第39話 護衛クエストを受けました
翌日、前もって教えられたキャロル商会に行くと、ビル全部がキャロル商会だった。
エリーさんが言うには、それ程大きな印象ではなかったが、かなりの豪商だ。
1階ロビーに入り、受付ロボットに来訪を伝えると、エレベータホールの扉が自動的に開いて乗降を促した。
エレベータで指示された階に行くと、そこには「会長室」の文字があった。
「トントントン」
扉をノックすると自動的に扉が開く。
「おはようございます」
「アルディさんお待ちしていました」
エリーさんの隣には秘書と思われる女性が立っている。
「これより、艦長をお呼び致します」
女性秘書が言うと、アームデバイスで連絡を取った。
しばらくすると、航海士の制服を着た中年の男性が入って来た。
「アルディさん、紹介します。今回、ユーリー辺境伯領への物資輸送を取り仕切る艦長の『キャップソン・ベッチ』になります」
「アルディ・モーディスターと言います」
「キャップソン・ベッチです」
お互いに握手し、妻も紹介する。
「かなりお若いと思いますが、冒険者ランクは?」
「全員A1ランクです」
キャップソン・ベッチ艦長はちょっと曇った顔をした。
「A1ランクと言えば最低ランクでしょう。会長大丈夫でしょうか?」
「ふむ、ベッチ艦長の言う事は最もだ。私は帝都に来る途中に訓練の様子を見ていたが、実際の戦いの実力は分からない。
どうだろうアルディさん、模擬戦とか見せて貰えないだろうか?」
「そう言う事でしたら模擬戦をやりましょう。場所と時間を指定下さい」
時間は15:00から対戦相手は戦闘用アンドロイドに決まった。
俺たちは冒険者ユニフォームを来て会場に行った。会場はキャロル商会が所有する体育館だ。
武器はソニックソードとブラスターガンに決まった。
戦闘の際はパワードスーツを着用するのだが、今回俺たちは冒険者ユニフォームで対戦する事にした。
「アルディさん、プロテクションスーツは着用しないのですか?」
「取り敢えずこれでやってみます。もし無理なようでしたら、着用します」
「分かりました。では1番目の方、お願いします」
最初に出たのはリゼルロッテだ。リゼルロッテはソニックソードを右手に持ち、ショルダータイプのガンホルダーを取り付けてある。
「始め!」
エリーさんの声で戦闘が始まったが、一瞬で決着がついた。2Gの重力で鍛えた筋力は伊達じゃない。戦闘アンドロイドの懐に飛び込むとソニックソードで斜め掛けで斬った。
それを見たエリーさんとベッチ艦長は口を開けたままだ。
「そ、それでは次の方」
今度はイリューシャが出て来た。イリューシャは最初からショルダータイプのガンホルダーのみ装着している。ソニックソードは持っていない。
「アルディさん、あの方はガンのみですか?」
「まあ、見ていて下さい」
「始め」
イリューシャは目にも止まらない速さでブラスターガンを引き抜くと戦闘用アンドロイドが動く前にその頭部に5発着弾している。
再び、エリーさんとベッチ艦長は口を開けたままになった。
最後は俺の番になった。俺は武器を何も持たずに戦闘用アンドロイドと対峙した。
「アルディさん、武器は?」
「要りません」
「ですが、プロテクションスーツも着用していないと怪我どころか死にますよ」
「問題有りません。さっさと始めましょう」
「では、始め」
「マッハブレード!」
戦闘用アンドロイドがソニックブレードで斬りかかる前に、戦闘用アンドロイドは上下に別れて倒れた。
エリーさんとベッチ艦長は今度は何も話さなかった。
「エリーさん、ベッチ艦長、大丈夫ですか?」
「いやいやいや、どうやったら、戦闘用アンドロイドが真っ二つになったんだ」
ベッチ艦長が言うが、言っても信用して貰えないだろうな。
「企業秘密です」
「これは凄い。A1クラスなんてもんじゃない。A9クラスでも務まるだろう。ぜひ、護衛として船に乗ってくれ」
船は「フォルテウス」という1000メル(1000m)級の商船だ。最大ワープ距離は1000光年だが、ワープエネルギーの補充の為に6時間程通常航行しなければならない。
反対に300光年のワープだったら、2時間程の通常航行でエネルギーを補充できる。
従って、冒険者の宇宙艦が有る場合は、その宇宙艦に合わせて300光年のワープを行った方が良い場合もある。
今回は俺達以外に護衛に当たるパーティがある。そのパーティは冒険者であり、冒険者所有の宇宙艦で護衛する事になる。
「紹介します。今回護衛に当たってくれる冒険者パーティ『紅い百合』のリーダーで『キャロット・リリィ』さんです」
ベッチ艦長から商船「フォルテウス」の艦橋で紹介された護衛パーティのリーダーに俺は自分の名を名乗った。
「アルディ・モーディスターです」
キャロットさんは、いかにも歴戦の女戦士といった感じで、赤髪が特徴だ。
「今回は、我々とアルディ殿のパーティに護衛依頼が行ったと聴いている。
もしもの場合は、連携を取って対応しよう。
では、宇宙港の外で待っている」
キャロットリーダーはスペースコミューターで自分の母船に帰って行った。
俺たちは商船「フォルテウス」の艦橋で出港を見ている。リゼルロッテとイリューシャは、このような巨大な商船の運用は見た事がない。
そのため、艦橋で見学させて貰う事にした。
「なあ、あの美人って何だ。冒険者のようだが?」
「今回の護衛らしい」
「護衛って、役に立つのか。若いし、美人だし」
翻訳虫を耳に入れたままなのだが、この翻訳虫は遠くの会話まで聴こえる様にしてくれる効能もあるので、艦橋程度の広さでヒソヒソ話をしても分かってしまう。
いや、航海士の話で若いは分かるが、美人は関係ないだろう。
「それにあの男も若い。それで海賊とかに対応できるのか?」
ふむ、君達聴こえているよ。でもまあ仕方ない。ベッチ艦長もそう思っていたようだし、何かあれば自分達の命に係わる問題だ。
「何かあったら『紅い百合』にしか期待出来ないだろう」
「出港する」
ベッチ艦長が出港を宣言した。それにより各航海士が作業を開始する。
「ボーディングブリッジ切り離し」
「ボーディングブリッジ切り離し指示しました。切り離し確認」
「係留解除」
「係留解除指示出します。解除確認」
「ボヤードからモヤイ収納」
「収納しました」
「サイドスラスター起動、タグボートけん引」
巨大貨物船のため、離岸にはサイドスラスター以外にもタグボートを使用する。
「船首回頭」
「船首回頭開始します」
窓の外を見ると前方に見えていた宇宙港が徐々に左後方に移動して行き、窓の外には広大な宇宙が広がった。その先には赤い色の護衛艦が見えた。あれが「紅い百合」の母船「レッドリリィ」号だろう。
「回頭完了しました」
「タグボート切り離し」
「タグボート切り離し指示出しました」
タグボートが船から離れ、宇宙港の方に帰って行く。その時、タグボートに艦橋との連絡用に据え付けてある巨大スクリーンに大きな「U」と「W」が交互に表示された。
どうやらこれは、「安全航行を祈る」の意味らしい。
「微速前進で港を出る」
「速度3宇宙ノットで前進」
「ヨーソロー」
右手に赤い灯台、左手に白い灯台を通過した。これを通過すると宇宙港の外に出たと言う事である。
「レッドリリィへ、港を出ましたのでランデブー後、同期航行に入ります。同期航行信号をお送り下さい」
「了解した。同期信号を送るので、カップリングを願う」
同期航行は2艦以上の船が宇宙を航行する時、主艦の操縦で他の艦も同じように航行できる機能だ。
この機能で操縦の負担がかなり減る。
何かあったら直ぐにデカップリングして単独航行に移行する事も可能である。
「このまま50,000宇宙ノットで航行し、6時間後ワープエリアに到着後、最初のワープを行う」
さすがに帝国の首都惑星だけあって、ひっきりなしに宇宙艦が行き交う。大きな船、小さな船様々だ。
これだけの船を係留させるため帝国の宇宙港は何層構造にもなっていて、その宇宙港が星の周辺に多く散らばっている。
「帝国って凄いですね」
リゼルロッテが言うとイリューシャも同意するように首を縦に振った。




