第45話 ならず者冒険者
2日後、俺たちは奪ったアームデバイスの通信機能をONにした。
「これで『深き狙撃者』に、このアームデバイスの位置が伝わりました。今頃は『レッドリリィ』の艦内にある事も判明しているでしょう」
「アルディ殿は、どの辺りで攻撃してくると思う?」
「辺境伯領内で攻撃すると、攻撃が帝国冒険者ギルドに伝わるので、それは無いでしょう。あるとすれば、辺境伯領から出てからです」
「了解。では抜錨するか。係留解除」
「係留解除」
「離岸」
「離岸開始」
「サイドスラスターで後退後、回頭」
「サイドスラスター起動、後退します。回頭完了しました」
「よし、出港せよ」
「出港します。微速前進」
「港を出た後、ワープエリアにてワープインする。レーダー班後方に注意せよ」
「了解」
1時間もするとレーダー班から連絡があった。
「後方から冒険者艦と思われる戦艦が追って来ますが、識別記号をOFFにしているのか確認出来ません」
「早速、来たようですね」
「そのようだな。よほど我々は美味しく見えるようだ。しかし、もう少し隠れるとかすれば良いものを」
「隠しようが無いし、余程焦っているのでしょう。今まで検索モードでどこにあるかが分かっていなかったのが、今の時点で分かるようになった事が可笑しいと思わないものでしょうか?」
「さあな」
「ワープエリアに到着しました」
「ワープインする。鑑定士、ワープアウトエリアを入力」
「ワープアウト地点入力完了です」
「ワープイン」
俺達がワープアウトした地点の目の前には大きな惑星があった。
「『WRZ9565』地点にワープアウトしました。重力歪感知、艦がワープアウトしてきます」
「オプティカルレーザー砲発射準備、ワープアウト地点が確定できないため、艦砲射撃班は注意して発砲せよ」
「重力歪レベル9、ワープアウトきます」
「ディープスナイパー」の艦が見えた。
「オプティカルレーザー砲発射!」
「発射。2発着弾を確認しました」
「よし、逃げるぞ。船を陰電子ガス体に突入して逃げ込め」
オプティカルレーザー砲で巨大艦を沈める事はかなりの発砲を必要とする。当然、相手も抵抗することから、未開の地で砲撃戦を行った場合、例え勝ったとしても辺境領まで帰るのはかなり難しい。
救助を求めるにしても未開の地では航行している船も少ない。
だとしたら何故発砲したかだが、これは相手を怒らせ判断を鈍らせる事が目的だ。
「80,000宇宙ノットで移動せよ。鑑定士、衛星の動きはカウント出来ているか?」
陰電子のガス体の中ではレーダーも無効になるし、視界も悪い。その中に衛星が回っている訳なので、注意しないと衝突してしまう。
「あと、4.23秒、3,2,1来ます」
「取舵いっぱい」
「取舵いっぱい」
「レッドリリィ」号は『WRZ9565A』の地面スレスレに惑星を回避した。
後方を映したカメラの画像を見ると、「ディープスナイパー」号は目の前に現れた衛星『WRZ9565A』に接触し、艦の一部を破損しつつも、どうにか衛星を回避しているようだ。
しかし、そのショックで艦のスピードはかなり落ちている。
「良し、未だ。『WRZ9565』の衛星軌道を300,000宇宙ノットで回りこめ」
「レッドリリィ」号は、300,000宇宙ノットで『WRZ9565』の軌道を回る。直径125,000キル(125,000km)を一周すると、3.14をかけても約400,000キル(400,000km)だ。軌道上を廻るとしてもわずかしか大回りにしかならない。
それを光の速度に近いスピードで回る訳なので、2秒程で一周してしまう。
「『デイープスナイパー』が見えたら攻撃」
「見えました。攻撃開始します」
艦橋から見えた「デイープスナイパー」の右舷はかなり破損している。そこに向かって、全ての艦砲射撃が始まった。
「コスモファイター発進。相手の艦載機を発進させるな」
リニアカタパルトからコスモファイターが次々に発進して行く。
発進したコスモファイターは「ディープスナイパー」の左舷リニアカタパルトコーテナーを集中的に攻撃している。
こうなると相手のコスモファイターは発進出来ない。
右舷リニアカタパルトは惑星との衝突により破損しており、使用不可と判断したため、左舷リニアカタパルトを集中して攻撃したのだ。
上部コーテナーにはアトラスアクターも出て来て、攻撃して来るがコスモファイターとは攻撃範囲とスピードが違う。空中戦になるとアトラスアクターではコスモファイターに対抗するのは困難だ。
そうなるとアトラスアクターはコスモファイターの格好の餌食でしかない。
コスモファイターの武器はそんなに多くは無い。ブラスター機関銃とミサイル6発のみだ。
それでも、ミサイルで相手艦を狙い、ブラスター機関銃でアトラスアクターを破壊する。
コスモファイターが帰艦する頃にはアトラスアクターはもう「デイープスナイパー」の艦上には無かった。
冒険者艦「デイープスナイパー」はかなり被弾し、ところどころから爆炎が上がっているが、それでもまだ航行している。
「後部エンジンを集中攻撃」
俺が指示をすると「レッドリリィ」からオプティカルレーザー砲、レールガン、ミサイルが「デイープスナイパー」のエンジン部に飛んで行き、エンジンから特大の爆炎が上がった。
「誘導ミサイルでサイドスラスターと反重力コイルを攻撃」
俺の指示で誘導ミサイルがサイドスラスターと艦下部にある反重力コイルを破壊した。
すると徐々に「デイープスナイパー」の高度が下がり出した。引力に引かれて惑星に落下し出したのだ。
すると、上部コーテナーが開き、スペースコミューターが出て来た。その数5機。
5機に乗れる人数は精々60人が限度だ。しかもワープ航行が出来ない為、このように未開の地で宇宙空間にスペースコミューターで出て来るのは自殺行為である。
例えれば太平洋の真ん中に手漕ぎポートで出るようなものである。
太平洋の真ん中であれば通信で救助も要請できるが、この未開地では通信も出来ない。 そして艦内に残された60人はどうするのか? 既に死亡したクルーや助からないと判断されたクルーもいるだろう。だが、全員がそうではあるまい。
そして、彼らは『WRZ9565』の地上に落下するしかない。
そう思っていたところに通信が入った。
「こちらは冒険者パーティ『深き狙撃者』、救助を乞う」
「こちらは冒険者パーティ『紅い百合』のリーダー「キャロット」だ。我々を攻撃して来た者を救助するつもりはない」
リーダーのキャロットが「深き狙撃者」の通信に応答した。
「こちらは攻撃していない。一方的に攻撃して来たのはそちらだ。繰り返す、我々は攻撃していない」
確かに、ワープアウトして来た「デイープスナイパー」に先に攻撃したのはこちらだっけ。うーむ、相手の言う事は最もだ。
「何を言う。我々を追って来たのはそちらだろう。ふざけるな」
その通りだ、キャロット。言ってやれ。
「違う。我々は偶然ワープした先が、貴艦と一緒だっただけだ。それをいきなり攻撃されたのだ。
誤解があったのは貴艦の方である」
「ほう、未開の地であるこの惑星の衛星に、偶然ワープしただと? そんな話、誰が信じるか」
「繰り返す。我々は攻撃していない。貴艦に誤解があったと思われる。至急、救助を願う。繰り返す、至急、救助を願う」
救助を乞う通信が入るが、60人を救助すると、こちらの艦内で暴動を起こされる懸念がある。そんな、ならず者を艦内に入れる訳にはいかない。
通信をしていると「デイープスナイパー」のスペースコミューターが、徐々にこちらに近づいて来る。
「キャロットリーダー、ここは視界もレーダーも効きません。やつら何か仕掛けて来る可能性が高いです。気を付けて下さい」
俺がそう言った時だ。
「ボーン」
爆発する音が響いた。
「何があった?」
キャロットリーダーが聴いた。
「左舷格納庫付近が爆発。スペースコミューターが横付けされています」
「何?」
「敵が本艦に突入しました。その数12人」
「至急、隔壁を閉鎖せよ。戦闘員はプロテクションスーツを着用し、応戦せよ」
「プロテクションスーツ室、敵が占拠しています。プロテクションスーツ着用不可です」
「くそっ、白兵戦の用意」
相手はレーダーも視界も効かないのを逆手に取ってレッドリリィ号の死角から近づいていたようだ。
無線の相手は、そのための囮だったのだろう。
そして、レッドリリィ号艦内に入った後にプロテクションスーツ室前を陣取ったのは白兵戦に備えて、相手に装備させないためだ。
相手はこのような白兵戦の経験が十分なのだろう。
「その前に、残っているやつらのスペースコミューターから距離を取って下さい。この機に乗じて突入される可能性が高いです」
「アルディ殿の進言を採用する。相手のスペースコミューターより、出来るだけ離れよ」
「デイープスナイパー」のスペースコミューターとの距離が離れて行く。
「では白兵戦を行う。各自武器を持ってプロテクションスーツ室前にて応戦」
プロテクションスーツを着用していなければ、武器はブラスターガンぐらいしかない。戦闘員である冒険者がブラスターガンを持って、プロテクションスーツ室前に走った。
もちろん、キャロットリーダーも走っている。
「シュリー、俺達が出た後、艦橋を隔離しろ。別動隊が奇襲する可能性が高い」
「分かりました」
「合言葉を決めておこう。『山』と『川』だ」
「分かりました。『山』と『川』ですね」
「そうだ、いくぞリゼルロッテ、イリューシャ」
「「はい」」
「「「アクセプト!」」」
俺達3人はパワードスーツを着用した。
パワードスーツには武器が装着されている。主なものはブラスターガンとプラズマソードだ。
それ以外にも俺たちのアームデバイスには「オプティカルゴーガン」という弓も装着されている。




