、最初から文字が無かった訳ではないでしょう。それがいつの間にか文字を使わなくなっている。

 何で人類は文字を捨てたのだろうって」

「おいおいエリスもアルディ派なのか? それは文字がいらなくなったからだろう」

「だから、それは何故いらなくなったのかと言う事よ」

 マークの言葉にエリスが苛立ったように言う。

「それは文明が進化したからさ。ほらアームデバイスが全ての疑問に答えてくれるし、計算だってアームデバイスがやってくれるじゃないか」

「でもなマーク、アームデバイスに何故文字を使わないのかって聴いてみたんだが、答えてくれなかったぞ」

 俺の言葉にマークが試しにアームデバイスに聴いてみるが、その回答は対象となる答えが見つかりませんと返って来るだけだ。

 そんな話をしている内に俺のエアロパイロットは自分の家に着いた。

「じゃあな、アルディ」

「アルディまたね」

 マークとエリスが乗ったエアロパイロットは更に先にある自分の家へ向かって飛んで行った。


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